第2話
このシーンだけエロいシーンがあります。
↓
修正しました
さて、
後ろに四人の幹部達を従えて、
彼らはゆっくりと壇上に用意された席に座る。
幹部の一人でもある中年のほっそりした女性は、
児島の妻だという。
司会の女性は、
拍手が鳴り止むのを待ってから、
息を飲み込むかのように緊張して、
改めて赤づくめの男、小伏晴臣を呼びかけた。
彼は再び拍手に迎えられながら・・・
ゆっくりと演説台に向かう。
・・・相変わらず顔は、鼻と口しか見えない。
「・・・皆さん、ダイナスティの受光式に
ようこそ。
ここには
神の真理と・・・真実へ至る道が用意されています・・・、
その道は
あまりに細く・・・あまりに脆い・・・。
しかし
恐れることはない・・・
正しき心を持ちて、我らと共に歩めば・・・
必ず天の高みに
あなた方は引き上げられることだろう・・・。」
またもや洪水のような拍手。
教祖は、それだけ言うと、
すぐに席についてしまった。
ここで、日浦義純は見逃さなかった・・・。
恐らく会場のほとんどは気づかないだろう・・・、
彼の演説の声に独特の訛りがあったこと・・・、
そしてフードの下から見える特徴ある顔立ち・・・。
(・・・日本人じゃない・・・?)
ほとんどの者には、
その喋り方は日本人とは区別できないだろう、
それぐらい上手な喋り方だ。
顔立ちも見分けがつきづらいが、
長いことイギリスにいた義純にしか判るまい、
その顔は欧米系のものである。
義純の観察をよそに、
式はたんたんと進行してゆく・・・。
信者の表彰式、
新規信者の入会の儀式・・・
聖酒とやらを振舞われる。
児島の講演・・・幹部信者の話・・・
本来、
このあたりは退屈なものだと義純は思っていたが、
会場全体が、不思議な雰囲気に包まれていることに気づいた。
特に信者達の様子がおかしい。
そわそわしているというか、
もじもじしているというか、落ち着きがない。
聖酒を飲んだ新規の信者達も、
目をぎらつかせて妙に興奮している。
酒に何か含まれているな・・・、
そして恐らくこの後も・・・。
いろいろと、
日本のカルト宗教を見てきた彼の目をごまかすことはできない。
そして受光式はクライマックスを迎える・・・。
公開されているもので、
このダイナスティ最大の儀式・・・
聖魄通気還・神魄通気還と呼ばれる典礼。
薄いスケスケの衣装に身を包んだ10人ほどの女性達・・・
年齢はバラバラだ・・・。
信者と思われる男性スタッフが、
彼女達に応じて簡易ベッドを用意する。
女性達は全員そのベッドに横になる。
・・・ここでもお約束というのだろうか?
ベッドは観客席に向けて円を描くように設置されており、
女性達は、
一般信者や観客席に足を向けて寝そべっている・・・。
そして、彼女達も下着は身につけてはいない。
・・・さらにあろうことか、
皆、彼女達は衣からこぼれた太ももを、
大きく広げて観客達の卑猥な視線に何の躊躇もなく晒してしまったのだ。
男なら身を乗り出さずにいられない。
会場には小さな音量のムードミュージック・・・
壇上からゆっくりと、
児島鉄幹が降りてくる・・・
彼の呼称は「聖魔祭司」。
前世では「天聖上君」の忠実にして有能な片腕だったという。
その時は、
宇宙の邪悪な暗黒魔人と死闘を演じ、
相手を倒しながらも自らも傷つき、息絶えてしまった・・・
という触れ込みだ。
児島鉄幹は、
女性達の周りを何か詠唱しながら一周し、
一人の女性の前で立ち止まった。
最初は、
女性の顔を触ったり、撫でたりしていただけだったが、
その手はカラダや胸元をまさぐりだし、
挙句の果てに下腹部に手を伸ばしていく・・・。
「ううっ・・・!」
児島鉄幹の片手にはマイクが握られている。
彼は片手で、
女性のカラダをいじりだし、
片手のマイクでその音を拾っているのだ。
女性の太ももが敏感に反応し、その膝が小刻みに動く。
マイクは少し離れた女性の咽喉から漏れる悲鳴をも拾う。
スピーカーからの大音響と、
建物の構造によるサラウンド効果でこんなものを聞かされたらたまったもんじゃない。
男性陣総立ち。
イスのずれる音が騒がしい。
・・・女性は三分とかからずに、歓喜とエクスタシーの果てにイッてしまったようだ。
これが・・・
聖魄通気還と呼ばれる儀式なのだそうだ・・・。
儀式はどんどん進行する。
女性達の反応も様々で、
獣のように叫び声をあげる者もいれば、
必死に声を押し殺すものもいる。
児島鉄幹のカラダに必死にしがみつく者もいるので、
幹部の者達が、
その女性の手足を無理やり押さえつける。
まるで、
数人がかりでその女性をレイプしているようにしか見えない。
その間も児島鉄幹は、
無表情で女性のカラダの様々な部分をいじりまわし、機械的とも思える単調さで作業を行う。
全ての儀式が終わると、
児島鉄幹はタオルで腕や手を拭き、
両手を広げ観衆に応えた。
「邪念を打ち払い、
私を通じ宇宙と一体となることで、
この者たちの魂に聖なる道が開ける、
このまま精進を重ねれば、
さらに高次元の高みに上り詰めることができるだろう・・・!」
そう言って、彼は舞台の席に戻った。
一方の女性達は力なく、
ベッドに横たわったままだ。
スタッフ達が毛布を用意して彼女達にかけていく。
最後に彼女達は、
ベッドごと会場の外に連れて行かれた。
・・・この後、
他の信者に犯されても気づかないんじゃないか?
「それでは、皆様、お待たせしました!
受光式最大の儀礼、神魄通気還でございます!」
メンバーの中でも、
選ばれたものだけが授けられる至高の儀式、
とくとご覧くださいませ!」
これまでで最大の歓声が響き渡る。
いよいよ「天聖上君」のお出ましだ。
会場の中央には、
四人の女性が直立している。
そのうち二人は先ほどの女性、
紅かすみと十六夜はるかも参加してる。
再びベッドが用意される、
だが、先ほどとは趣が違う・・・。
最初と同じように、
赤いローブの男はゆっくりと壇上から降りてきた。
彼は最初に、
コスプレぽい格好したままの、紅かすみの前に立つ。
・・・だが、彼は動かない。
じっと、お互い見つめあうだけだ。
しばらくすると、
彼はかすみの両肩をゆっくりと掴み顔を近づけてゆく。
・・・それと同時にお互いの口が開いていく・・・、
キスをするわけではなさそうなスタイルだ。
不思議なものが義純に見えた、
・・・いや、その会場にいた者、全員見えたかもしれない。
今にも触れ合いそうな二人の唇の間に・・・
何かの気体のようなものが発生していたのである。
・・・それは息ではない・・・、
全く別の何か。
一体、何が起きているというのだろう?
時間にしてわずか4~5秒ほどの短い間・・・、
たったそれだけなのだ。
その間に彼女の方は、
うめき声ともあえぎ声とも判別のつかない微妙な声をあげ、
立ったまま大きくカラダを痙攣させていた。
ほとんど意識はなかったのかもしれないが、
彼女は男の両腕を掴んで前のめりに倒れてしまった。
コスプレの格好をした紅かすみは逝ってしまったようである。
信者達が彼女をベッドに寝かせる。
後はさっきの繰り返しだ。
続いて十六夜はるか、
髪型や立ち居振る舞いからして裕福そうな中年の主婦、
30代くらいのやはり上品な感じの女性。
薬物だけでここまでなるか?
演技には見えない。
何らかのトリックを使っているのだろうか?
・・・全ての儀式が終了し、
司会の女性が「神魄通気還」の説明に入った。
「皆様、ご覧になりましたでしょうか・・・!
ほとんどの方は何が起きたか、
お分かりにならないかもしれません。
彼女達は、今、
『天聖上君』様から宇宙の官能エネルギーを与えられたのです。
もちろん、
これは誰にでも受け止めることができるものではありません・・・。
敬虔なる信仰と誠実なる修行を納めたものが、
『聖魄通気還』を受け、
カラダを清廉なものに変化させていきます。
そして完全に清浄な心身を獲得したものだけが、
この最高の奥義、
『神魄通気還』で、地球上では決して手に入れることのできない、
大いなるパワーを体内に循環させることができるのです・・・!」
受光式が全て終了した後も、
会場の熱気は凄まじかった・・・。
「さくら」も混じっているのだろうが、
特に新人信者や一般客の入会受付、勢いが凄い。
日浦義純の周りでも、
入会しようかどうしようか、他人の様子を伺いながら迷ってるものも大勢いる。
もちろん義純は、
これ以上このイベントには用がないので、
帰る身支度をしていた。
・・・その時である。
会場で、
後片付け用にスイッチをつけたままだったと思われるスピーカーから、
まるでその場にそぐわない、
小さな、それでいて、
はっきりとした女性の声が聞こえてきたのだ・・・。
『・・・(ザーザザ・・・)
もしもし、わたし・・・メリー・・・(ザザ・・・)
今、この町にいるの・・・』
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