フラア・ネフティス編3 遺跡に潜みし者
皆さん、過去の登場人物覚えてらっしゃいますか?
なお、再度申し上げますが、
主人公フラアの歴史認識と、実際400年前の出来事が一致するかどうかは別の話です。
暗がりなので、顔の細部までは分からないけども、
初代国王天使シリスの像は、
見ようによっては、少女のような美しい顔立ちをしているようだ・・・。
じゃあ他は?
シリスの彫像の背後には3人の女性の彫像が並んでいる。
真ん中は・・・ゴージャスにウェーブされた髪の女性、
うぃっち おぶ うぇーるず・・・
聞いたことがある・・・あ、やっぱり。
フェイ・マーガレット・ペンドラゴン・・・
第二代国王カラドックの母親だ・・・。
その右隣りには、髪の短い・・・どちらかというと地味目な感じの・・・
シリスと最も早い時期から知り合いだった女性、加藤恵子。
左隣には・・・
シリスが斐山優一と名乗っていた頃、その片腕と評されていたエリナ・ウィヤード・・・
しばらくフラアは痛みと疲れを忘れ、夢中でその他の彫像を観察して回った。
歴史のクイズをしているみたいで、意外に楽しい。
今の自分の状況も忘れたか?
なになに? ウランドン・ジェフティネス・・・
分かる分かる、シリスのもう一本の片腕と言われた天才技術士、
次はぁ、四人の使徒の一人・・・鬼道に仕える巫女 ホオヅキヒミコ・・・
これは・・・えーと誰だっけ、カトー・・・カトーカトーカトー・・・
ああ、シリスのもう一人の息子・・・加藤恵介・・・
さっきの加藤恵子との間の息子だったっけ。
確か、この加藤恵介って、
味方の裏切りにあって、若くして殺されちゃったとか・・・?
それからえーと、
・・・あれ? これあたし?
あは、・・・そんなわけないか?
カラドック王のお妃さま、ラヴィニヤ王妃・・・。
それでこっちが・・・加藤恵介に剣を教えた完璧の騎士ガラハッドね。
そしてフラアはその中でも一際大きな彫像を見つける・・・。
大きい・・・えーと、・・・ア ス ラ?
えっ? まさかスーサの王、羅睺星の天使アスラ!?
うっわ、
・・・髪長っ・・・手足も長いし・・・
アスラってウィグルと大陸を二分したスーサの国の王様よね!?
結局はウィグルが滅ぼしちゃったけど・・・。
なんでそんな敵国の国王までここに飾るのだろうか?
この施設が、
いや、少なくともこの部屋が、当時の偉人達を顕彰する場だと言うことは、
フラアにもなんとなく理解し始めていたが、
いくつかの不審点と言うか、何かの違和感だけは彼女も感じ取っていた。
さて、フラアがこれらの彫像に夢中になっている間、
この場で一つの異変が起きつつあった。
・・・彼女はそれにまだ気づいていない・・・。
視線・・・。
この部屋の空間・・・そのどこかのある場所から、
一つの視線が彼女の姿を・・・動きを追っていたのである・・・。
それは・・・獣か・・・
ここに潜んでいた何者かか・・・、
それとも・・・常識では想像することもできない何らかの生命体か・・・。
フラアが違和感の一つに気づいたのはしばらくしてから・・・。
音が大きくなっている・・・?
不安が大きくなったフラアはもう一度部屋の中を見回す。
一体、この音はどこから・・・?
え・・・?
あれ・・・なぁに?
彫像が林立しているエリアから少し離れた所に、
ランプの光を反射する何かがある。
大きい・・・
今まで部屋の一部と思っていて気付かなかったようだが、
明らかに異質の存在だ・・・。
直径4~5メートルの大きな丸みを帯びた物体・・・。
高さはそんなにない、1メートル80くらいだろうか?
フラアはその物体の正体を探るべく、そ・・・っと近づく・・・。
気のせいじゃ・・・ないよね?
うっすらと光が・・・あっ!
・・・物体が少しずつ明るくなるのとほぼ前後して、
フラアの持ってるランプの油が尽きた。
「コーデリアぁ!!
もっとたっぷり入れときなさいよぉぉ!!」
と思ったが、
冷静に考えれば、彼女も家人に見つからないようにするので精いっぱいだったのだろう。
そこまで要求するのは酷な事だ。
それより、すぐに次の光源であるその大きな物体に目を見やる。
トイレだろうか?
いやいや、こんな無駄に目立つ造りのトイレはないだろう。
そして光はいつという事もなく、その物体全てを膜のように覆い終えていた・・・。
ドガタァン!!
えっ!?
フラアが振り向くと、
先ほど自分が落下してきた穴の上方から声が聞こえる・・・。
まさか・・・。
「おい! 見つけたぞ! この穴の下だ!
間違いねぇ、
雨で地盤が緩んで、この穴の中に落っこちやがったんだろう!」
「でも入れるか? 中で死んじまったんじゃないか?」
「捕縛用のロープがあるだろう、
そいつで一人ずつ下りて見よう。
ロープの長さが足りないようなら、今晩はあきらめるしかないが・・・。」
冗談じゃない!
自分がそんなに怪我をしなかったこと、及び今の声の位置を考慮すると、
恐らく2~3メートルかそれぐらいの高さだったのだろう、
ロープで降りてこられてはあっという間に見つかってしまう!!
すぐに逃げることを考えたが、
もうそんな体力などありはしない・・・。
フラアは、
先ほどまで観察していた物体を背にして、
どこか隠れる場所はないかと、無意識のうちにカラダをずらしていた・・・。
その視線は、
追手が下りてきそうな、先ほどの天井穴の部分に釘づけになったままだ。
そして彼女は気づかない・・・。
背中の光る物体が動き始めた事を。
「それ」は静かな音を発し・・・、
少しずつ・・・少しずつ、
フラアの腰の辺りから上方に・・・
それこそ真っ二つに割れるような動きを示した。
まるでその様は、巨大な焼き蛤が開いていくような・・・。
そして天井の穴からロープが垂れ、
追手の一人がこの暗い室内にカラダを見せ始めた時、
フラアの背後の光る物体の中から・・・
白い・・・
そして子供のように小さな手が、フラアに向かって伸びてゆく・・・!
もちろんフラアは背後には無警戒だ!
そしてその手は最後にフラアの首を・・・
「キャアーッ!?」
その瞬間、フラアはその物体の中に引き摺り込まれた。
ウェールズの魔女マーゴは天使シリス編のキャラです。メリーさん編では魔女属性を薄めました。
完璧の騎士ガラハッドは緒沢タケル編のキャラですが、シリス編でも活躍します。
ウランドン・ジェフティネスとホオズキヒミコは未登場です。
恵介の名前は・・・今回初だったかな。