表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
363/676

緒沢タケル編1 不審者

 

そしてこちらは・・・その姉、美香。

いつもなら大体二人で食事を作る。

たまにタケルがアルバイトをしていたり、美香が所用で遅くなりそうなら、

片方が食事を作るだけだ。

今夜は珍しくタケルがいいことをしたので、美香は機嫌よく料理を作る。

 「・・・さぁってと、

 なら、アイツの好きなもんでも作ってやるか?」


彼女も厳しいばかりではない。

母親役もしっかりこなすと、美香も自分の役目を自ら背負い込んでいた。

タケルに言わせれば「いい加減、いつまでも・・・!」と反論するだろう。

しかし二人の関係はずっと変わらない。

・・・恐らくこれからも。

 

 

 ジリリリリリリリン・・・!


電話が鳴った。

こんな時間に家の固定電話が鳴るのも珍しい。

旧家の緒沢家では、いまだに黒電話が活躍している。

 「誰かしら?」

鍋の火を緩めて美香は電話に出る。


 「もしもし? 緒沢でございます。」

 『・・・・・・』

 「もしもし?」

相手の声は聞こえない。

電話が遠いのだろうか・・・?

 「もしもしぃ~? 聞こえますかぁぁ?」


だが、返答はない。

美香が耳を澄ませると、・・・辛うじて呼吸音が聞こえる。

いたずら電話だろうか?

少なくともまっとうな相手ではなさそうだ。

美香は受話器を置く・・・。

 


 

当然のことながら、

下品な内容のイタズラ電話など、この年頃の女性ならば誰しも経験があるだろう。

もちろん、美香の脳裏にそんな予想もチラリと浮かぶ。

だが、・・・彼女は次に別のことを考えている。


 鍋はまだ大丈夫だ・・・。

けれど念のために、一度火を止める・・・。

別に鍋の事を考えていたわけではない。

さらにまた別の話だ。

程なく、美香は自分の部屋に戻り、使い慣れた木刀を手にする。

戸締りは問題ない。

緒沢家は古い家だが建付けはしっかりしている。

まあ、廊下などは歩けばミシミシ音もなるけども。

・・・しかし、たった一度のいたずら電話としては、

美香のこの行動は、過剰な反応であるようにも思われる。

美香自身も内心、そうは思っている。

・・・あくまで念のためだ。

美香は足を忍ばせ、玄関を窺い、のぞき窓から外を見る。

この辺りは住宅街だが、

普通に門の前を通行人や自転車が通っているだけだ。

表に異常はなさそうみたい・・・。

 

彼女は二階へ上がる。

タケルの部屋を開けた・・・。

やや、汗臭い男特有の匂いがするが、今はそんなことはどうでもいい。

部屋の電気はつけない。

タケルの部屋は表通りに面しており、

窓を開ければ、ある程度見晴らしがいい。

美香は窓のカーテンを揺らさないように、

ゆっくり、

ゆっくりと、その隙間から窓の下を見下ろした・・・。

何も問題はない・・・


 !?

  誰かいる!

家から少し先の曲がり角で、

誰かが塀に背中をもたれてこっちを窺っている・・・。

それっぽく携帯電話を耳にあて、

さも会話中にも見えるが、ちらちら緒沢家を見ているのは間違いない。


 ストーカー!?

 まさかこの自分に!?

・・・いや、

自分を多少なりとも知ってれば、

そんな命知らずなど、そうそういやしない・・・

と、思うんだけど・・・。

 

彼女は携帯をかける・・・。

 「あ~、タケル?

 まだ、警察?

 出たところ?

 ちょうどいいわ、一つ頼まれて?

 ・・・実はね。」


この二人の姉弟を良く知るものがこの状況を聞けば、

誰もがストーカーに同情するだろう・・・。

骨の一、二本で済めばいいのだが・・・。


美香はタケルとこまめに連絡を取り合う。

もう、タケルはすぐそこまで戻って来ている。

 「どう? 角の畑中さんとこ曲がった?

 ・・・じゃあ、いよいよね?

 私、玄関の扉あけて、そいつの注意引くから・・・よろしく!」

 


 

もう、足音を忍ばせる必要もない。

美香は階段を下りて玄関に向かう。

一応、扉を開ける前に、外の様子を窺うが・・・、

ヤツはまだいる。

・・・では、覚悟を決めてもらおうか・・・?

 ガチャリ・・・!


玄関から緒沢家の門まではたいした距離でもないが、

その暗がりの中でも、家から誰かが出てきたのは一目瞭然だ。

ストーカー(仮)は驚いて、一度身を引こうとする。

気付かれたろうか?

一方、美香はわざとらしくも門の手前で左右をキョロキョロ見回す。

ストーカーもその動きを見過ごすわけにもいかない。

身を潜めながら美香の動きを観察しようとしていると・・・、


 「なぁにやってんだ、アンタ!?」

カラダを動かした瞬間、背後に二メートル近いタケルが現われた。

 「ヒィィィッ!?」

 



タケル

「私タケルくん、いまあなたの後ろにいるの。」

ストーカー(仮)

「っ!?」


美香

「いろんな意味で怖いからやめてあげて。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ