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月の天使シリス編3 乱闘

 

 「・・・悪いな、みんな。

 こういうことも起こりうるから、

 一緒にいたくなかったんだが・・・。」


 えっ?

次に周りの変化に気づいたのはエリナ・ウィヤード。

見れば、通りのあちこちに、

柄の悪そうなお兄さん達が待ち構えている。

ゴルフクラブを握りしめてたり、

金属バットに、メリケンサック・・・?

総勢十数人はいるのでは!?


 ま・・・まさかこれって・・・。

加藤・山本・鮎川・エリナ、

例外なく後ろの斐山優一に目が行ってしまう・・・。

さすがに勇敢なる鮎川クンもこれじゃどうしようもない。

 「け・・・警察に!?」

それが精一杯の対応だろう。

だが、斐山優一は全く動揺すらしていない。

 「エリナ・・・仕事だ。」

 「はい!

 ・・・お手伝いします!」

 

パニクる加藤。

 「ちょちょちょ、

 今度は何するつもり、エリナちゃん!?」


この状況に至っては、一般人の加藤の意見など取り上げる必要もない。

優一は他の人間など眼中にもいれず、

エリナとのみ会話する。

 「エリナ、お前、自信ありそうだな?」

 「・・・接近戦闘は学んでいます。」

 「そうか、

 だが、お前は参加する必要はない、

 お前の仕事は加藤達を守ることだ。」

 「そんな・・・!」

と、エリナは言いかけたが、

優一の言葉は至極まっとうな物に聞こえる。

とは言っても・・・。


 「優一様・・・

 お一人ではいくら何でも・・・。」


優一の犬歯が白く光る。

 「さ・ま!」

あ、いけない!

ついつい禁じられたワードを口から滑らせてしまい、

落ち込むエリナ。

だが、すぐにそんなことはどうでもいいかのように、優一は視線を前に向けた。

 「オレが他の人間と一緒に行動できないわけを見せてやるよ・・・。」


そのセリフを最後に、

斐山優一は集団のリーダーらしき男の元へ歩いてゆく。

優一より二回りは大きいかという、

頭を剃り上げた皮ジャンの男の元へ・・・。

  

 「あーっと、水沼中の吉見だったか?

 確か去年、

 ヒネってやったと思ったんだけどね?」

優一は涼しい声で、

完全に余裕ぶっこいてる・・・。

対して、

吉見と言われた男は目ん玉を釣りあげ、

ドスを利かせた声で優一に詰めよった。

 「・・・ほざいてんじゃねーぞぉ!?

 てめぇはほとんど高みの見物だったじゃねーかっ!

 だが、今は一人らしいな・・・。

 安心しろよ、タイマン張ってやっぜ・・・、

 今さら普通の生活しようなんてムシが良すぎんだよぉ・・・!

 借りは・・・返さねーとなぁっ!!」


 ふーっ、ホントに頭の悪いやつ・・・。

 「そうか、

 なら行こうぜ、そこの橋の下でいいか?

 お互い、人気の多い所じゃやりづらいだろう?

 ・・・それと、後ろの奴らは無関係だ、

 それもいいな?」

 「ハハッ、余裕じゃねーかぁ!

 いいぜぇ、

 ただし、お前が逃げださねーように、

 お友達は一緒に来てもらいてーなぁ!?」

 

既に鮎川達の退路は断たれている。

だが、今のところこの男たちは、

自分たちが圧倒的有利と思いこんでいるようだ。

なら、そんなに無茶なマネはしまい・・・。


夕方近くとはいえ、

まだ日が沈むような時間でもない。

近くの川の土手際には、

時々、散歩する人間や自転車に乗る者も見かけるが・・・。

橋のたもとでは、

その陰に隠れて傍からは、

「柄の悪い連中が集まってるな」ぐらいにしか見えないだろう。

いつの間にか、

バイクでブォンブォン、エンジン吹かして威嚇する者までいる。

エリナ及び鮎川クンたちは、

土手の上で3~4人の不良どもに囲まれ、逃走は不能だ。

加藤とヨリは、

二人抱き合ったまま震えているばかり・・・。

優一は一人、余裕で河原に降り、

先ほどの吉見とやらと対峙した。


 「斐山ぁ! 覚悟はいいかぁ!

 安心しろ、

 てめぇをぐちゃぐちゃにしたら、

 そこのねーちゃんたちは無事に帰してやんよ、

 救急車呼ぶ人間も必要だからなぁ?」

 


この状況下でも優一の表情は変わらない。

むしろ、

今の吉見のタンカを無視するかのように、

土手の上のエリナに声をかけた。

 「エリナ、すぐに終わらす。

 始まったら、お前も好きに動け、

 任せる!」


一同、その言葉に声も出ない。

無視された吉見が激高するが、

そんな形相を見せることが許されたのも、その瞬間のみ、

優一は口元に笑みを浮かべて吉見を見上げた。

 「まったくこんな時間から・・・

 通報されたらどうすんだ?

 まあ、いい、いくぞ・・・!」


吉見の視界からいきなり優一が消えた!

そして彼の右膝に、

この世の終わりと思えるような激痛がっ!

 「ひぐっ!?」


体重差などものともしない、

優一は、

吉見の右膝を彼の死角から回り込んで、

無慈悲にも全体重をかけて、

粉砕するっ!

 


当然そのまま、

地獄の痛みに顔をゆがめ態勢を崩す吉見・・・、

その顔が落ちたところで、

つま先を立てて鼻っ柱を蹴りで穿つ!!

・・・ためらいとか遠慮とかは全くない。

これが斐山優一の恐ろしさなのだ。

自分が相手にどれだけのダメージを与えられるのか、

どこまでやれば敵は戦闘不能に陥るのか、

全て瞬時に計算してしまう。

周りの連中も手助けに入る隙もなかった。

あっという間に優一のエルボーが、

跳ね上がった吉見のみぞおちに埋まり、

ほんの・・・

ほんの一瞬の断末魔の声を上げたかと思うと、

巨漢吉見は、

土手の草むらに前のめりに倒れこんでしまった・・・。

 


一般生徒を巻きまない辺り、この辺りの不良どもは意外と律儀です。

・・・それだけに哀れ・・・。

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