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フラア・ネフティス編3 王都帰還

 

 ん・・・朝?

 ここは・・・あいたたた!

 体が・・・背中がヒリヒリ・・・

  あれ、目の前に・・・

  パチクリ!


 「きゃあああっ!!」


翌朝、フラアは目を覚ました。

まず最初に知覚したのは、カラダの各所が悲鳴を挙げている事、

・・・そしてさらに驚いたのが、

目の前に一人の子供が眠っていたこと・・・!

そして、彼女の悲鳴でツォンも目を覚ました。

 「ぅ・・・んん、何だい、大声出して・・・、

 おはよう、フラアねーちゃん・・・。」

 「ちょっと・・・あ、あな、あなな、あなた・・・ツォンくん!?」

 「朝から元気だね・・・今、何時?

 6時? ふゎぁあ・・・!」

 「な、なに、あたしの間近で寝てたのよッ!?」

 「えええ、いいじゃぁん、こんな狭いとこなんだし、

 第一、布団だって最低限のものしかないし、

 せっかく、暖かいトコがあんだからさ?」

 「そ、そーじゃなくて!

 へ、変なことしなかったでしょうね!?」

 「変なことって?」

  

 「え、や、そ、そそそそれは、お、おかしなマネよ!」

ツォンは首をかしげる。

 「んん? ん~、よくわかんないけど、

 ラヴィニヤねーちゃんとだってよく一緒に寝たけど、

 特に何もなかったよ、何を興奮してんだ?」


 そうなの!? 信じていいの!?


ちなみに旧ウィグルのラヴィニヤは、

超スーパー箱入り娘だったために、 物語史上最強の天然少女だ。

勿論、歴史でしか彼女の事を知らないフラアに、そんな事が分かる筈もない。


とりあえず、いつまでも些細なことにこだわってはいられない。

朝になったからには、本来の目的を果たさないと!

不思議がるツォンは一度、ほっといて・・・。

 「じゃ、じゃあその件はいいわ・・・、

 えっとね、まず、私も、

 ちょっと・・・そこいってくるから・・・

 すぐ戻ってくるから、動かないでここにいてよ!?」

 

 

花も恥じらうお年頃のフラアとて、

生理現象を避ける事など出来はしない。

だが、ここからのシーンは割愛させていただく。

一々、登場人物たちの行為を書くのが面倒だというのではない。

これ以上、主人公を汚す必要はないと判断したからだ。

彼女が、どんなポーズで、どんな態勢で、どんな足の開き方で、

どんな音をさせながら、どれだけの時間をかけて、その間、どんな表情だったのか、

そのような描写を読みたくて読みたくて堪らない人もいるかもしれないが、

フラアのそんな姿を読者の皆様に晒すのは、可哀相過ぎてとてもできない話なのだ。



とにかく彼女も朝、すっきりしてツォンの下に戻ってきた。

 「・・・それでね、考えたんだけども、

 あなたがその気になってくれなきゃ、どうしょうもないの・・・。

 協力してくれるのよね?」


 「あ、ああ、それは約束するけどさ、

 街や人を攻撃するのは無しだよ?」


フラアとて荒っぽく事を運ぶことは本意ではないのだが、

法王庁の人間が、素直に話を聞いてくれるとはどうしても思えない。

どうもツォンは昔のノリで、

ウィグル王家はみんないい人たちばかりだと思いこんでいる節がある。

フラアとしては、王宮前でキントクラウドを滑空させ、

論より証拠を見せれば手っ取り早いと思えるのだが、

ここ数日、悲劇を連続で味わった彼女は、

同時に思い浮かべるネガティブな予想を否定することができない。

 (仮にこの船が飛んでるのを見れば、

 ツォン君の事は信用されるだろうとは思うけど、

 だからと言って、あたしが魔女でないとする証明は何一つできない・・・)

 

 

特に昨日からの問答で、

ツォンが人を説得するだけの弁が立つ者には到底思えなかったのだ。


そこでフラアは、ツォンの機嫌を損ねない程度に、

自分の考えれる範囲の予想や状況を話した。

方向性としては、ツォンのキントクラウドで、

王宮上空で何らかのデモンストレーションを行う。

自分やツォンの姿をさらけ出すのは極力避ける。

王宮になんの動きも見えない時は次の手を考える。


学のない少女と、知能のアレな子供(?)が考え付いたのはここまでだった。

そしてついでにと言えばだが、

余計なことだけツォンは思いついたようだ。

 「フラアねーちゃん、ラシってどんな街なんだ?」


 「ラシ? そりゃ、人が大勢いて、賑やかで、

 大陸一優美だとも言われてるけども・・・?」

 「ならさ!

 船で王宮の周り飛び回る前に、街を軽く見せてよ!」

 「ええ? そんな暇は!?」

 「だってある程度の地理感覚は必要だし、

 高射砲とか武器があったらヤバいだろ!?」

 「ああ、そ、そういうことなら(高射砲ってなんだろ?)・・・。」

知らない単語を使われて、煙に巻かれてしまったような気もしたが、

フラアは同意した瞬間、激しい後悔に襲われた・・・。


 ツォン君、絶対、町並みを見物したくて物を言ってる・・・。

 

 やっぱり念を押しておこう・・・。


 「あ、あのね?

 あたし、法王庁の人間に見つかったら拷問を受けるのよ?

 わかる!?」

 「だいじょーぶ、

 この時代の武器って剣や槍程度なんだろ?

 おいらの武器、ニョイロッドでギタギタにしてやんよ。」


ニョイロッドとはレーザーガスを使った超凶悪な武器である。

かつてはこれで、敵国スーサの戦力に大打撃を与えたものだ。

いきなり人体に使うと、放送規制に引っ掛かりそうな惨劇を生み出すが、

敵の武器や機動力を封じるのに大活躍した武器だ。

そして悩むフラアにツォンはとどめのセリフを・・・。

 「第一、フラアねーちゃん、

 メシはどーすんだ?

 おいらの食糧そんなに貯えないよ?」


その問題は切実だ。

第一、今、自分は一文無し・・・。

 「そ、そーね、食べ物探さないと・・・。

 ツォン君、お金なんて・・・あるわけないよ、ね?」

ところがツォンは、

キントクラウドの中からジャラジャラと革袋を・・・。


 「え!? それ、お金!?」

 「おいらの時代に使われてた金貨や銀貨だよ、

 今じゃ使えないだろ?」


いーえ、そんなことはない!

本物の金貨や銀貨なら、両替所に持ってけば高額で引き換えられるはず!

ましてや古銭であるならば!

 「ツォン君、素敵!

 金貨一枚でも凄いお金になるわ!

 さぁ、ラシに戻って、暖かいご飯でも食べましょう!!」

 「・・・フラアねーちゃん、現金なんだね・・・。」




朝になればラシの城門は開く。

各門に見張り兵は立ってはいるが、

よほどの事がない限り、一々呼び止められはしない。

法王庁から、

拘束衣を着せられた黒髪の魔女が逃げたとは連絡が来ているが、

既にフラアは川べりで髪を洗って、編み上げた髪型で何食わぬ顔で城門をくぐろうとしている。

それに上着はコーデリアの物だから、

そんなに目立ちはしない。

何より、今や彼女は一人ではなく、子供(?)連れである。

 

 

 まさか、こんなに早く舞い戻ってくるなんて・・・。


既に太陽は明るく輝き、町は活気を見せ始めている。

フラアは当然、顔見知りがいそうな生家の近くは避け、

人通りの多い、王宮により近いメインストリートや、

食べ物屋のある商店街をふらついている。

・・・フラアは王宮に向かおうとし、

ツォンは落ち着かずにあちこちの屋台や食い物屋を行ったり来たりだ。

落ち着きがない。

絶対に大人のとる行動じゃない、

まさしく子供の行動パターンだ。

これでよく、400年前の戦争を経験してきたものだ。

とにかく埒があかないので、適当なウィグル麺屋を見つけた。

朝からでもそれなりに人が入るのが、王都ラシの王都たるゆえんだ。

先に両替すべきなのだろうが、両替ショップは数も少なく、

ここからまだ距離もある。

まずはこのお店で交渉を・・・。

 


フラア「あ、あの、ほ、ホントに誰も見てなっかたんでしょうねっ!?」


見てませんし、聞いてもいませんよ、フラアちゃん。

実況中継なんて以ての外ですとも。


フラア「・・・・・・。」

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