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フラア・ネフティス編1 神に愛された王エア

 

・・・広大な砂漠地帯の中でも、

大きな河川と湧き出る泉に恵まれた肥沃な土地・・・、

その中で、

遠方からも目立つ大きな尖塔・・・。

隆起した土地に巨石を積み上げて建造されている壮大な城・・・。

アルヒズリの王宮である・・・。

その宮廷の主・アルヒズリ王エアは、

「神に愛された王」との称号を持ち、

実際多くの国民から絶大なる支持を得ていた。

・・・だが、その宮廷で働く者・・・

特に内政や軍事に携わる者には、

一時も緊張をほどく暇もない・・・。

いつ何時、イルの大軍が周辺の街や城を荒らしていくか、

それによる応援部隊の編成・増員、

また都市の復旧、死傷した兵士への慰労・・・、

次から次へと難題が降りかかるからだ。

何度か北方の山々を越えて、

イルの本拠地への反撃も試みた事もあるのだが、

イルの騎馬民族は、

一つ所に定住する習慣を持たないため、

大軍を組織しても、空振りの遠征に終わる事がほとんどだったのだ。

 


 

さて、今日も宮廷では山積みの難題を処理すべく、

大勢の文官武官が王の前に参内している・・・。


 「・・・申し上げます!

 只今入った報告ですが、

 イルの中隊・・・およそ200名ほどの軍勢が、

 アルヒズリ南東、クエタの街を襲いました!

 イル兵はそのままクエタを後にしましたが、被害は甚大・・・!

 生き残りの住人達で復興を始めてますが・・・

 物資も食料も不足!

 直ちに救援措置を請願しております!」


一同からは、驚愕・・・苦悩、憤怒・・・

様々な感情を交えたざわめきが沸き立つ・・・。

 

 

 「おのれ・・・!

 何故、あのような遠方の小さな街までも・・・!」

 「直ちに、復旧部隊を派遣せねば・・・!」

 「しかし、わからん・・・!

 北方の山岳地帯からクエタに向かうまでには、

 途中、多くの都市が点在しているはずだ・・・。

 なぜ、そちらを襲わず、

 クエタなど狙ったのだろう?」

 「・・・それは大して気にかける必要はございますまい?

 200程の兵では、他の大都市を襲えるはずもないでしょう、

 元々は斥候部隊だったのかもしれません、

 途中で食料が底を尽きかけたので、

 手近な街を襲ったのでは?」

 「・・・そうだとしても、

 奴らはこれから、

 東側より我が国を脅かす計画を進めていると考えても良いのかもしれませんな?

 北側の堅固な守備は、

 奴らにはそうそう崩せませぬからな・・・。」

 


 

 「皆の者・・・。」

宮廷が一瞬にして静まり返る。

この部屋の奥深くの玉座に、

深々と座っていたアリヒズリの王、エアが口を開いたからだ。

座っていると分らないが、

身長も低く、小柄な老人・・・。

生まれつき斜視眼なので、左右の目が違う方向を向いている。

俗に言うロンパリだ。

宮廷内が静まったのを確認してエア王は言葉を続ける・・・。

 「皆の者・・・、

 余は昨晩、夢を見た・・・。」


再びざわつく重臣達。

 「おおお! 預言を得られたのですね!?」

 「ウム・・・、

 昨晩、余の枕元に、

 光り輝く神の御使いが舞い降り・・・、

 またも重要な預言をお教えくださったのじゃ・・・!」

 「そ・・・それは・・・!?」

 

 

これまで、

アルヒズリに訪れる不幸を未然に防いできたエア王の預言・・・。

それは、神出鬼没のイルの軍勢の接近を予知したり、

伝染病の蔓延を防いだり・・・。

もちろん、預言は不定期に訪れるので、

為政者側としては、

知りたい情報全てを得られるわけでもない。

・・・だが、国の存続に関わる重要な事件については、

必ずと言って良いほど、これらの預言が事前に降り、

寸でのところで大事に至らずに済んでいる。

・・・実際、エア王の預言がなければ、

とうの昔にアルヒズリは国家の体を崩されていたであろう。

エア王が「神に愛された王」と呼ばれる所以でもある。


さて、エア王は話を続けている・・・。

 「・・・間もなくイルの大軍が、

 東の都市テルアハを攻め込むだろう・・・。」

 「なんと!

 では直ちに周辺から部隊の応援を・・・!」

だが、

エアはその正論であろう重臣の意見をやんわりと否定する。

 


 

 「いや、必要はない・・・。

 伝令だけでよい・・・。」

 「な・・・なんですと!?

 では・・・その伝令の内容は!?」


 「聞くがよい・・・、

 テルアハの東から、一人の英雄が現われる・・・。」

 「おお、英雄・・・ですと!?」

 「さよう・・・、

 その男は黒雲と雷鳴を轟かせて、

 戦場を切り裂いてゆく・・・、

 戦況が完全に変わるその時を見極め、

 テルアハの兵たちは打って出るがよい・・・!

 それまで、じっと固く城壁を死守するのじゃ・・・!」

 「・・・畏まりました!

 では、直ちに早馬を飛ばします!!」


その命令が伝達されると、

宮廷内は歓喜と期待の声で沸き上がった・・・。

しばし、他の案件は話題から置き去りにされ、

今後のアルヒズリの未来に向けて話に花が咲いている・・・。


それらを見渡しながら、

国王エアは独り言のようにつぶやいた・・・。


 「・・・そして英雄の出現とともに、

 更なる争いが始まっていく・・・、

 この大陸全ての大地を血で濡らす惨劇が・・・。

 そして・・・その先には、

 人間という生物そのものの存続をかけた、

 恐ろしい災厄までも・・・。

 おお、我が神よ、

 どうかこの盲いたる僕を慈愛のお心を以ってお導きくださいませ・・・。」


 



エア王は予知能力者ではありません。

あくまでも預言者です。


「神様」に未来の事を教えてもらってるだけに過ぎません。


これ以上はネタバレさせないぞと。

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