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フラア・ネフティス編3 提案

 

 「な、なにぃっ!?」

目ん玉ひんむいて驚くアイザス。

そこまで酷くはないが、ツォンもディジタリアスも、

こんなはっきりと拒絶する彼女の反応を予想できなかった。

フラアは構わず己の意志を伝える。

 「ここは私の住む場所じゃありません・・・。

 家に帰らせて下さい・・・。」


家!?

あの家族と共に暮らした家に?

もう・・・誰も住んでいないのに!?


フラアは自分で言葉を発した直後に、

その無意味さに気付くのだが、

どっちにしろこんな場所で暮らしてなんてやるものかと、アイザス達の顔を睨みつけた。

 

そして勿論、そんな答えをアイザスが許すはずもない、

いや、先ほどのディジタリアスの説明の形を借りれば、

王統府や国民全てが許しはしないだろう。


激昂するアイザス!

 「それはならん!

 仮にも王族である事が判明した今、

 そなたをそんな場所に捨ておける訳もないだろうっ!

 気持ちは分かるが冷静に考えよっ!」

 

 

だが、

上から目線でそんなことを言われても、フラアには届かない。

ここはディジタリアスの出番だ。

 「フラアよ・・・、

 そなたが暮らしたその家に・・・

 誰が待っているというのだ?」


 でも・・・だって・・・っ

 

 「・・・誰も・・・誰もいなくても!

 あの家は私が育った家ですっ!

 思い出がたっぷり詰まった・・・

 こんな、こんな王宮なんか私の居場所じゃありませんっ!

 私の・・・

 私の大事な家族を奪った王宮なんかっ!」


涙ぐむフラアの声には固い決意が含まれている。

二人の王族の反論も封じてしまうほど・・・。

 


 

しばらく時間を待ってから、ディジタリアスは彼女をなだめる。

 「・・・落ち着くのだ、

 そなたの気持ちはよくわかる・・・。

 だが、暮らしはどうする?

 自分達を魔女と罵った近所の者たちと共に暮らすのか?

 それこそ・・・

 そこに、そなたの居場所はあるというのか・・・?」


 そんな・・・そんなこと・・・!


冷静に考えればフラアにもそれはわかる。

ただ、このまま王宮内で、

王女として暮らすことだけは受け入れることができなかったのだ。


アイザスが吠える。

 「ディジタリアス、

 これは聞き届ける訳にはいかんぞ!

 そんなマネしたくはないが、彼女を王宮内に閉じ込めておくしか・・・!」


叱責しようとするアイザスをディジタリアスが制する。

 「いえ、兄上!

 ならば、私に考えが・・・!」

 「考えだと!?」

 

 

そこでディジタリアスは、

フラアに今一度向き直る。

 「フラアよ、そなたが王宮を拒む気持ちは分かった・・・。

 だが、そなたには帰る場所もない。

 ・・・ではどうだ?

 思い切って、全く見知らぬ土地に行くのはどうだ?」


 何だって!?

それすらアイザスには許容できない。

だが、フラアはその提案に耳を傾けた。

どっち道、自分はこの街の生まれでなかった事を思い出したのだ。

ならば、それも有りかもしれない。

だが・・・まずは、アイザスの反論がある・・・。


 「待たれよ、ディジタリアス!

 そなたにそんな事を決められる訳もなかろうが!」

 「兄上・・・

 もちろんですが、一先ず彼女の意志を・・・。

 フラア・・・

 これより北にザラスシュトゥという王族の保養地があるのだが、

 冬は少し寒いが、そこそこ活気があっていい街だ。

 気持ちの整理がつくまでそこで暮らしてはどうだろう?」

 

フラアには聞き覚えのない地名であるが、

王族専用と言うことであれば、当然アイザスには心当たりがある。

 「ディジタリアス、ザラスシュトゥと言えば・・・そなたの?」

 「はい、兄上、私の冬場の静養地です。

 あそこなら王族の者がしばらく滞在するにも良い環境かと・・・。

 いずれにせよ、このフラアにも王家のしきたりなどを覚えさせねば、

 公の場にも出せぬでしょう。

 いかがですか?

 宮廷に彼女が正式にデビューするまで、

 ・・・あるいは彼女が自らの地位を受け入れるまで、

 そこで王族としての教育を徐々に・・・。」


なるほど・・・。

それはアイザスにとっては、どちらかと言うと賛成したくはないが、

ギリギリで許容できる選択である。

恐らく議会も承認されるだろう。

 


 

そして肝心のフラア・・・。

彼女にとっても、どちらかと言うと賛成したくもないが・・・。

他の選択肢よりかはマシそうだった。


  「今夜一晩、考えさせて下さい。」

と、それだけ言うと、

もうそれ以上、この場で考えたくもなかった。


 ただ・・・あれ?

 ・・・てことは、もしその選択をしたら、

 この陰気なディジタリアスと、

 冬場中、顔を突き合わせて暮さなければいけなくなるって・・・、

 そういうこと?


だめだ・・・何がどう転んでも、

あまりいい状況にはなりそうにないか・・・。

だが・・・もう・・・

それでいいのかもしれない・・・。

今はこの運命に身を任せるだけで・・・それでいい。

 

結局・・・

フラア自身の意志はあまり関係なかったようだが、

これで彼女の処遇は、ほぼ完全に決まる事になる。

その詳細は次回で・・・。

 


次回の更新で終了です。


なお、

この後しばらくして、大陸中を巻き込んで戦争が始まるのですが、


それまで

そして戦争終結後、ある人物の喪に服すという形で更に一年、このザラシュトゥがフラアのホームグラウンドになります。

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