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月の天使シリス編4 呼び出される李袞と朱武

えーと、

どっかで聞いたことあるような名前がオンパレードしていると思いますが。

あの有名な中国の物語とは、名前が似ているだけで一切関係ないと思ってください。


緒沢タケルパートで「アーサー王」シリーズの人たち出しちゃってるんで、

斐山優一編では中国側を出そうかな、程度の理由です。


 

朱武が若者らしく、

戸惑い気味に来客者に向かって頭を下げると、

その男も礼儀正しく微笑を浮かべて礼を返す。

朱武がこの客の事を李袞から聞き出そうとする前に、

男はすぐに李袞と会話を始めた。

 「李袞様、

 こちらの少年が朱武君ですか?

 なるほど、精悍な顔つきをされてますな?」

 「いえいえ、お恥ずかしい・・・、

 それでお待たせして何ですが、

 よろしければすぐに着替えさせて、お屋敷に向かえますが・・・。」

 「ああ、是非お願いします。

 『先生』は彼に会えることをとても楽しみにしているのです。」


七三に分けた頭に、

白髪を多く目立たせる李袞は椅子から立ち上がり、

きょとんとしている朱武に指示を出す。

 「さて、朱武、

 これから私とお前は、

 この県の実力者であられる宋公明先生のお屋敷に招かれた。

 先日、お前が北京の武術大会で優勝したことにいたく感動されたそうでな、

 道着で構わぬのですぐに着替えてきなさい・・・!」

 

 

 いきなり何なんだ・・・。

突然の話の成り行きに当惑するも、

この朱武という少年・・・、

頭の切り替え、その計算高さは通常の同世代のレベルを遙かに超える。

すぐに頭の中に、

ある予想を構築しつつ着替えを終わらせた・・・。

 やっぱり表の車はこいつらのか、

 まさか目をつけられちまったか・・・?


先ほど、李袞師範の部屋にいた男は、

そのまま車の運転席に座る。

李袞師範は後部座席の奥に乗り込み、朱武はその隣だ。

・・・それはいい、

別に問題ない・・・。

だが、

車の中でずっと待っていたと思われる助手席の男が、

物騒この上もない。


アーノルド・シュワルツェネッガーの漢民族版とでもいうような・・・、

しかも人相を三倍ぐらい悪くした凶悪な顔つきの男が助手席に座っている・・・。

そんな外見に気後れする李袞でも朱武でもなかったが、

妹の梨香を連れてこなくて本当に良かったと思う。

 あいつなら失神するかもしれない・・・。

 

 

 「・・・なぁにジロジロみてやがんだぁ・・・!?」

バックミラー越しに、

その人相の悪い男がインネンふっかけてきた。

すぐさま運転席の男がたしなめる。

 「李鉄! 失礼だぞ!」

 「何言ってんだよ、林沖兄貴ぃ!

 こいつらのほうが・・・!」

 「黙れ! お前は先生のお客様にケチをつけるのか!?」

 「うう、わかったよ、兄貴・・・。」


まるでチンピラだ・・・。

運転席の礼儀正しい男とは雲泥の差だ。

朱武も宋公明の名前くらい聞いたことはあるが、

いったい、どういう人物なのだろう?

車は結構長い距離を走り、

朱武でさえも滅多に来る機会のない地区へと入り込む。

・・・当り前か、

この辺りは政府系の重要役人や、

その親族などが住む高級住宅街だ。

どちらかというと、

ダウンタウンに近い所に住んでいる朱武のテリトリーではない。

そのうち、

車はうねった曲がり角を何回も通り越し、

ようやく、大きな門のある屋敷の中へと迎えられた。

 

 

入口には、

これまた屈強そうなガードマンが張り付いており、

警備の慎重さがうかがえる。

やがて、

朱武と李袞は屋敷の中の豪勢な一室に通され、

屋敷の主人の到着を待つ・・・。


 「李袞先生・・・、

 宋公明さんてよく知ってるのかい?」

 「フム、

 なんかのパーティの席で一、二度挨拶はしたことはあるな。

 あの方も地元の名士だからな、

 他の客からも挨拶攻めで、

 私の事もどれだけ覚えているのか、というところだが・・・。」

 「オレ・・・

 武術大会で優勝しない方が良かったか・・・?」


斐山優一の物語で紹介したが、

この朱武、北京の武術大会で大人を総なめにして優勝してしまっている。

今回の話の冒頭で朱武が絡まれていたのも、そのやっかみが入っていたわけだ。


李袞は一度、

きょとんとしながらもすぐに笑いだした。

 「何を言う、朱武、

 ・・・そうか、お前の心配事がわかったぞ、

 だが、慎重にしてれば心配はいらん、

 お前は余計な事を考えずに聞かれたことだけ答えれば良い。」

朱武の心配事とは一体・・・いや、

それについてはもう少し先で明らかにしてみよう・・・。

 


やがてその宋公明がやってきた。

先ほどと同じく、

林沖という名の礼儀正しい男と、

李鉄という柄の悪い巨漢も一緒だ。

・・・宋公明は想像より遥かに小柄だった。

身長165弱と言ったところか、

体格も、

役人にありがちな肥満系ではあらず、

その頬にもたるみは一切ない。

顔つきは穏やかとも言えるし、隙がないとも言える。

ちなみに頭髪は薄く、頭頂はバーコードだ。

さて、朱武から見た第一印象は・・・

 油断できないタイプ・・・

 策略家・・・一度信用を勝ち得てしまえば、強力な味方に・・・。

 しかし、怒らせたり敵に回らせた場合は・・・?


宋公明は、

椅子から立ち上がった李袞に視線をあわすと、

途端に大仰な挨拶を始めた。

 「おおお、

 お久しぶりですな、李袞先生・・・!

 どうもお忙しい所を私の要望につき合わせてしまい、

 大変申し訳ありません。」

  

 「いえいえ、

 宋大人の邸宅に招かれることは、

 この李袞、光栄に存じます。

 ・・・ほれ、朱武、お前も挨拶しなさい。」


そこで朱武は、

礼儀正しく師範の言いつけどおり、模範的な挨拶を行う。

宋公明は嬉しそうに握手を求めた。

 「君が・・・あの大会で・・・

 わずか15歳で大人たちを蹴散らした朱武君か!

 是非会いたいと思っていたんだ!

 まぁまぁ、座ってくれ!

 いま、お茶の支度をさせよう!

 絶品の点心もある、さぁさぁどうぞ。」


宋公明は、

まるで宝物にでも出くわした子供のようにはしゃいで、李袞たちを歓待する。

李袞はさすがに大人の貫録か、

それに戸惑うこともなく、真正面から宋公明に対応するが、

朱武は面食らうばかり・・・。

だが、彼も大人たちの会話から、

宋公明がどういう人物なのか、

だんだん理解し始めてきた・・・。

 



朱武の章はそんな長くありません。


朱武の紹介と言うよりも、むしろこの後のデミゴットの説明をメインと考えていただければ。


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