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フラア・ネフティス編3 コーデリア現る

 

フラアは既に城壁の近くまで辿り着いていた。

だが、そこからどうやって町の外に出れば良いのか・・・。

朝まで待てば城門は開く・・・

けれど同時に、こんなみすぼらしい格好の・・・、

しかも恐らく自分の素肌や衣服は血だらけだろう、

その姿で、衛兵に誰何されない訳もない。

間違いなく審問所に連れ戻される・・・。

15年以上この街に住んでいるが、

他のルートも思い浮かべることができない・・・。


そう考えあぐねていると、

自分の背後から何者かが近づいてくる気配を察知した。


 誰? 追手?

 でも足音は一つ・・・


フラアが建物の角に身を隠し、

誰かがやってくる方角を見ると、

自分より身長が少し高めの女性が、

ランプを片手に小走りで近づいてくるのが見えた。

  

 こんな時間に誰が?


その女性が城壁の傍まで来ると、

彼女は何かを探すようにキョロキョロ落ち着きなく辺りを見回している。


・・・彼女・・・まさか・・・!

 「コーデリア!」

フラアは思わず声を上げた。

 やばい! 

とも思いはしたがもう遅い、

その声はコーデリアに届いていた。

相変わらず険しい顔つきだが、

そのコーデリアはフラアの声に反応すると、

眉をしかめたまま、ほっと胸をなで下ろしていた・・・。

 「そこにフラア・・・いるのかい?」


フラアがまず反応したのは、

「いけない! 見つかった!!」

という逃走本能・・・。

だが同時に一つの疑問も浮かべていた・・・。

 なぜコーデリアがここに?


既にフラアは、家族以外の全ての人間が信じられなくなっていた・・・。

自分が「魔女」と呼ばれてから、

何人もの人間が、自分を見る態度を変えただろう?

それにただでさえコーデリアとは仲が悪いのだ。

ここで彼女を警戒するなと言う方がどうかしている。

 

彼女は自分を捕まえに来たのだろうか?

でもそれなら、

どうしてこんな時間に一人なのだろう?

フラアはすぐに返答できないままだった・・・。

つまり固まった状態・・・、

するとコーデリアはイラついたのか、足を小刻みに動かしながら、

フラアがいそうな方向に向かって暴言を吐く。

 「・・・ああ、めんどくせー!

 何コソコソしてんだよ!?

 人が呼んでるんだからさっさと出てこいよ!」


しばらく呆気にとられたフラアだが、

なぜかこの状況で可笑しさがこみあげる。

 ぷっ・・・、

 ホントにコーデリアだ。


恐らく、

ここでコーデリアが猫なで声でも出せば、

却ってフラアの警戒心は増すだろう。

今までと・・・ケンカばかりしていた時と変わらぬコーデリアがそこにいて、

思わず自分の警戒心が緩んでしまったのだ。

 


 「ちょ・・・っと、

 何でこんな時間にあなたがふらついてるのよ!?」

ならば負けずにフラアもケンカ腰!


 「ああ!?

 そんなとこにいやがった!

 アンタが通りを駆けていくのを見たからだよ!

 脱走でもしてきたのかい・・・?」


ようやくここで、

本来あるべき筈の緊迫した空気が走る・・・。

やっぱりコーデリアは状況を理解していた・・・。


 「・・・だとしたら・・・何よ?」

 「フン、別に?

 アンタがいなくなれば少しはせいせいするからね?

 とっとと、追いだしてやろうかと思ってさ、

 ・・・城門を抜けるんだろう?

 なら、こんなとこでグズグズしてないで!

 さっさと行ったらどうだい!?」


コーデリアは吐き捨てるように、

視線を下にずらせている・・・。

 え? まさか・・・コーデリア、

 あたしを助けようと・・・?

 「コーデリア・・・あなた・・・。」

 


例え長年喧嘩してきた相手だろうと、

フラアを憎ったらしい相手だと思っていても、

コーデリアにはコーデリアの正義があった。

フラアに「いつか思い知らせてやる」とは本心から思っていたが、

魔女裁判にまでかけられて、

処刑される必要なんてないはずだ。

それも・・・

そのきっかけを作ってしまったのは、

恐らく自分・・・。


コーデリアはある意味、正義感の塊のような女性だ。

逆に、それが自分本位になりすぎていて、

自分のルールに従えないモノ、

自分の価値観に合わない物はすぐに批判対象になる。

だからこそ、

フラアに過剰な程、悲惨な目に遇わせてしまった自分がこれまで許せないでいた・・・。

何とか、自分の犯した間違い、過ちを贖う方法は・・・。


その為に、

後先考えずにコーデリアはここまで来たのだ。 

ただし、

自分が悪いと分かっていても、

フラアなんかに頭を下げる気持ちはさらさらない。

そんなことをしたら、「それ見なさい!」

というフラアの、偉そうな態度がありありと想像できる。

 

ここであの日の事を謝罪したら、

それこそフラアの口から、呪詛と恨みの言葉が機銃掃射のように自分を襲うかもしれない。

コーデリアにしてみれば、

あくまでも上から目線でフラアを見下す位置にいたかった。

故に、フラアに余計な事を考えさせる暇を与えるべきではない。


 「何やってんだよ!

 外に出る道はあるのかい!?」

 「あ? え、えと、ないわよ!

 見つからないからこうやって悩んでるんじゃない!」

 「・・・たくしょーがねーなぁ、

 そんなことだろうと思ったよ・・・。

 こっち来な! たぶん、二人がかりならどうにかできるよ・・・。」

 「え・・・どこへ!?」

 「堀の排水門・・・

 あそこからなら抜けられるかも・・・。」


こんな風に、二人だけで行動する機会など、今まであった試しはない。

二人は無言で・・・一つの目的の為に足早に行動していた。

・・・なお、フラアの方にしてみれば、

自分たち家族をこんな目にあわせた原因を、

コーデリアのせいにする事はあまり考えていなかった。

確かに、発端はコーデリアの一言なのだろうが、

それ以上にフラアが恨んだのは、

今まで仲良くしていたのに、自分たちの扱いを急に手のひら変えて、蔑み始めた町の人間・・・。

フラアにとって、

コーデリアは最初からうざくて、偉そうで目障りな存在、ただそれだけなのだから。

 


やっぱりコーデリアはこうで・・・いえ、なんでもありません・・・。

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