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第7話

 

「呪われた人形メリー」が、

カルト教会ダイナスティ幹部達の前に姿を現した!


 薔薇の刺繍のドレスを纏い、

 そのか細き腕には一振りの鎌。

 青白い程の滑らかな肌と、

 純白のコルセット、

 光り輝く銀色の髪にして、

 透き通る程のグレーの瞳!


メリーは着地するや否や、

息もつかずに手にした武器を振り上げる。

その「死神の鎌」の、

凶悪な間合いの中におさまった幹部は、

驚愕と恐怖でのけぞるだけしかできない。


まるでダンスでも踊るような、

なめらかな動きで鎌を一閃・・・

カラダを捻ってもう一閃ッ!


あっという間に二人の男のカラダから血しぶきが飛ぶ。

・・・一人の首は半分ほどちぎれ、

もう一人は咽喉をざっくり切られている・・・。

すぐに部屋の扉が開き、

男性信者があわただしく入ってくるが、

人形が鎌を振るって幹部を切りつけている異常な事態に、

すぐにはカラダを動かせない。

その間にも別の幹部がおぞましい鎌の餌食になる。


 (この場に残るは二人・・・)

 


 

 「ギャアーァッ!!」

児島の妻が、

その顔をありえないほど歪めて悲鳴を上げる。

手近には、

外から入ってきた信者がいるが、

彼らは後回しだ。

メリーは瞳をギョロッと動かして、

飛び上がりざま上段から鎌を振り下ろす。

体重だけはいかんともしがたいメリーは、

その武器の形状からも、

遠心力を利用した攻撃が最も効果的だ。

・・・死神の鎌は児島の妻の肩口を越え、

背中から心臓めがけてつきたてられる。

メリーは、

その中年女性のカラダを踏みつけるようにして鎌を外す。

児島鉄幹が逃げようとして、

信者のカラダを押しのけながら出口に向かう。

メリーが先に信者を切らなかったのは、

彼らの存在が、

児島が逃げる時の障害物になると判断したからだ。

・・・が、

児島が先に逃げてしまえば、

逆に信者達は、

メリーにとっての障害物に変わってしまう。

  ズザザッ

ならば・・・!


狼が獲物の咽喉元に飛び込むように、

信じられない程の跳躍力でメリーは出口までに辿り着く。

・・・その間に立ちはだかっていた二人の男性信者は、

力なくドサッと床に倒れこんだ。

あまりのスピードに殺された事にも気づいていないだろう・・・。

 「うわああぁ~!!」

叫び声を上げながら部屋を出る児島!

叩きつけるように扉をしめようとするが、

メリーの鎌がそれを許さない。


 逃 が す も の か ! 

 



メリーは入り口の扉の隙間に鎌を差し込む。

ドアを押し開ける必要は無い。

挟まった鎌を捻れば勝手にドアは開かれる。

通路には他にも何人かの男女がいる。

そのせいで、どうしても児島は思うように進めない。

動く人形の姿のメリーを見て、

信者達は驚愕の悲鳴をあげる。

通路に出て、

児島の姿を確認したメリーは、

一瞬、動きを止めた・・・。


だが、

次の瞬間またもや弾けるように、

児島の背後に襲いかかった!

彼女は廊下に出た瞬間、

無意識のうちに狭い通路の空間把握、

そしてその有効な鎌の軌道を計算していた。

振り回すというより、

穿つような動きで鎌を突き出し、

間合いの遠い位置から、

最低限の手首の返しで児島鉄幹の右足首を斬り飛ばす!

力なく崩れ落ちる児島鉄幹・・・。

 「 ( ヒ イ イ イ イ ィ ッ ! ! ) 」


声にならない悲鳴が漏れる・・・。

だがメリーはすぐに追撃しない。

・・・その廊下にいた男女は余りに悲運といえよう。

メリーは、

左右に散らばる男女の姿を確認すると、

無慈悲な・・・

無差別な鎌の攻撃を開始したのである・・・。

 



阿鼻叫喚とはまさにこの事・・・。

悲鳴と血しぶき・・・

転げまわる犠牲者・・・、

もはやピクリとも動かないただの肉塊・・・。

最終的に命のある者は・・・

恐怖におののく児島鉄幹ただ一人。

メリーは、

動けない児島の首根っこをひっ捕まえると、

細身の腕では考えられない怪力で彼のカラダを宙に持ち上げた。

 「ヒッ・・・た 助けてくれぃ!

 誰かーぁッ!?」


メリーは児島を持ち上げながら、

先ほどの部屋に戻った・・・

一切の邪魔が入らないように。


児島は最後の力でドアにしがみつくが、

もはや大した抵抗にはならない。

・・・メリーは、

「聖魔祭司」児島鉄幹の耳元で、

小さく、しかしはっきりした声で、

最後の処刑宣告をささやいた・・・。


 「私・・・メリー、

 愛する娘を救えずに・・・

 絶望のうちに殺された父親に、

 魂の安らぎを・・・。」


彼の脳裏に、

幹部達と共に生き埋めにした、

女性信者の父親の姿が浮かび上がる。

だが、

後悔しても既に手遅れだ・・・、

その父親の命は、

もう、戻ってこないのだから・・・。

 「ヒ イ イ イ ッ !

 小 伏 様 ー ッ ! ! 」


メリーの死神の鎌は、

ゆっくりと児島の咽喉元に当てられ、

・・・何の躊躇いも無く、

一気に汚れた彼の命を引き裂いた・・・。

残すは・・・

赤いフードの男のみ。

 


メリーの目には、

廊下の脇の階段が映っていた・・・。

それは階下へ続く階段、

それと階上へ続く階段・・・。


一階からは、

騒ぎを聞きつけた、

他の信者達のざわめく声が聞こえるが、

数々の悲鳴に怯えて上にあがってこれない・・・。

彼らは幸運だ・・・。

最後のターゲット「天聖上君」小伏晴臣は上の階にいる・・・、

メリーはゆっくり、

ゆっくり階段を昇っていった。

階段の昇った左側には、

給湯室とトイレ・・・人の気配は無い。

右側の奥には社長室だが、

手前に応接室と、

小会議室が並ぶ広めの通路がある・・・。

メリーはそこで、

二人の人間の気配を感じ取った・・・。


ゆっくりと通路に出る・・・、

待ち構えていたのは、

半裸の状態で通路を塞ぐ二人の女性。

 「そこまでだ! 邪悪なる者よッ!」 

張りのある甲高い声で叫ぶは「紅かすみ」。

左手に剣を持ち左足を前にする。

剣の切っ先はメリーに向けられる。

 「人に非ざる者よ!

 ここから先へは進ませないッ!」 

湿感のあるくぐもった声の「十六夜はるか」。

右手に剣を持ち右足を前にする。

同じくその剣をメリーに向ける。

模造刀などでなく本物の剣のようだ・・・。

背中合わせになった紅かすみと十六夜はるかは、

アニメのキャラクターのように口上を続ける。

 「紅かすみの流舞の剣!」

 「十六夜はるかの天狼の刃!」

・・・そしてセリフは二人同時に・・・、

 「「我ら、

『天聖上君』様を守りしホーリークルセイダー!

 聖なる光刃、直撃するが良い!!」」

 



彼女達は本気だ・・・、

洒落や冗談でふざけている訳ではない。

実際のところ、

感情を持たず、

殺戮モードになっているメリーに話しかけることにあまり意味はない。

もっとも、

ホーリークルセイダー達にしても、

心の底から定着したスタイルなのだろう、

普通の神経なら、

人形のメリーを見て動揺しない方がどうかしている。

彼女達は、

完全に教祖の洗脳の支配の下にいた。

ダイナスティの教義によれば、

教祖小伏晴臣は宇宙の救世主、

常に魔界の尖兵に命を狙われる立場・・・、

今のこの状況は、

常日頃から危ぶまれていたことが現実になっただけの事である。

そして、

一度そのような事態が起きれば、

命を賭けて戦う事が彼女達の使命なのだ。

一方メリーの方では、

彼女の復讐の対象に目の前の二人は含まれていない。

だが、

最後のターゲットに向かうのに、

彼女達の存在は障害だ。

呪われた人形メリーは攻撃態勢に入った。

 


メリーの鎌が空気を切り裂く! 

アラベスク文様の装飾された死神の鎌だ。

右から十六夜はるかの肩口を狙う。

だが、

彼女達には恐怖が薄いせいか、

そのメリーの攻撃に的確に反応する。

常日頃の修練の成果だろう。

変則的な鎌の動きには、

対応するのもやっとだったかもしれないが、

十六夜はるかの剣はメリーの鎌を確実に弾いた。

紅かすみはその間隙を逃さない。

鎌が弾かれて、メリーの動きが一瞬静止した瞬間に、

飛燕の如くその剣を走らせる。

攻守一体絶妙のコンビネーション!


紅かすみの手には確実な手ごたえがあった。

だがそれは、

メリーの黒いドレスを切り裂き、

石膏の胸を傷つけただけ・・・。


人間相手なら勝負は決まっていただろう。

メリーはすぐには反撃しなかった。

今や、挟まれた形になったメリーは、

そのグレーの瞳をギョロギョロ動かし、

二人の力を分析していた・・・。

基本的にメリーの闘争本能に、

「防御」は存在しない。

また、

直接の復讐のターゲットでない相手では、

彼女の力は最大には発揮できない。

もしメリーを倒そうというのなら、

付け入る隙はそこにしかない。

 



・・・だが、

そのメリーの不利的条件をさっぴいても、

彼女達「ホーリークルセイダー」の能力は尋常でなかった。


 生身の女性のカラダで、

 死神の鎌を弾く?

 メリーの胸を砕いた剣の鋭さは・・・?


 「・・・はるか!

 この化け物を切ることはできないッ!

 手足を砕くか・・・頭を破壊するかっ・・・。」

 「わかったわ、かすみ!

 まずは行動不能にするわけねっ!」

メリーの頭越しに二人の会話が飛ぶ・・・、

実際その戦法は有効かもしれない。

メリーの方も、

彼女達の能力が、外見以上の物である事は今の一瞬で理解した。

それが薬物による影響なのか、

それ以外の物なのかはメリーにとってはどうでもいい。


紅かすみが剣の柄を握りなおす・・・

そしてそれは攻撃の合図だ!

 「 ヤ ア ア ア ッ ! ! 」

二人同時に切りかかるッ!

紅かすみはメリーの左肩!

十六夜はるかはメリーの右手首!

タイミング・踏み込み・角度・狙い・・・

全てが賞賛に値する攻撃だった!

だが、

ここで彼女達の予想外の行動をメリーは取る。

メリーはそのグレーの瞳を、

二人から、

何の興味も失せたかのように外してしまったのである。

 



ホーリークルセイダー達の名前は教祖様がつけたものです。

教祖様の好みとセンスによるものです。

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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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