フラア・ネフティス編1 取り返しがつかない結果
ぶっくま、ありがとんです!
残酷な表現は私にはどうしてもできませんでした。
かなり表現は抑えているはずですが、
それでも、
「こんなシーンは苦手だ」という方はすっ飛ばしてください。
内容は
ランディがやらかしちまった。
です。
ランディは自らの葛藤と戦っていた。
これまで積み上げてきたプライド・・・
世間的には卑しい仕事と思われようが、
自分なりに確立させたはずのアイデンティティ・・・、
必死に理由を見つけて・・・自らの情けない現状を正当化して、
彼は安っぽちい誇りを守る事だけで精一杯だった。
彼が真に卑怯者なら、
この状況で、
最後まで命を永らえる事だけで安心すればいいのかもしれない。
しかし、幸か不幸か、
・・・彼は「誇り」に自分の価値を見出そうとする人間として育ってしまったのである・・・。
それなのに。
これがたった一人ならば、
その瞬間を狙えばランディの目的は容易いはずだ。
だが、戸口の二人はこっちを見ているのは間違いない。
・・・すでに彼らも防具を外している・・・。
・・・ならば・・・
この男を殺すのは諦めて・・・、
二人目か三人目がロゼッタを襲う時に・・・。
[運営様から性的表現に対する警告が入りましたので、いくつかの部分を削除しております、ご了承下さい。]
男は満足したようだ。
ランディには、
ぐしゃぐしゃに歪んでいるであろう、
ロゼッタの顔を勝手に思い浮かべる事しか出来ない・・・。
それは必死で苦痛に耐える表情か、
それとも悔しさの涙を流しているのか・・・?
「・・・いいぜ、なかなか良かったよ、
アルヒズリの姉ちゃん・・・、
まったく・・・いい女が揃ってる国だぁ・・・。
おい、待たせたな?
後は任せるぜ・・・。」
続いて待っていた者と交代・・・。
また拷問のような時間が繰り返される・・・。
・・・そして、当たり前のことだが、
最もつらい目に遭っているのは、
ランディなんかよりも、
ロゼッタや他の部屋の女達・・・
自分が家族と呼んだ掛け替えのない仲間のはずなのである。
本当に反撃するチャンスは訪れるのか?
最初の男は何故、部屋を出ない?
せめて敵が二人なら・・・!
ランディは頭の中で、
何度も反撃のパターンをシミュレーションする・・・。
だが、どれも落ち着いて考えれば成功率の薄いものばかり・・・。
今この時、
ロゼッタはランディの事をどう思っているのだろうか?
「どうしてランディは私を助けてくれないのっ?
もしかして臆病風に吹かれて震えているのっ!?」
きっとそう思い始めてるんじゃあないのか・・・!?
違う! 怖いんじゃあない!
オレは・・・チャンスを待っているだけなんだ・・・!
・・・三人目も同様の行為を行っている・・・。
いよいよ、決意の時は近い・・・。
部屋から出るときは一人ずつだろう。
いくら彼らとて、
ベッドで横たわったままの女性しかいない部屋で、
警戒しながら部屋をでることもあるまい。
・・・なら、全員が背中を向けたとき・・・、
一気に襲い掛かり、
一人目を戦闘不能に・・・、
そして同時に武器を奪い二人目を・・・。
戸口は狭いから、
二人同時に攻撃はされまい。
うまくタイミングをあわせれば、
それで3人とも撃退できる・・・。
これなら、確実で間違いない!
オレなら出来るはずだ!
終ったのか、
男たちの嘲笑が聴こえる・・・。
もう、この部屋に用はないはずだ、
金目の物などほとんどないが、
欲しいものがあればもって行け!
だがお前たちだけは生かして帰さない・・・っ!
ランディが決意の緊張を高める。
もうすぐ、
待ちに待った反撃の時間だ・・・。
この狭いベッドの下で、
スムーズに飛び出せるように体勢の確認・・・。
ロゼッタ・・・
よく耐えてくれた・・・!
悔しかったろう!
男のオレにはその痛みも理解できないかもしれないが・・・、
無念と悔しさは晴らしてやる!
三人目もベッドから降りたようだ。
ゆっくり防具を付け直している。
・・・それが終われば、
少なくともこの部屋を出るだろう・・・。
その時が最後だ・・・。
・・・ランディは息を堪えて待っている・・・。
彼は猛禽類のように目を血走らせ、
完全な攻撃準備を整えた!
三人が部屋を出ようとする。
足が完全に外へ向いた・・・。
今だッ・・・!
・・・だが、
ランディのカラダが、
今にもここから飛び出そうとする寸前、
どうしたことか、
最初の男がこちらを振り返ったのである。
「・・・おっと、忘れてた・・・。
ここは売春宿だったよなぁ?
じゃあ、代金を払わねーとなぁ?
なに? 愉しませてもらったしな、
お前は最高の女だった・・・、
だから・・・
釣りはイラネぇ・・・。」
今更、何を言い出す!?
ランディにはその光景は見えない・・・。
だが、
今やベッドで固くなっているロゼッタには、
その男の腕の動きがスローモーションに見えていた・・・、
その右腕に握られた長槍を・・・。
・・・小さな悲鳴・・・
ベッドの振動・・・
そしてランディのすぐ耳元にベッドの破裂音が・・・。
・・・なにが起きた・・・?
予想外の展開に、
ランディは飛び出す事を一瞬忘れる・・・。
そして、今、
耳元で聴こえた音を確かめるべく、
辛うじて首を捻ってみると・・・。
そこにはさっきまでなかった物が存在していた・・・。
何か棒状の・・・
いや、これは刃先が・・・
槍である・・・。
暗くてよく見えないが、
その槍の柄に何かが滴り伝わっている・・・。
ランディの指が震えながらそこに伸ばされていた・・・。
もう、
彼の思考回路は動いていない・・・。
ただ、条件反射のようなもので、
それが何なのか、
確かめようとしているだけだった・・・。
生暖かい液体・・・。
もう確かめるまでもない・・・。
だが、その濡れた指が何なのか、
信じたくはない。
彼はそれを否定するために口に含んでみた・・・。
苦い・・・血の味だ・・・。
ロ ゼ ッ タ ・・・?
男達の、
高らかな笑い声が遠ざかっていく・・・。
ベッドの上からは、もう、
何の音も聞こえない・・・。
ランディは次に何をすればいいか、
もう、考える事ができなくなっていた・・・。
突然リアリティを帯び始めた「死が目の前にある」世界・・・。
さっきまで、
一緒に寝ていたはずのロゼッタの気配が、
どうして感じられないのか・・・。
既に彼の思考は、
凶悪な槍の穂先に全てを奪われ、
ロゼッタの事態を確認しようとする事はおろか、
このベッドの下から出るという行為さえも起こす事が出来ない・・・。
もうこの館に、
イル兵は残っていないというのにも関わらず・・・。
ただこの部屋で起きた残酷な現実・・・、
たった一人、ベッドの下で、
情けなく・・・
哀れな子犬のように、
丸く固まっているだけしかできなかったのだ・・・。
ヒーローだとしてはあり得ない程の最低男、ランディ。
けれど、普通の人間としたら、ずっと隠れて表に飛び出ていけない人なんてどこにでもいるでしょう。
あなたなら、飛び出していけますか?
「家族でもなんでもない」女性を助けるために。