月の天使シリス編3 体力測定の日
ぶっくま、ありがとんです!!
今日は!
新学期初めの、待ちに待った体力測定!!
体育の時間を二時間使って、
二クラス男女合同で、
各種目の体力測定及び校内検診を行う日である。
斐山優一達の学年は、
白いラインの入ったエンジ色のジャージの上下に、
インナーはありふれた白い体操着となっている。
ちなみに二年は紺で、三年は緑のジャージだ。
優一は、
中学でも授業を真面目に受けてこなかった。
学力テストは自分の成績状態を把握しながら、
それに応じた点数しか取らなかったし、
体育の授業は誰が見ても「流していた」。
そんなかったるいマネをするはずがない。
高校だって同じだ、
こんなものにムキになったところで何も得するものがない。
現在のところ、優一は特定の友人を作らず、
適当に、この記録会も流すつもりでいたのである。
そんな優一を見つめる一人の少女、
・・・エリナ。
その傍らには、
明るく談笑している加藤恵子や山本依子がいる。
優一さんは私に加藤さんたちを紹介してくれたけど、
あの人は一人・・・。
淋しくはないのかしら・・・。
優一が、
敢えて一人になりたがっていることはエリナも承知していたが、
本当にそれでいいとは、どうしても思えなかったのだ。
そんな風に心配していると、
突然、加藤恵子がびっくりした声をあげる。
「きゃあっ!?」
何事と思いエリナが振り返った先に、
・・・そこにあの朝田がやってきていた・・・。
その視線はエリナに向けられている・・・。
「な・・・何ですか!?」
「そ、そんな身構えないでくれよ、エリナちゃん、
あれから、なかなか話せる機会がないじゃないかぁ?」
・・・先日のいざこざから、
エリナはこの朝田と言う少年に対し必要以上に警戒している。
いや、やっぱり必要か。
「私の方は、
あなたに特段、用はないのですけれど・・・。」
「つれないな~、
オレは君の事をよく知りたいんだよ~、
君だって日本の事を勉強するために来てるんだろ?
なら、オレがいろいろ教えてあげるって!」
エリナが嫌がっているのは誰の目にも明らかだ。
恐怖に対するネジが一本緩い、
加藤恵子がエリナをかばう。
「ちょっと!
いい加減にしなさいよ、あなた!
いま、授業中よ!
第一、女の子誘うにしても、もっとスマートにやりなさいよ!」
「うっるせぇな、クソブス!
多少、強引なのがオレのスタイルなんだよ、
お前には用ないんだからすっこんでろ!」
そんな暴言を吐かれた加藤恵子も激怒するが、
さらにそれ以上、興奮したのが山本依子だ。
前回のやりとりをその目で見てないものの、
いま、この場で親友を侮辱され、彼女が黙っていられるわけもない。
「なぁにぃ、このウドぉぉ!!
おめぇ何様だよぉ!!」
これはやばい!!
この時エリナが思ったのは、
加藤やヨリの身が危険だということ。
自分の事など後回しだ。
ならどうしよう・・・、
優一さんにお手数かけるわけにもいかないしぃ・・・!
「待ってください!」
朝田・加藤・ヨリの三人の動きが止まる。
エリナは、
加藤とヨリのカラダの間を縫って、
朝田の前に立ちはだかった。
「おおお、こんな近くでエリナちゃーん!
そうだよ、こんな奴ら、ほっといてさぁ・・・。」
「朝田さんでしたっけ?
あなたは私をどうしたいのですか!?」
直球の質問に戸惑いつつも、
この状況は朝田にとって嬉しいパターンだ。
「え、あ、どうしたいって・・・、
イヤハハハ!
そりゃあ、君と仲良く二人っきりで・・・
そうだなぁ、
お話したり、お出かけしたり、
映画やショッピングなんてどう?」
「・・・それっていわゆるデートのお誘いですか?」
朝田はノリに乗る。
「うん! そう、それ!!
どう? オレなら君を退屈させないぜ!?
あんなガキみてーなチビと一緒にいたって、
楽しくねーだろ!?」
ここで更に、
加藤恵子の怒りバロメーター15ポイントアップ、
でも今はそれどころじゃない。
反応した加藤をエリナは片手で静止しつつ、
その眼で朝田をにらみつける・・・。
「いいですよ?」
狂喜乱舞する朝田!
「いやっほうぅ!!」
慌てふためく加藤とヨリ。
「ちょっと、エリナちゃん!?」
だが、エリナの表情は毅然としたままだ。
「ただし、条件があります!」
「え? 条件!?」
「今日のこの体力測定・・・!
あなたがたった一つでも、
この二クラス内で一番の成績を出したら、
一日お付き合いしましょう。
その条件でいかがですか?」
「ちょっちょっちょ、エリナちゃん!?」
何、言い出すの、この子!?
加藤達が慌てるが、エリナは全く動じない。
朝田の方はそれでも全く意に介さないようだ。
「え~っ! 条件付けかよぉ、
でも・・・たった一つでもいいのかぁ!?
らっくしょう、らっくしょう!!
あ、そうだ、ならさぁならさぁ、
一種目一位の成績で一日なら、
一位の種目数が増えるごとにデートの日数増やしてよ、
たいして変わらないでしょ?」
「・・・いいですよ、
確かにたいして変わりませんね・・・。」
「よっしゃ! 決まり!!
うおおおおおおおっ!!
やるぜ!! 燃えてきたぞぉぉぉ!!!」
朝田は興奮しながらその場を去る。
本気で残りの全種目狙いに行くつもりだろう。
それだけ体力には自信があるようだ。
一方、加藤恵子は大慌てだ。
「ちょっとエリナちゃん、大丈夫なの!?
あんな約束しちゃって!!」
「・・・平気ですよ、
あの人には一位は取らせません!!
言うに事欠いて・・・
あの時、優一さんをチビとか男女とかああああっ!
許せない・・・
絶対にあの鼻っ柱を折ってやるんですっ!!」
「え・・・エリナちゃん、
瞳が燃えているっ・・・!?」
次回、エリナ、マジ切れ!!