フラア・ネフティス編1 砂漠のランディ
ぶっくま、ありがとんです!!
時代も場所も飛び飛びですが、
全ての物語は繋がっています。
緒沢タケルも斐山優一も、
この時代は当然、消息不明。
生きているのかどうかも定かではありません。
メリーさんは、
どこかで機能を停止したまま、おねむなのかもしれません。
今は宿主がいない状態ですから。
照りつける日差し・・・、
時折吹く柔らかい風・・・。
町の所々にポプラの木やナツメヤシが立っている。
家は石造りか焼きの入ったレンガ造り、
遠くに見える岩山には一本の樹も見えない。
大きな町ではないようだが、
厳しい日差しの中でも人々は活気のある生活を送っている。
そんな町の片隅に、
ひっそりとだが、割と大きな家・・・
というより館がポツンと建っている。
敷地の裏庭からは若い男の大きな声・・・。
「おーい! 洗いもん、これで終わりかぁ!?
なけりゃカレーズの方に行っちまうぞぉぉ!?」
日が入らないの館の中からは、
これに負けない大きな女性の声が、
「終わりだよー、よろしくたのむなー!?」
と、敷地じゅうに響き渡る。
照りつける日差しとのギャップのせいか、
館の中は真っ暗に見えるだろう。
一度中に入ってしまえばそんな事もないのだけど。
・・・そこへ、館の勝手口から、
女性と扉の隙間を縫うかのように、
ちっちゃな女の子が、大きな壷を引きずりながらトコトコ歩いてきた。
「ローリエも行く!」
カラダの半分もある壷を持っては、
思うようには歩けはしない。
それでも、
満面の笑みを浮かべながら、
必死で女の子は男の手前まで近づいた。
「ランディおじちゃん! 連れてって!!」
髪の毛伸ばし放題、
無精ひげにボサボサ頭のランディは苦笑した。
あのな?
オレはまだ21だってぇの・・・!
「ローリエ!
気持ちは嬉しいが、
そんな壷持って、カレーズまでは無理だろう?
洗濯もん、入れてくつもりか?」
「お水、汲んでくる!!」
「おいおい、余計重てーよ!
まーだ、おめぇにゃ無理だ!」
「え~? 行くぅ~!
行くったら行くぅ~!!」
そこへ先ほどの扉から、
立っていた女性を避けるように、
もう1人、顔色の悪い女性が飛び出してきた。
「あっ、ロゼッタさん、ごめんなさい・・・、
あの、・・・ローリエ? ローリエー!!」
大きなスカーフをかぶったその女性は、
戸口に立っていたロゼッタという女性に気を使いながらも、
暑い日差しの照りつける裏庭に降り立った。
「ローリエ!
ランディおじさんにわがまま言っちゃいけませんっ!」
途端にむくれる少女ローリエ。
「ぶ~、だあってぇ~!」
「だってじゃないでしょう!?
ランディおじさんは忙しいのよ!」
ランディは作業中の手を止めて、
二人の中に割ってはいる。
「ハハハ、レィチェル、
そんな怒らないでやってくれよ?
ローリエも・・・
何か役に立ちたくてしょうがないんだ・・・、
子供でも・・・わかっちまうんだよ・・・。」
「・・・ランディさん、私は・・・。」
スカーフのレィチェルは、
ランディの言葉にどう答えていいかわからないようだ、
目をうつむいて、しゃがみこんでしまう。
「ママ?」
「ああ、だいじょうぶよ・・・、
ローリエ、でもね?」
「レィチェル、あんたは気にすんな、
いいよ、
ローリエはオレがカレーズまで連れて行く、
アンタは部屋の中で休んでな、
そうだ、3番の部屋のシーツが綻んでるんだ、
直しを頼めるか?」
「そ・・・そんなことでよければ私でも・・・。
でも、みんなが大変な思いをして働いてるのに・・・。」
「だから、みんなが出来ることをやればいいのさ、
・・・どんな境遇でも、
ここにきたら俺たちは家族だ!
無理に悩むなよ、
みんなで仲良くやってこうぜ?」
「・・・ランディさん・・・う・・・
ありが・・・とうございます・・・。」
「ママ? 泣かないで?
・・・ママ?」
レィチェルはその場で動けなくなってしまったようだ、
ランディは落ち着いた顔で、
「やれやれ」とでも言いたげだ。
「おーい? ロゼッタぁ、
レィチェルを部屋の中まで連れてってくれるかぁ!?」
戸口で、
ずっと見ていたロゼッタが裏庭にやってくる。
レィチェルとは対照的に、
下着同然のキャミソールに下は粗い生地の・・・、
デニムのようなショートパンツだ。
肌もこの地域の女性よりやや浅黒い。
「レィチェル、立てる?
ホラ、肩貸すよ?」
ロゼッタは優しく、
青白い顔のレィチエルを抱きかかえた。
「あっ、ロゼッタさん、だ、大丈夫です、
一人で立てます、から・・・。」
「いいから、遠慮しなくていいって、
それより・・・アタシはロゼッタ、
さんづけ、要らないから。
ランディも呼び捨てでいいよ。
余所余所しいだろ?」
「はい、すいません、
・・・ランディさ、・・・あ、ランディ、
ローリエを・・・。」
ランディは薄く笑みを浮かべながら二人を見送る。
「オッケー!
それより後でローリエに、
オレをおじちゃんて呼ぶな、としつけといてくれ。」
「は、はい、
ローリエ、おじちゃんを困らせちゃダメよ・・・!」
ランディずっこける。
言ったそばからお前がか!
二人が館の中に消えるのを見送ってから、
ランディはローリエに声をかけた。
「さて、ローリエ、行くか!
おめーはこっちの籠を持ってくれるか?
そっちの壷はおめーにゃ無理だ!」
「はーい!!」
とは言っても、
荷運びはすぐそこのロバ小屋までだ。
そこの荷車に籠や壷をのせて、
あとはロバに引いてもらう。
館の住人は全部で8人なので、
その人数分の洗濯物を洗ったり、井戸水を汲んでくるのが目的だ。
ランディはローリエを優しく抱き上げ、
荷車の安全な場所に座らせた。
「さ、行くぞ?
ローリエお姫様ぁー!?」
「おー!!」
次回はここがどんな場所なのかの説明です。