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月の天使シリス編3 優一の悦び

 

 「デミゴッド・・・。

 なんでそんなものが日本の田舎のカルト団体に?」

 「そのデミゴッドこそが、

 彼ら九頭竜一族の崇める蛇そのものだからさ・・・。

 デミゴッドの創設者の人数は、

 蛇の頭の数と同じく9人・・・。

 そして・・・世界的な大企業にも関わらず、

 その頭目達の姿を誰も見たことがないと言われている・・・。

 一説には人間でないともね・・・。

 結局、九頭竜一族は、

 彼らデミゴッドの日本における下部組織のような存在になった。

 そしてそのデミゴッドが警戒するのが、

 一番先に話した『四人の使徒』だ。

 わかるだろ?

 あの『夢』が予言のようなものだと仮定した場合、

 彼ら九つ頭の蛇・・・すなわちデミゴットの天敵が『四人の使徒』となる。

 何しろ『夢』の中では、

 九つ頭の蛇は『四人の使徒』に倒される、

 ということになってるんだからね。」

 

 

 なるほど・・・。

ここで初めて優一の意識の中で、

夢のストーリーの前半が把握できた。

だが、まだ納得できない部分は多い。

エリナの村の伝説だと、

自分は「天使」だという設定らしい。

なら、この結城八郎が、

自分に目をつけたのは惜しいと言えば惜しいが人違いか?

 「あー、結城さん、

 つまりあんたはその夢とやらの内容に従って、

 日本全国からオレを捜しあて、

 それでオレが四人の使徒の一人じゃないかと思って近づいたってわけか?」

 「そうそう!

 呑み込みが早くて助かるよ、

 ただ、オレってわけじゃなく、

 オレの所属する団体としてね。」

 「他にも捜索は出してるのか?」

 「勿論ね、

 だが今のところ、該当する人物に巡り合えたという報告は来ていない。」

 「で・・・、

 もしオレが四人の使徒だったら?」


 「今は君の所在を確かめておくだけでもいい、

 ・・・もし君が四人の使徒なら、

 これからどんな成長をするのか注視する必要がある。

 それに、四人の使徒を探してるのは九頭竜一族も同様だ。」

 

 

 「人違いなら?」

 「完全に人違いだとわかれば、

 ハイさよならだ。

 ・・・ただ、向こう側・・・

 九頭竜一族がそう判断しない限り、

 いつまでも君には生命の危険が付きまとう。」

 「・・・なんだ、そりゃ。」

普通なら、その理不尽な扱いに不満の声をあげてもいいだろう。

だが、本心では優一はワクワクしているのだ。

自分が天使だか使徒だかは知ったこっちゃないが、

ことによると、

無茶苦茶暴れられるチャンスかもしれないからだ。


結城八郎は思い出したように補足する。

 「あ、勿論、オレがいる限り、

 九頭竜一族が近づいてきたら、

 君を守ってやるぜ? 斐山君、

 君が使徒であろうとそうでなかろうと、

 そいつらはオレらの敵なんだからな。」


そこで初めて優一は涼しげに笑う。

 「なぁ、結城さん、

 アンタさっきから『敵』とか守るとか簡単に言ってるが・・・。」

 「あ? ・・・ああ。」

 

 

 「その言葉には、

 『人間の命を奪う行為』も想定して言ってるのかい・・・?」


 それは仕方が・・・

と言いかけて、

結城の背中に冷たい物が走る・・・。

結城八郎も調べ上げることはしていたが・・・、

この斐山優一が、

中学時代に犯してきた犯罪・・・、

それは立件されていないだけに、

その全容を掴むことなど出来もしなかった。

だが、まさかこの若さで人の生死を・・・?


彼も・・・その彼が所属する出雲一族も、

単純な善悪の基準で四人の使徒を探索しているわけではない。

だから、

例え斐山優一が不良だろうと、

ヤクザと親交があろうと、

どうでもいいとは思っていたのだが、

ここ、直接彼の本質を改めて認識するならば・・・。

 

ようやく結城八郎は口を開く・・・。

 「そ、そうだ、

 いざとなれば命の奪い合いになる・・・。

 さっきも言ったが、

 デミゴッドの頭目達は・・・

 人間とは思えない何らかの存在らしい・・・。

 嘘かほんとかどうかわからんが、

 もしそうなら、人間の法やルールなど、

 何の足かせにもならないからな・・・。

 だからオレも、

 その該当者と思われるキミに忠告を兼ねて・・・。」


そこで結城八郎は話をやめた・・・。


喜んでいる・・・。

顔の表情にはわずかにしか出してないが、

明らかに面前の斐山優一は、

歓喜の表情を表している。

その不気味さが、

結城八郎の説明を中断させてしまったのだ。

 

 

別に・・・斐山優一も、

戦闘や殺し合いそのものが楽しいと言うつもりはない。

ただ単に、

今まで自分自身ですら理解できなかった自らの存在・・・、正体、

そしてその価値・・・、

そして自分が受けてきた不思議な体験の意味・・・、

それらが明らかになるかもしれないその喜び・・・。

それが斐山優一の心を溶かし始めていたのだ・・・!



そして後に・・・結城八郎と別れた後、

エリナはすぐ隣で、

やはり優一の嬉しそうな姿を目撃している・・・。

その時、

彼は一人つぶやいたのだ・・・。


 「人間の法やルールなど足かせにもならない?

 ・・・人間とは思えない?

 それは誰のことを言ってるんだろうなぁ・・・?」

 


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