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緒沢タケル編2 タケルと愚者の騎士 就寝

 

 「タケル・・・、スサのみんなはね、

 私が九つで、スサをお父さんから受け継いだ時に、

 そう、・・・みんなで私を支えてくれたのよ?

 あなたは知らないから無理もないけど・・・、

 私にとっては掛け替えのない仲間なの・・・!

 私の仲間に、

 そんな卑怯なマネをする人間なんか一人だっていやしないわ!」


タケルはハッとした・・・。

確かに姉、美香はすぐれた指導力と洞察力を備えてはいるが、

それだけで、スサを運営できるわけもないのだ。

確かにある視線で見れば、美香の天性のみが光って見えるのだが、

見ようによっては、その美香を多くの人間が支えているからこそ、

彼女の指導者としての才能が発揮できるのかもしれない・・・。


 「わかった・・・美香姉ぇがそう言うんなら、

 オレも美香姉ぇを信じるよ・・・。」

 

ようやく美香に笑顔が戻る。

 「ありがと、タケル・・・。

 もう今夜は遅いから、続きはまた今度にするけど、

 これだけは覚えておいて?

 緒沢家発祥の縁起・・・。

 かつて、まだ人間が誕生して間もない頃、

 この大地はスサノヲが治めていた・・・。

 人間達はその神の元で平和に暮らしていたけれど、

 ある時、天からやってきた新しい神たちが、

 人間を滅ぼそうとし、スサノヲを大地の底に閉じ込めた・・・。

 いわゆる天津神と言われる一団ね・・・。

 ただ、人間はその時、死に絶える筈だったんだけど、

 スサノヲがその身と引き換えになることで、

 人類は生存する事を許されたというの・・・。

 以来、生き残った人々は指導者を忘れ、

 方々に散ってしまったけど、

 過去に起きた真実・・・祖神を覚えている者達が、わずかに地上に残っていたわ。

 ・・・そのうちの一つが私達の家系・・・という事なのよ。」


 「子供の頃、さんざん聞かされたっけ。

 ・・・日浦さんの話を聞いた直後だと、印象が変わってくるけど・・・。」

 「タケル、でもここから先は聞いた事ないはずよ?」

 「えっ!?」

 「私達の目的よ、

 単に、そんな言い伝えだけを守るために、

 スサを世界規模にしたわけもないわ、

 スサの集団の本当の目的は・・・。」


 「お、おう?」

 「その英雄神スサノヲの復活を待ち続ける事・・・

 いつの日にか、敵対していた神々の縛から解き放たれる時、

 そして私たち人間は新たなる時代を迎える事が出来る・・・。

 スサはその復活のための、準備と助力を絶やしてはならない、

 とされているの。」

 「はぁ・・・?

 復活するって事までは聞いてるけど、その為の準備ぃぃ?」

 「もちろん、眉唾に聞こえるのも無理ないわ。

 まずはタケル、ご先祖様の言い伝えと、

 儀礼を忘れずに後世に伝えていく事だけで十分よ。

 ・・・それでね、今度の日曜日、カラダを空けられる?」

 

どうせプーだ。

大した予定なんてある筈もない。

 「ん? ああ、大丈夫だけど?」

 「久しぶりに、というか、

 いい機会なんで、ちょっと付き合って欲しいの。」


 「どこへ? まさか信州の旧緒沢家に・・・?」

 「まだそれはいいわ、白鳥さんは知ってるでしょ?

 あの人の家に簡単な道場があるから、そこに一緒に行って欲しいのよ。」

 「白鳥さんて、あの剣道学生チャンピオンの?

 ・・・ちょっと、オレにまた竹刀を握らせるつもり?」


子供のころは、美香にはもちろん、年上の白鳥という男にもびっちりしごかれた記憶がある。

ガタイが大きくなった今でも、

出来るなら同じ目に遭いたくないというのがタケルの本音だろう。

美香もそれは予想したのか、一瞬だけ意地悪そうな笑みを浮かべた。

すぐに真面目な顔に戻したけども。

 「フフ、あなたにその気があるならば・・・。

 でも、今は見て欲しいものがある。

 それだけよ・・・。」

 「・・・うげぇぇ・・・、

 わかったよ、それで美香姉ぇの役には立つんだよな?」

 「もちろんよ、

 私はタケル・・・あなたも信じているからね?」


なんか滅多に褒められたりしないタケルにその言葉は照れくさい。

 「やめてくれよ、こそばゆい・・・!」

 「うふふ、あら、

 もう3時だわ、早く眠りましょ?」

 


 「・・・ああ、オレもさすがに眠いわ、

 ふぁあああ、じゃ、オレ食器かたしてから眠るから。

 美香姉ぇ、明日は学校ないの?」

 「もう講義なんて、ほとんど残ってないしね、

 午後図書館に行くしか用はないの、

 たまには寝坊してみるわ。」

 「わかった、じゃあ起こさなくていいんだな?

 ゆっくり寝てくれよ。」

 「それでもあなたのほうが寝坊してたりしてね?」

 「うぐっ・・・、

 まぁそれは、いや、ちゃんと起きるさ!」


 「ふふ、あ、そうだ、タケル、・・・額のホクロどう?

 ちょっと大きくなったんじゃない?」


タケルの額にはパッと見、目立つホクロがある。

普段は前髪を垂らしているので、そんなに人に見られるものでもないけれど。

 「ああ? 自分じゃわかんねーなぁ? そう思うか?」

 「あんまり大きくなるようだったら、

 皮膚ガンとかになるかもしれないから、早めにお医者行きなさい?」

 「ああ、そのうちな・・・。」

 


 

そして、二人は席を立ち、

タケルは流しへ、美香は後ろの階段に向かう。

階段の手前で美香は一度タケルに振り返った。

 「タケルー?」

何か言い忘れたことでもあったのだろうか?

タケルは水を流して食器を洗い始めている。


 「ああー?」

 「たまにはお姉ちゃんと寝るー?」

ガチャーン!


 「ふーざーけーんーなー!

  皿割りそうになっただろうがぁ!!」

 「あはは、嘘嘘、じゃーねー、おやすみなさーい。」

 「ああ、おやすみ・・・まったく、

 こんなんだから今日子達にもシスコン呼ばわりされるんだよ・・・ブツブツ。」


美香は笑いながら階段を上がっていく。

そのうちタケルも自室の布団に入るだろう。


・・・タケルはこの時、大して気にも留めなかった。

なぜ、今になってこんな話を美香は切り出したのか?

美香にしても、

何か確信があって、自分の行動を決めたわけでもない。

ただ、そうしなければならないような気がしただけなのだ。

・・・昼間、あの老人にあってから・・・。

 

白鳥さんは、

「顔のない人形」編で

美香が携帯の電話帳開いた時、

さ行の欄で、名前をすっ飛ばされた可哀相な人です。


そして次回、日浦義純再登場。


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