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フラア・ネフティス編2 衝突


しかし、その質問をすることによって、

ツナヒロの真意を悟られる事だけは避けなければならない。

もし、彼女がツナヒロを監視する役目を負っているのなら・・・。


 (オレがここから逃げ出したら、お前はついてくるか・・・?)


この質問ではダメなのだ!

 「ゆ・・・ユェリン・・・。」

 「・・・はい?」

 「も・・・もしオレが・・・そうだな、

 例えばこの国で罪を犯して・・・、

 この首万里城から追い出されるようなことになったら・・・、

 その時はお前を連れ出したい・・・。

 お前は・・・ついてきてくれるか・・・?」

 「勿論です・・・

 ユェリンは地の底まであなたのお傍に従います・・・。」


その言葉が聞けただけで十分だった・・・。





翌朝ツナヒロは馬車を一台、三条に要請した。

口実は簡単だった。

宇宙船フォーチュナーから運び出された機材の一部は、ほとんどツナヒロの宿舎にある。

それらを仕事場に持ち込むために馬車が必要と言うわけだ。

「人夫もつける」と、三条は言ってきたが、

荷の積み込みは、宿舎の者たちに手伝わせるからいらないと言っておいた。

 

そして夕方頃には、

宿舎の方に馬車が届けられたようだ。

ツナヒロは早びけして、機材を運び込んだ。

食糧や水も運びこんだら感づかれるかもしれない。

だが幸運にも、

宇宙飛行時の簡易食料がまだ残っている。

カッチリ閉じられているケースの中に、

レトルトとして安置されているので、他人に中身はわからない。

極端な話、

もし仮に・・・ユェリンがスパイだったとしても、

最後の最後までだまくらかして、

馬車に乗せてしまうことができれば・・・。


作業の最中、ユェリンは不思議そうな眼をして、ツナヒロ達の仕事を見守っていた。

昨夜の男は、

ツナヒロがユェリンを連れていくと言ったら、どうするのだろう?

反対するだろうか・・・。

そういえば、あの男自身はどうするのだろう?

ツナヒロを逃がした後は、

何食わぬ顔であの施設にい続けるのだろうか?

ツナヒロ自身、

この後の展開を予想することすらできず、

夜になるのを待つだけだった・・・。

 


 

 「ツナヒロ様、まだ荷造りが終わらないのですか?」


ユェリンが不安そうに聞いてきた。

昨日の会話があったせいか、

やけに不安そうな表情だ。

無理もないか・・・。

 「ああ、もう終わってるんだけどね、

 一応確認を・・・。」

そう言ってユェリンを寝所まで下がらせた。

既に夕食も済ませ、お腹もひと段落している・・・。

なお、馬車を手配してあるということは、

当然その御者も一緒に来ているのだが、

彼は荷物の積み込みを手伝わせた後、

この宿舎の召使い用の寝床へ詰め込んでいる。


それにしても・・・、

あの氷のように冷たい目をした男は、

この首万里城から、どうやってツナヒロを脱出させるつもりだろうか?

この馬車そのもの自体、

逃亡には無理だとか言いだすかもしれない。

だが、宇宙船から持ち出したこれらの機材を置いていく事はどうしても避けたい。

別に九鬼の人間たちに使いこなせる筈もないだろうが、

これらをヒントに、何かとんでもない武器を開発でもされたら、

ここを出ていく意味さえもなくなってしまう。

 


そんなことを考えながら、

ツナヒロも宿舎の中に入り、とりあえずユェリンの元に向かおうとした時だ、


その声は、

廊下の窓の向こうから聞こえてきたのだ。


 「どうやら、覚悟は決まったようだな・・・。」


 ビクッ!!

誰だって驚くはずだ、

ツナヒロは心臓をバクバクさせながら、

誰もいないはずの窓枠の先を見た。

そしてすぐに「彼」を見つけたのだ。

昨夜の髪の長い男を・・・!


 「お・・・お前か! 大丈夫なのか、

 あの屋敷を離れて・・・?」

 「大丈夫なわけがない、

 警戒任務を抜け出したことがばれたら、厳罰だ。

 鞭打ち50回は覚悟しないとならない。

 もっとも、この目的ごとバレたらそんな程度で済まないがな。」


 「そ、それでどうやってオレを・・・。

 あ! 表の馬車は見たか?

 オレの荷物には旧世界の文明の機器が何点かある。

 あれをこの国の連中に渡したら、少々厄介なことになるぞ?

 だから、馬車で運びだしたいんだが・・・。」

 


そこまで話すと、

男は窓から宿舎の廊下に侵入してきた。

着地した音など聞こえない。

どれほどの技術を身に付けているのか、

彼は長い髪をすきあげ溜め息をついた。

 「・・・なるほど、それはヤバいな・・・。

 まぁいざとなったら燃やすか・・・、

 海の底に沈めるか・・・。

 馬車は・・・オレもうまく乗りこなせないしな・・・、

 御者を脅して使うか・・・。」


そしてツナヒロは肝心な事を訊く・・・。

 「あ、それで・・・、その、

 物は相談なんだが・・・。」

 「なんだ?」

 「あの子を・・・、

 お前が九鬼の監視員といったあの子を一緒に連れていくわけにはいかないだろうか?」


男は「マヌケか?」とでも言いたいようにツナヒロを見下ろす。

 「お前、昨晩オレが言った事を理解していないのか?」

 


 「い、いや、仮にあの子がそうだとしても、

 それこそ、縄でふんじばったり脅かしたりすれば、

 例え彼女が何かしようにも・・・。」

 「無駄だ!」

 「ひぃっ!!」

男は、

あの恐ろしい指先をツナヒロの顔面に向ける。

あと、5センチも接近すれば、

ツナヒロの顔から血が噴き出すに違いない。


 「ツナヒロ・・・勘違いするなよ、

 オレがお前を連れ出すのは、

 善意からでもお前のためを思ってのことでもない。

 お前の意志などどうでもいい、

 要は九鬼帝国から、

 お前と言う存在を消したいだけなんだ。

 その障害になりそうな要因を増やすわけにはいかない。」

 「お、お前、オレの意志がどうでもいいって、

 昨夜、オレに無理強いはしないって言ったじゃないか!!」


男はその体勢のまま首を揺らす。

 「ああ、言ったっけな、

 その通りだ、

 お前がこの国に残りたいと、あの時、言ったなら・・・、

 または、今晩、ここを出る事を拒否していたならば、

 オレはお前を殺すつもりだった・・・。

 少し考えればわかるだろう?」

 

 「て! てめえ!?」

 「だから、お前の選択は正しかったんだよ。

 少なくとも寿命が延びただろう?」


なんて恐ろしい事を考えるんだ、こいつは・・・。

というよりも、この先、信用できるのか!?

いや!

もともと、こんな奴の言うことを真に受ける必要すらなかったのかもしれない。

そうだ、今からでも遅くはない・・・。

コイツの言うことを聞くふりをして、

隙を見つけ大声を上げれば・・・、

すぐに外から衛兵がかけつけるだろう。

そうして、こいつが謀反を企んでいたとでも言えば・・・。






 「ツナヒロ様・・・?」

 「ユェリン!?」

廊下の影から突然、彼女が現れた。

 

 

その瞬間、男のカラダが跳んだ!

まさかユェリンを!?

 「や、やめろぉっ!!」


ツナヒロが叫んだところで間に合うわけもない!

いま、まさに最悪の事態が起こりそうな寸前、

ユェリンは、

もう一言だけ声をだすことに成功していた・・・。

 「ザジルッ!?」


その言葉に、男は振り上げていた手を止めていた・・・。

いや、見ればユェリンも、

その手に尖った長い針のようなものを持ち構えている・・・。

これは?

男は・・・ザジルと呼ばれた男はその腕を下していた・・・。

 「まさかお前がここに来ていたとはな・・・。」


後ろからツナヒロが思わず口をはさむ。

 「お前たち、知りあいなのか!?」

 



修羅場?



そして男の名前は「ザジル」です。

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