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フラア・ネフティス編3 人気者フラア

 

夕日が西の山々の陰に隠れようとしている。

石やレンガで造られた町並みは、

オレンジ色に染められつつある。

すでに王統府が運営した戴冠パレードは終わりを告げて、

後は庶民や町が、

勝手に盛り上がる祭りが続く。

普段なら、

家路につく人々・夕飯の支度などで、静かな雰囲気のこの下町も、

酒臭さを充満させ、賑やかな人々で活気づいている。


その人ゴミをすり抜けるかのように、

小柄な少女は駆け抜けていた。

ナンパ回避のためだ。

別にこの辺りの町並みは知り尽くしているから、

見知らぬ人間に声をかけられることなど滅多にないが、

一度捕まると、中々放してはくれないので面倒なのだ。

しかも今日は、皆さん、

お酒も入っている・・・。

 

彼女・・・フラアのほうとても、

17才ともなれば、女の色気も生じてくる。

まだあどけなさも残るが、

将来性を十分に感じさせるその顔立ちは、

多少、ロリコンと呼ばれても「それがどーしたー!?」と開き直る男たちも多かろう。

同年代の少女たちに嫉妬されるのも、

無理はないのかもしれない。

何より、

彼女は明るく・・・社交的すぎたのだ・・・。


カラーン・・・!


フラアは街の飲み屋に一人で入ってきた。

勿論、酒を飲む為でも、ナンパされるためでもない。

普段はこの時間帯は準備中なのだが、

今日は祭りなので、

真昼間から大勢の酔客でにぎわっていた。

一人で入ってきた未成年の少女は、

誰の目にも目立つ存在なので、

あっという間にフラアに声がかけられる。

・・・でもみんな知り合いだ。


 「おおお!

 フラアちゃーん、かわいくなったねー!?」

 「こっち来なよー、一緒に飲も~!?」

 

 

照れ笑いを浮かべながらフラアは辺りを見回す。

大体が子供のころからの顔見知りなのだ。

不安や警戒心など浮かべる必要すらない。

・・・でもここに来たのは・・・


あー、いたいた!

 「お兄ちゃん!!」


カウンターの片隅に、

若い数人の男が固まっていた。

お兄ちゃんと呼ばれた男は、

既に顔を真っ赤にしてはいたが、

妹の声を敏感に察知して後ろを振り返る。

 「おお、フラア~、どうしたぁ、こんなとこにぃ~。」


そのグループの傍までトコトコやってきて、

フラアはあきれ顔で兄をたしなめる。

 「やっぱりここにいたぁ・・・、

 飲みすぎだよ、

 お母さんに言われてきたのよ、

 どーせ、ゼペットさんの飲み屋で真っ赤になってるだろうからって、

 つぶれない内に家に帰ってきなさいって!」

 

 「あ~、まだ大丈夫だよ~、

 ・・・えーと、ホラ、太陽だってまだ残ってるし、

 太陽さんも赤い顔してんじゃーん?」

 「・・・わっけ分かんない理屈こねないの!

 ホラ、早く!

 お母さんの夕飯に間に合わなくなるよ?」


そのうちに、

兄の友人たちも囃し立て始めた。

 「まーまーまー、フラアちゃん、

 今日はせっかくのめでたい日なんだからさ!

 ピエリはオレらで面倒みるよ・・・、

 てか、フラアちゃんもここに座りなよ?

 ジュースかお茶か、一杯ぐらいなら怒られないだろ?」

 「えー、でもぉ~?」


兄とは反対側の席を空けられ、

フラアは2、3秒迷った挙句、

ちょこんと座ることを余儀なくされた。

二十歳前後のこの男たちは、

遊び盛りで、女の子が大好きだ。

フラアを誘った少々柔らかい顔立ちの男は、

しげしげとフラアの成長ぶりを堪能した後(そんな見ないでください!)、

隣のピエリに向きなおる。

 

 「ピエリ~、おまえ、フラアちゃん可愛くなったよぉぉ~!

 予想通り・・・いや、予想以上の成長だよ!!

 これは・・・おまえ、もっと奇麗になるぞ、この子!

 どうだ?

 今度、オレとデートさせろ、な?

 親にも・・・その、うまくオレをアピールしておいてくれよ、

 金物屋のデボアはいい男になりましたよ、とか!」


ピエリはしまらない顔をしながら一笑に付した。

 「ふぅざけんな!

 てめぇに兄貴呼ばわりされてたまるか!

 あ、・・・おい! 

 そこ、ケィデンス! さりげなくフラアの肩に触れんじゃねー!!」


たちまち男たちに囲まれるフラアだが、

勿論、信頼できる兄もこの場にいるし、

年上の男たちにちやほやされて、嬉しくないフラアではない。

彼女だって女の子である。

隣に座られて、太もも同士を軽く接触させられたり、

指を撫でられたり、

髪の毛を梳かれたりぐらいなら、なんとか・・・

 あっ、クンクン匂いを嗅ぐのはアウトォ!!

 



 

・・・やっぱりコーデリアの言うとおり、

調子に乗ってる部分はあるのかもしれない・・・。

本人にその自覚を求めるのは無理なのだろうけど・・・。


その内、フラアはこれ見よがしに、

先ほどのパレードの戦利品である王様の羽飾りを頭上にかざした。

 「あっ、なに、それ、フラアちゃん?」

 「えへへ、王様がつけてた羽飾りぃ!

 あたしが手に入れたんですよぉ!」

 「すげぇ、つけてみてつけてみて!」

新たな話題のタネも播かれてしまったので、ますますカウンターは賑やかになる。

妹が楽しそうなのはいいが、兄としては色々心配だ。

まずは熱気を冷ましてと・・・。

 「フラア、お前、それ男用だろが、

 女のお前がつけてどーするよ・・・!」

 


平和です・・・。

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