フラア・ネフティス編2 星を観る男
本日は分量が半端なので短めの2話分続けてアップしてます。
「お? ・・・流れ星か?」
広大な大陸のど真ん中に、天険の要害に囲まれ、
戦乱と言った血生臭い争い事とは無縁の国がある。
ここは、
九鬼より遥か西方に位置する神聖ウィグル王国。
その首都ラシ王宮・・・。
時は、ツナヒロがボードリール司祭達に出会う前の話である。
王族の住まう屋敷の一角で、バルコニーから満点の星空を見ていたその男は、
明るく輝く一筋の発光体を目撃した。
夜と言ってもほとんど明け方に近い。
彼の足元はふらつき、顔色も悪いように見える。
ただそれは睡眠不足であるとか、寝起きのためが原因という訳ではないようだ。
恐らく常日頃から、体に何か病でも抱えているのだろう。
病弱なその男は、
浅い睡眠から夜中に目を覚まし、
たまたま・・・いや、
虫の知らせとでも言うのだろうか、
元々占星術に明るかったため、
何の気なしにバルコニーに出て、明け方の空を眺めていたのだ。
「流れ星にしては・・・
通常のものと違うな・・・?」
そしてその男はさらに違和感を感じたのか、
深淵たる天球を凝視する・・・。
「・・・まるで天を三分するかのようだ。
西に妖しくうつろいゆく強い光・・・
今、流れ落ちた東方への光、
そして我が頭上にある儚く・・・
それでいて静かに輝き続ける小さな星・・・
父上が亡くなられたばかりだが・・・、
何か・・・このウィグルに・・・
いや、この大陸に何か異変でも起きる兆しなのだろうか・・・?」
オールバックの長い黒髪を肩に垂らし、
実際年齢よりも老けて見えるその男は、
この神聖ウィグル王国の王族に列なる者である。
幼少よりの病のため、あまり表にも出ず、
体の鍛錬もできない故に、本の虫となった彼の知識量は、
宮廷のあらゆる文官のそれを遙かに上回る。
だが、既に王位を継ぐべきものは兄のアイザスと決まっており、
そのことに異議を唱える者など誰もいない。
このまま、
静かに王族の一人として隠遁生活を送ってさえいれば、
病気や発作の悩みはあるが、
ある程度満足した暮らしができるはずだ。
だが、後に・・・
彼の気まぐれから起こした行動が、
この世界の運命を変えることとなる。
この日こそ、
九鬼にツナヒロたちが漂着した日・・・、
そしてこの男の名は、
神聖ウィグル王国第二王子・・・、
その名をディジタリアス。
ディジタリアスは名前はかっこよさげですが、
ルックスは陰気なおっちゃん顔です。