表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
298/676

フラア・ネフティス編2 館の秘密

 

 「い、いや、ホントに何も見ていない!!

 ただ、こ・・・声が・・・。」

 「声?」 

 「だ・・・誰にも言ってないし・・・わ、忘れるよ!!

 それに声っというか叫び声だけ・・・!」


男は腕を伸ばす。

 「ホントにそれだけだってば!!

 やめてくれよ、もう、ほんとに!!」

ツナヒロは肩を掴まれた・・・!

もっとも服の上からだけだが、それだけでも恐ろしい。

また血が噴き出さないかビクビクしている。


 「叫び声か・・・なるほど。

 では何故そんな物が聞こえたと思う?」

 「し、知るわけないだろう!

 お・おれはあそこが誰か偉い人の管理してる施設だとしか聞いていないんだ!」


男の表情に僅かな変化が現れる。

 「・・・ほう、誰からそんな事を聞いた?」


えっ!? それを突っ込まれるのか・・・

いや実は違うのか!?

 「ええっ、そ、それは・・・」

 「もう一度、聞く・・・誰からだ・・・?」


男の指はだんだんツナヒロの首の近くへ・・・。

 「お・・・踊り子だよ!!」


指の動きは止まった。

だが、彼の冷たい眼の光は変わることがない。

 「踊り子?

 なぜあんな屋敷の事を踊り子なんかに尋ねる・・・?

 おまえ、まさか夜を共にしている女がいるのか?」

 「あっ、え・・・彼女は何も関係ないだろう!

 ちゃんと三条様や陛下に許可はいただいてる!!」


しばらく男はそのままだったが、

やがてツナヒロの体から一度指を離すと質問を変えた。

 「まぁいい。

 ・・・で、噂にはなってるが、

 お前が400年前からやってきたというのは真実なのか?」

 「真実かって・・・オレだって信じたくねーよ、

 ここが400年後だなんて言われても!

 だが、おれがいた時代は、

 『ウィグル王列伝』に書かれていた、大破局以前の世界にそっくりだってことだよ!」

 

男は考え込んでいる様子だ。

いつまでこんな所に足止めされなきゃいけないんだ?

 「な、なぁ、あんた等の上役は誰なんだ?

 なんなら、明日、オレが直接謝るよ!

 もう宮廷のほとんどの方には挨拶も済ませてるし、

 宴会で親しくなっている。

 あんた等だって面倒なことより上で解決した方がマシだろ?」

 「黙れ。」


 「・・・うっ。」

しばらくすると男は結論を出したようだ。

 「ツナヒロ。」

 「あ、ああ?」

 「興味があるか、あの屋敷の中に?」

 「い、いや、知らない方がいいんだろう!? 忘れるからさ!」

 「誰もそんな事は言ってない。

 ・・・知っておいた方がいいことかもしれないぞ?」

 

 「えっ!? だけど門番は・・・。」

 「勿論、彼らはお前を入れる事はない。

 だが、お前はこの世界をよく知る必要があるんじゃないのか?」


なんだ?

雲行きが変わってきた。

こ・・・これはどうすればいいんだ?

確かに、何か秘密があるなら知っておきたいが・・・。

 「じゃ、興味があると言ったらどうするんだ!?」

 「案内してやるぞ?

 あの屋敷の中をな・・・!」

 「はぁ!?」

 「来い・・・!

 だがマゴマゴしてたら・・・お前の命は保証しない。

 すぐ動け・・・!」

 「ちょ・・・!?」


髪の長い男は180センチ近く身長があるだろうか?

ツナヒロは173程度なので、やや見上げる形になる。

足早に歩く男についていくと、

こないだよじ登った塀の所に来た。

 

 

 

 「お前、この前なかなかいい動きをしていたな、

 あれと同じ感覚で動け。

 勿論、大きな音や声を立てるな。」

 「立てたら?」

 「オレがお前を殺す。」


ふざけんなっ・・・!

 やっ! 

っと、ツナヒロが塀を登ると、

下で待っていた男は風のように一足で塀にジャンプした。

どんな跳躍力をしているんだ・・・。


 「こっちだ・・・。」

男は小声でツナヒロに指示を出す。

塀の上で音を立てないように歩くどころか、

一つ間違ったら地面に落下するかもしれないのに・・・。


そのまま塀を伝うと、

すぐに狭い屋敷の小窓があるところまでたどり着いた。

開閉式の扉があるようだ。

男は身をかがめて中に入ると、

その後ツナヒロも招き入れた。

 「ほ・・・他に見張りはいないのか?」

 


 「私がその見張りの一人だ、

 各自テリトリーがある。

 そのテリトリーから外れなければ、

 そうそう見つかることもない。」


納得してそのまま男についていくと、

ツナヒロの耳に、あの悲鳴が聞こえ始めてきた。

前回よりは声が小さいのか、

ここまで来ないと気付かなかったのだろうか?

男は見越したかのように、ツナヒロの疑問に答えた。

 「先日、お前がこの屋敷の辺りをウロウロしてたと言うからな、

 『場所』を屋敷の奥に移動しただけだ。」

 「い、移動? な、何の話だ?」

 「すぐわかる。」


そのうち、男はとんでもない所に移動しようとし始めた。

 これは通路じゃないだろ!

 通風口のようなものじゃないか!?

それとも天井裏?

さすがにツナヒロが一人で入れないと判断したのだろう、

男は先にその狭い出入り口によじ登り、

手を差し出してツナヒロを促す。

 「安心しろ、

 今はお前のカラダを切り刻んだりはしない。」


 ・・・安心できるかぁ!?

 そんな事を言われて! 

 だあ、もう腹をくくるしかない。


そのまま手を出して、引っ張り上げられる。

入り組んだ迷路のような隙間を這いまわると、

だんだん悲鳴が大きくなっていく。

怒鳴り声も時々混じってるようだ・・・。

拷問部屋でもあるのか?

それともここは刑務所なのか?

だとしたら、

なぜ、こんなに悲鳴の声は若そうに聞こえるのだ?

目の前が明るくなっていた。

少し先の床に小さな隙間があるようだ。

男はその隙間から下を覗くようにツナヒロに指示を与える。

いったい何が・・・。




・・・それは信じられない光景だった・・・。

隙間から見える景色は、

ほんの一部であったことは分かる・・・。

だが・・・そこは・・・。

 







次回、

この国の秘密の一部が明らかに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ