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フラア・ネフティス編2 ユェリン


何度も後ろを振り返るが、

追われている気配はない。

 どうしよう?


直接、自分を見られてはいないはずだが、

さっきの門番とのやり取りが知れたら、

すぐに自分の行動だとわかってしまうだろう。

 自分はそんな軽率なマネをしてしまったのだろうか?

 いや・・・ちょっとのぞいただけで何も見てもいないし・・・。


ツナヒロは心臓を激しく鳴らしたままようやく家に着く。

 そういえば・・・トイレェェェェッ!!!!


少しは落ち着いたが、

言い知れぬ不安感はぬぐえることはない。

自分の部屋に戻ると、

ユェリンは布団の中ですやすやと寝息をたてていた。

遅くなるから、「先に寝てていいよ」とは言っておいた。

ツナヒロは、

起こさないようにそっと彼女の布団の中に潜り込む。

 ・・・温かい。

ゆっくりと寝ているユェリンに肌をぴったりくっつける。

それでユェリンは目を覚ましたようだ。

 

 

 「ふぁ・・・、ツナヒロさまぁ・・・

 おかえりなさいませぇ・・・。」

 「待ちくたびれた?」

 「ううん?

 でも、いっぱいかわいがってください・・・ね。」

そのまま彼女は寝がえりをうち、

ツナヒロのカラダをその両手で包み込んだ。

優しくキスをしたツナヒロは、

そのまま彼女のカラダのあちこちに手を這わせる。

ただ・・・

別にこれから激しい行為をするつもりはない。

心の不安を紛らわすために、

ユェリンのカラダを求めただけだ。


ユェリンもツナヒロの局部をまさぐりはじめるが、それを制止させるかのようにツナヒロは質問をする。

 「なぁ、ユェリン?」

 「はい?」

 「太政官邸宅の帰り道の脇に、

 えらくでっかい屋敷があったんだが・・・、

 屈強な門番のいる・・・あれはどなたの屋敷なんだい?」




その瞬間、完全にユェリンの動きがストップした。

動揺している? 

 「ユェリン?」

 「あ・・・、あの、

 そ・・・そこは施設です・・・。」

 「施設? 何の?」


次の返答には時間がかかった。

彼女には答えにくい問題なのか・・・。

 「わ・・・私にも詳しい事は。

 ただ、あの屋敷の管轄は、

 この国で、最も権力を持つ方の一人が行っているとか・・・。

 私のような身分の者では、口にすることさえできない・・・」


ってことは帝の親族の誰かの持ち物なのか、

なら、明日にでも三条に・・・。

 「ツナヒロ様・・・。」

 「ん?」

 「ユェリンは・・・いま、とっても幸せです・・・。」

 「ぷっ、な、何いきなり・・・。」

 「あなたに選んでいただいて、

 ユェリンは夢のような時を過ごしております。」

 「オレだって、ユェリンがいるから毎日が楽しいのさ。」

 「あああ、・・・でも、

 いつかはこの夢が覚める時が来るのかと思うと・・・。」

 


二人は強く抱きしめあう・・・。

 「なぁ、ユェリン、

 オレはまだこの国に完全に馴染んでるわけでもないし、

 少なくとも今、オレはお前を放したくはない。

 ずっ・・・と、このままお前を抱きしめていたい・・・。」

 「ツナヒロ様っ、嬉しいっ・・・。

 でも・・・私のような身分の者が、

 それを私の口から願うわけにはまいりません。」


 「ああ、ならオレがお前を手放さない。

 この先、自分でも何がどう保証できるもんでもないが、

 オレの力が通用する限り、お前をオレの傍にいさせてやる・・・。」

 「ツナヒロさ・・・ま、

 ・・・わ、私のような汚い女でも・・・?」

 「誰にだって過去はあるだろう、

 今、お前の心に他の男はいるのか?

 いなけりゃ、お前は汚くない。

 そんな事を気にするな・・・。

 このまま、オレと・・・。」

 


これ以上、口を開く必要はなかった。

そのまま、自然な形で今夜も互いを求め合う。

酒の影響もあったか、

終わると、ツナヒロはすぐに眠りにつこうとした。

目をつぶったツナヒロの顔に、

ユェリンはキスをしてそっとつぶやく・・・。

 「ツナヒロ様・・・。」

 「んー・・・?」


 「誰にでも知られたくない過去があります。

 人に言えない大きな悩みをずっと持ち続けてる人もいます。

 ・・・でも・・・心を本当に許せる方なら・・・、

 それを聞いても、全て受け止めてくれる・・・そんな方と巡り合えれば、

 それはとても幸せなことだと思います。」

 「・・・そうだろうな。

 ユェリンがーその気になったら、

 いつでも言って・・・。

 ぜんぶうけとめてやんよー。」


もう思考能力はないに等しい。

ツナヒロのセリフはこの場のノリだけだ。

ユェリンはクスっと笑って、

頬をツナヒロにこすりつける。

 「私には大きなことは言えませんが・・・、

 そういったものは、人それぞれだけでなく、

 家族や、村や、宗教や国によっても同様にあるかと思うんです。」

 


 「・・・ユェリン、ひょっとして頭いい?」

 「やだ・・・、

 からかわないでくださいませ・・・。

 ただ・・・お互いその機が熟さないうちは・・・、

 どちらか一方が無理にそれを求めても、

 支えきれないだけだと思うんです。

 ツナヒロ様・・・もう少し・・・

 長い目で・・・この国をご覧になっていただければ・・・。」

 「ああ、そのことか・・・、

 まぁ、わかったよ・・・、

 しばらくその件はほっとくよ・・・。」

 「ええ、それがきっと・・・

 幸せです・・・、今は・・・。」


もうツナヒロの耳には、

その話が深刻なことには聞こえない。

何より意識が飛びかけていた。

一方、ユェリンの瞳には、

硬い意志のようなものが光っている・・・。

だが、それをツナヒロが知るすべはない・・・。

その後、すぐにツナヒロは寝息を立てて、

眠りに落ちてしまった・・・。

ユェリンはそっとつぶやく。


 「大好きです・・・ツナヒロ様・・・。」

 


見られましたよ、ばっちりと。

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