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フラア・ネフティス編1 シャル爺さんの怒り

 

・・・ランディにとって一番聞かれたくない質問だ。

嘘を言っても良かったのだが、

今の彼にそんな余裕はなかった。

・・・いや、むしろ、誰かに聞いてほしかった、

自分を責められてみたかっただけのかもしれない・・・。


 「いや・・・誰もだ・・・。」

 「誰も!?」

老人はたった一つの目を見開く。

 「ランディ・・・!

 お前まさか、戦ってないとでもいうのか!?

 カラダを見せろ!

 ・・・汚れてはいるが・・・かすり傷一つない・・・!?

 お前・・・

 自分の街を・・・

 一緒に住んでた者たちを殺されて・・・

 き、貴様、なにもせずに生き永らえたというのかっ!?」

 

 

ランディは、祖父に目をあわす事ができない・・・。

その言葉を否定することも出来ない。

言い訳はいくらでも思いついた。

もっとも、

そんな物を許す爺さんではないことも知っている。 


 「このバカもんがぁぁぁっ!!」

ランディの左頬に鉄拳が飛ぶ。

カラダごと吹き飛んで、激しい音を立てて物置内の道具が散乱した。


 「う・・・。」

すぐには体を起こせない。

別に殴られることも予想くらいはしていた。

 勘当されるかもな・・・。

 別にそれだって構わない。

 ・・・元々ここから逃げ出した身分だ。

 とりあえず、腹が膨れればそれでいい。

 たったそれだけで、ここに来たのは十分だ。


荒々しい怒りを沸騰させる爺さんとは対照的に、

ランディの心は、

その激痛にあっても冷めたままだ。

ようやく立ち上がるランディを見て、

爺さんはさらに怒鳴り声をあげる。

 

 「貴様!

 ・・・わしはお前がここを飛び出ようと、

 売春宿なんぞで働こうと文句は言うまいと思っていた!

 『誇り』だけはしっかり教え込んだ思っとったからな!! 

 ・・・それがどうじゃ!

 怯えたのか!?

 恐ろしくなってしまったのか!?

 殺すことにか!?

 殺されることにか!?

 ・・・おおお、

 何と言う情けない男に育ってしまったのじゃ・・・?

 わしは・・・

 わしはお前の死んだ両親に何と詫びればいいのじゃぁっ!!」


うろたえる爺さんとは対照的に、

ランディの心は冷めたままだ・・・。

完全に負け犬根性が染み付いてしまったのか・・・。


全く反応を見せないランディに業を煮やしたか、

爺さんは激しい足音を立てながら小屋の外に出る。

 

 

 ・・・爺さんは母屋にでも帰ったか・・・?


ランディはしばらく壁にもたれたままでいたが、

そろそろ、この家から離れようかとも思った。

腹が膨れたら次は睡眠だ・・・。

できれば藁の上でも眠りたがったが、

爺さんのあの様子では、

あまりこの家に長居するのも正しい判断とは言えまい・・・。


そんなことを考えていると、

シャル爺さんが再び、真っ赤な顔をして戻ってきた。

 「・・・ランディ、表に出よ・・・!」

 「あ・・・? 何だよ・・・?」

 「早く出んかぁっ!!」

小屋が吹き飛ぶぐらいの大きな怒鳴り声に、

さしものランディも肝を潰す。

慌てて小屋を出るときにランディは見た、

爺さんの腕に二振りの剣がある事を・・・。

 

 

もたもたしていると、

そのまま爺さんはランディの背中に蹴りを入れる。

余りの力に、

ランディは地面に転がり土ぼこりが舞った。

 「な・・・何しやがんだよっ!?」


顔を振り向いたその瞬間、

ランディの元に鞘ごと剣が投げられる。

 「お・・・おい?」

 「我が孫、ランディよ・・・、

 貴様のような臆病者は、このアルヒズリで生きていく価値はない・・・。

 か弱き者も守れず、

 先祖代々の誇りすら汚すような男は、この場で命を断つべきだ・・・。

 わしの育て方が間違った結果だというのなら、

 このわし自らの手で引導を渡す・・・!」


 「お・・・おい!

 シャル爺さん、なに言ってんだよっ!?」

 「だが、ランディよ・・・、

 お前にもチャンスをやろう、

 その剣でわしをねじ伏せてみよ・・・。

 そうすれば命を助けてやる・・・!」

 


 

爺さんの怒りはランディの予想を遥かに超えていた。

だが努めて冷静に考えるなら、

まともに斬りあったとして爺さんに遅れをとることなど考えられない。

 「バカ言うな!?

 そ、そりゃあガキの頃はアンタから戦いを教わったが、

 今のヨボヨボのあんたがオレに勝てるわけないだろう!?」


 「そう・・・思うなら、

 わしを打ち据えれば良い・・・、

 やってみるが良い!」

 「だ・・・だから、一合打ち合っただけでも、アンタははじけ飛ぶぞ!?

 オレは爺さんの為を思って言ってるんだ!!」


 「・・・ふん!

 口では何とでも言える・・・。

 わしと真剣勝負するのが怖いのか・・・?

 イル兵から逃げ・・・

 この老人からも逃げ・・・

 次は女子供からも逃げ回るのか!?」

 「て・・・テメェ、いい加減にしやがれぇ!!」


そのセリフの瞬間、

ランディの視界に一筋の光が飛び込んだ!

いや、視界の半分が塞がれている・・・。

自らの顔面のすぐ左側に・・・

鋼の刃があてられたのだ・・・!

 


次回、お爺ちゃんと孫の殺し合い。

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