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緒沢タケル編1 虎の尾

 

日浦義純はタケルをなだめるかのように静かに話す。

 「・・・僕はこういう推理を立てた、

 スサを継ぐ者は緒沢家の者と決まっている・・・。

 現在、その総代は緒沢美香だが、彼女に万一のことがあれば、

 次の総代は、その家族・・・、

 すなわちキミ、緒沢タケルが継ぐ事になる。

 だが、キミはいきなりさっきのような事実や経緯を聞かされて、

 どこまで、スサという組織をまとめられるだろうか?

 信頼できる組織の人間などいないのだろう?

 ・・・もしそんな時に、キミの後見役になってくれる人間がいたら?

 キミはその人間に全幅の信頼を寄せるだろう、

 その時、その人間は、組織内においてキミに次ぐだけの権力・・・、

 いや、ことによると、そいつが組織その物を動かす事が出来るようになるかもしれない。

 ・・・今の美香ちゃんのもとでは出来ないことをね・・・?」


ようやくタケルは全ての事を理解できた。

あの時、美香が言ったセリフ・・・

「私に任せて」と言ったのは・・・、もしかして・・・。

 

 

 「だいたい、話は呑み込んでくれたかい?

 もし、この僕の推理がただの考えすぎならいいのだけど、

 最悪の事件が起きると想定した場合、

 この事件の首謀者が次に考えることは・・・、

 タケル君、キミへの接触があるんじゃないか・・・?

 そう思ってキミの後をつけていたんだ。」


 「あ・・・そういうことだったんですか・・・。」

勿論、日浦の話はこれで全てというわけでもない。

日浦自身にしても、万一のことが起きた場合、

この緒沢タケルがどういう人物なのか、

自分で見極め、騎士団本部に報告するという責務も負っていたのである。

故にこの尾行が、

タケルに気づかれようが気づかれまいが、どっちでも良かったのである。

調べる順番を逆にすればいいだけの話なのだから・・・。

 


 

 「さて、僕の話はここまでだ、

 さっきも言ったけど、これ以上は証拠が見つからないと何ともいえない。

 キミもいろいろ疑問がわいてきてる事だとは思うんだが、

 スサの事については僕は本来、口を出すべき立場じゃない。

 キミらの家系の問題だからね。」

 「・・・はぁ、そうっすか・・・、

 ま、でもオレも、実際かやの外っすからねぇ・・・。」


タケルは自嘲気味につぶやく。

理屈ではわかっているのだが、

自分がこれまで、何も知らされていなかった事にイラついているのである。

日浦はそういった反応も見逃さない。

 (しょせん、どこにでもいる若者と一緒だったのかな、

 ま、それが普通なんだろうが・・・。)

日浦はそう判断したが、試みにもう一つだけ聞いてみる事にした。

 「でも、このままでいいのかい?

 今後、また襲われないとは限らない。

 もし、万一の事があったら・・・?」


その時、タケルの形相が変わった。

 「・・・万一?

 万一ってのは、姉貴に何かあったらってことっすか?

 もしそんな事になったら、

 相手が誰だろうと八つ裂きにしてやりますよ・・・!?」

 

 「 っ!?」

それはさしもの日浦も、一瞬、息を呑むほどの凄みだった。

既に日浦も、

タケルが数多くの格闘技を身につけている事は調査済みだ。

それにこの体格・・・。

もし彼がその気になれば、どれほどの戦闘力を発揮するのだろう・・・?

そして・・・彼も緒沢家の血を受け継いでいるという事実・・・。


正直、騎士団本部は、これまでタケルのことなど、観察対象として全く興味を持ってこなかった。

・・・いや、それは「スサ」の幹部たちも同じである。

しかし、日浦は周りがどうであろうと、

あくまで自分の目で見聞きしたことを頼りに考える。

このタケルがどんな人間に成長したのか・・・、

それは彼にとっては重要な事の様に思われたのだ。

 (ひょっとすると・・・

 彼はこれから化けるのかもしれないな・・・。)


そして日浦はふと我に返る。

一瞬の動揺など眼前の相手に見せることもなく・・・。

 「いや、あくまでも仮の話だよ、

 どっちにしても気をつけたほうがいい。

 今日、僕の尾行に気づいたように、細心の注意を払ってくれ、

 ・・・もし何かあったら、

 名刺に僕の連絡先は書いてあるだろ?

 いつでも連絡してくれ。」

 

 

タケルは名刺を見直しながらつぶやく、

・・・もう興奮は収まったようだ・・・。

 「はい、あの・・・。」

 「ん? 何だい?」

 「結局、今日の話・・・姉貴には・・・。」

 「あ、そうだ・・・ね、

 僕もここまでばらした以上、

 美香ちゃんに黙っててくれなんて言えないが、

 彼女にこの話をする時は、

 十分、心の準備をした方がいいと思う・・・。

 いろんな意味でデリケートな話題だろうからね・・・。

 僕も彼女に責められる覚悟はしておくけど、

 どうするかはキミに任せるよ・・・。

 あ、タケル君、

 キミの携帯の番号、教えてもらっていいかな?」

 「はい、じゃ、えーと、番号はここに・・・あとあの・・・。」

 「ん? 今度は何だい?」

 「日浦さんは・・・その姉貴とは・・・?」

 

今まで聞いたことは日浦からの一方的な情報である。

美香と本当に良好な関係を築いているかなんて何の根拠もない。

もちろんこの場で日浦がどんな回答をしたところで、それすらも根拠はないのだが、

タケルの立場としては口頭の確認だけでも取りたかったという事だろう。

 

 「ああ・・・、一応、互いの立場上、

 友好的にっていうわけにもいかないんだが、

 時々、連絡はさせてもらってるよ、

 たまにだけど、普通に世間話ぐらいはできる。」

 「あ・・・じゃあ、特に、その険悪な感じとかはない、

 ・・・って思ってていいんすか?」

 「ああ、それは大丈夫だと思う。

 ・・・ただ、今回のケースはどうかな・・・?

 緒沢家の秘密を部外者の僕がしゃべっちゃったからなぁ・・・?」


日浦は頭をかく・・・本当に困った顔をしている。

タケルは笑いそうになった。

 「わかりました。

 じゃあ、うまく俺なりに話の切り方を考えておきます。」

 「本当かい? それはうれしいな、ありがとう!」


日浦は子供のように無邪気な笑顔を見せた。

やっぱり悪人には見えない、

タケルはこの男を信用する事にしたようだ。

先にタケルは立ち上がり、

日浦は喫茶店の払いなどで、少し遅れてからこの店を後にした・・・。

 




 

 トルルルルルルルル、


ここは相模原・・・日浦総合リサーチ事務所・・・。

日浦はしばらくして自分の事務所に戻り、所長室から一本の国際電話をかける。

・・・もう、他の職員は勤務を終え、

今やこの事務所には、彼一人しかいない・・・。


 「もしもし? 極東支部の日浦だ。

 本部長・・・ランスロットはいるかい?

 あ・・・もしもし?

 お久しぶりです。

 ええ、報告は読んでもらえました?

 はい・・・、まだ証拠は・・・

 引き続き調査を進めますが・・・。

 そんなところです。

 ・・・で、あの緒沢家の弟・・・タケルのことなんですが・・・。

 彼についても注目してみたいんです。」

 


 

 「理由ですか?

 まだはっきりしたことは言えないんですが、

 彼は今まで何も知らされていないだけで、

 彼の素質には、はなはだ捨ておけない部分があると思うんです。

 ・・・もし良ければ私の権限において、

 彼と一度、行動をともにしてみたいんですが・・・。

 もちろん責任は私がとります。

 ええ、例の製薬工場がありますよね?

 あの件を処理するのに彼を・・・。

 ハイ・・・気をつけます。」


今、日浦が電話で話している者は、彼が属する騎士団の最高幹部だ。

年齢は日浦よりわずかに上回るが、

その人望・指導力・そして戦闘能力において、騎士団最高と言われている。

いつか、彼・・・「湖の騎士」のことも詳しく言及する機会があるだろう・・・。

 


 

さて、肝心の通話のほうは・・・。

 「・・・いえいえ、

 まぁ勘と言われればそれまでなんですが、

 あの姉と弟の組み合わせを見てると、

 ・・・あまり他人のような気がしませんので・・・。

 どこかで見たような関係じゃないですか?

 ハハハ、相変わらずマーゴお嬢様には手を焼かされてますか?

 ・・・そうか、関係は逆でしたね?

 奔放な姉としっかり者の弟。

 そういえば総司令官のご子息もそろそろ・・・。

 そうですか、

 ではもうそろそろ、騎士団各支部長を招集する時期だという事ですね?」

 


 「わかりました。

 それまでにはこちらの方も・・・。

 ええ、

 ではまたの機会に。

 あ、ライラックにもよろしく伝えてください。

 え? マーゴお嬢様に・・・ですか?

 は、いえ、ではくれぐれもよろしく・・・とだけ。

 いえいえいえッ!!

 はい、では失礼致します・・・!」


 ふぅー、・・・やれやれ。

日浦は電話を終え、コーヒーを注ぎに行く、

一日に何杯飲んでいるのだろう?

ま、それはともかく、

彼は一人、

これから取るべき予定を頭の中で描いていく・・・。

平和なはずの日本にある、秘密軍事施設を破壊するためのプランを。


   

マーゴ「せっかく名前出たのに、あたしの出番ないのよね・・・しくしく。」


ライラック「それ言ったら私だって・・・。」

ランスロット「君は出番あるだろう。」

ライラック「あ! ランスロット何バラしt・・・!」


マーゴ「ラーイーラックー、ちょーっとお話しましょ~!?」


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