月の天使シリス編4 朱武、返り討ちにして大目玉を食らう
ぶっくま、ありがとんです!
あっという間に吊りあげられる朱武・・・、
部下の暴走に宋公明と林沖は慌てるが、
当の朱武は涼しい顔だ。
「はい、お疲れさん。」
その瞬間、
朱武の指先が、掴みあげる李鉄の内肘にめり込む!!
李鉄の、
分厚い筋肉やら脂肪やらは全く用をなさずに、
朱武の鉄のような指が肉の中に埋まって・・・
「グッギャアアッ!!」
次の瞬間には、
朱武は床の上に戻ってきた、
まるで何事もなかったかのように・・・。
それで収まらないのが猛牛のように猛り狂う李鉄だ。
「・・・ぶっ殺ぉすっ!!」
興奮して口から泡を吐きながら、
朱武の顔面にミサイルのような鉄拳を発射させたのだ!
だが・・・
朱武の体全体がわずかに前方に揺れる・・・。
衝撃何百キロもありそうなその巨大な拳を、
朱武は左手で「ずらす」。
まるで時計の針が、
12時から1時に進んだだけのようにしか見えないくらい簡単に・・・。
いや、左手でと言うのは間違いだ、
朱武は身体全てを軸に左手を合わせていただけなのだから。
そして全てが一連の動作となる右足の半歩踏み込み、
同時に朱武の右の前腕は、
李鉄の胸に接触・・・。
そのまま肘から先を捻って
「・・・フンッ。」
その瞬間120kgを超す李鉄のカラダが部屋の端まですっ飛んでゆく!!
ドンガラガッシャーン! というけたたましい音と共に、部屋の調度品や小物がバラバラだ・・・。
あ~あ・・・。
「オレ、最っ強・・・!」
「朱武っ!!」
バチコーンッ!!
李袞師範の強烈な掌底が、
勝ち誇る朱武の脳天を一撃!
「ぐぴゃあっ!!」
目ん玉から火花を放つ朱武!!
そして朱武、一気に戦闘不能に・・・。
そして目ん玉をまん丸にして、
開いた口がふさがらないのが宋公明と林沖だ。
無理もない、
いくら強いとは知っていても、
朱武の身長は170前後、
体重は70kgにも満たないはずだ・・・。
ましてやまだ彼はたったの15歳・・・。
それを・・・
2倍近い体格の李鉄がこうもあっさり・・・。
唯一冷静な李袞が、
ぶっ倒れてる李鉄の介抱に向かう。
よかった・・・
命に別条はなさそうだ・・・。
アレでも、朱武は急所を避ける余裕すら持っていたのだろう。
今や、椅子にうずくまって、
痛そうに頭を押さえてはいるが・・・。
一方、でかい図体の李鉄は、
意識を取り戻したとはいえ、
今だに事態を飲み込めていない。
ぽかぁんと口をだらしなく開き、
テーブルのあたりをぼんやりと見つめている。
もう、李袞は平謝りだ・・・、
「も、申し訳ありません、宋大人!!
とんだ失礼をしでかしてしまいまして・・・!」
ところが、
宋公明は逆に愉快そうに笑い始めたのだ!
「いやあっはっはっはっはぁ!
これは凄い!
私の部下たちの中でも、
最も血の気の多い李鉄をこんないともあっさりと・・・!
ますます・・・!
ますますキミをスカウトしたくなったよ!
朱武君!!」
隣で林沖が、
首を振りながらため息をつく・・・。
「なんでこの席に、
李鉄を同席させたのかわからなかったのですが・・・、
宋先生、
もしかしてこうなることを計算にいれてました?」
「ははは、バカ言うな、林沖、
こんなにうまくいくとは思わなかった!」
ええっ!
なんてやつだ、宋公明・・・
これだから政治家や役人は信用できない。
とりあえず、
テーブルやら椅子やら、場を片づけてから、
宋公明は、相変わらず目は笑わないまま、
一人高笑いを続けながら話を続ける。
本当に今日は愉快なのだろう。
「まぁ、今日は本当に、
飲んで食べて帰ってもらって構わないから、
今後もよろしく頼むよ、朱武君に李袞先生・・・!」
李袞は苦笑いを浮かべて、宋公明に対応するが、
朱武は無表情のままだ。
頭をぶったたかれて、痛いわけでも、
担がれたことに不機嫌になってるわけでもない。
彼がここに来る前に感じていた危惧、
それを警戒しているだけなのだ・・・。
そしてそれは・・・。
「いえ宋先生、
やっぱりさっきの話はなかった事にしてください、これからも。」
また話を蒸し返すのか?
李袞が朱武を一喝しようとする前に、
朱武はその先の話を続けた。
「訳を言います、宋先生、
オレは命を狙われています。
あなたに近づくと、あなたの命も危険になります。」
いきなり話題の展開の変化に、
宋公明は二の句が出ない。
だが、全てを察している李袞が朱武をたしなめた。
「その話はやめろ、朱武!
まだお前は!!」
「でも李袞先生、
話が大きくなってからでは手遅れだ。
今のうちに摘める話は摘んでおかないと・・・。」
ほんの数秒の間の後、
宋公明の形相が変化した・・・。
口元は小さく閉じられ、眉も平たんに・・・、
そこには、
クールで理知的な政治家・宋公明の本当の顔が現れたのである。
李袞
「ちなみに本気でやると目玉がホントに飛びでるのだがな。」
朱武
「先生、やめて下さいっ!!」
拳法の技とかを文で表現するの難しいですね、
私も専門家というわけではないし。
ただ、中国拳法の知識は、
身内に専門家がいましたので、
子供の頃、身を以て体験させられた事をネタにして書いてます。
ええ、ええ、部屋の端から端まで吹き飛ばされましたとも。