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月の天使シリス編3 第1の爆弾


さっきまで完全に舐めきっていたチビにここまで見下されて、

しかも女子や衆人の前でこれだけの屈辱を浴びせられて、

思春期の男の子が耐えられるわけもない。

 「・・・この『おとこおんな』ぁ、

 いい度胸だぁっ!!」


周辺の女子は、

悲鳴をあげてこの場から逃げ出す。

女子の中ではエリナ唯ひとり、

この状況で自分が取るべき状況を考え続けている。

いや、もう既に決断していた・・・!

 この朝田という少年が、

 優一さんに指一本触れたなら・・・!!


ここで鮎川クンが再びカラダを張るっ!

 「止せっ!

 お前誰に絡んでるのかわかってるのかっ!?」


朝田の右腕をがっちりはさみこんで、

彼の動きを封じ込める。

当然、

朝田はもがいて鮎川からぶっ飛ばしてやろうかとも思ったが、

鮎川の言葉も無視はできなかった。

 「ああっ!?

 どういう意味だそりゃあっ!!」

 

当の斐山優一は、

椅子に座ったまま薄ら笑いを浮かべている・・・。

 なんでこのチビ、

 こんなに落ち着いてるんだ!?


朝田の問いに鮎川も答えを返すことができない・・・。

 どうしよう、何て言えば・・・。

 迂闊に喋って斐山の逆鱗に触れたらぁ~、

 ってオレ何でこんなことやってんだぁ~?


だが意外にも、

鮎川クンへは斐山優一は好意的な評価を下したようだ。

 「鮎川、

 ・・・お前っていい奴だな、

 だがお前は何もしなくていいんだよ。

 こういうバカは、

 自分のカラダで痛みを味あわないと理解できないんだ・・・。」


ドスが効いてるわけでも、

怒気を含んだ声でもない・・・。

むしろ、

そのあまりにも優しそうな声の落差に、

鮎川クンの背筋は寒くなった・・・。

 もうダメ・・・ッ!!

 結局ダメなんだよなぁ・・・っ!


既に自分の手に負えないと判断した鮎川クンは、

再びそこを脱出してしまう。

朝田の怒りは全く変わらずだが、

その戸惑いも消えてはいない・・・。

 この鮎川ってヤツ、

 結構いい運動神経してそうなのに、

 なんで、この目の前の女みてぇな顔した奴にビビってんだ?


こういう場合、

朝田にとって取るべき手は一つしかない。

いきなり斐山をぶっとばさずに、

徐々に間合いをつめて、

ゆっくり彼の胸ぐらでもつかみ、

脅しあげてビビらせる。

 そうすりゃ、万事解決・・・!

朝田だって別に不良ってわけでもないのだ。

入学早々、

騒ぎを起こすつもりなんかハナからない。

そして彼はゆっくりと優一の胸元めがけて手を伸ばした・・・!


 ガシッ!!


教室の誰もが意表を突かれる!

伸ばした朝田の手が、

華奢な少女の手で阻まれた!

見れば隣のエリナが立ちあがって、

朝田の手首をきつく握りしめていたのだ!

 「エ? エリナちゃん!?」


エリナの目が敵意を剥き出しにしてる・・・!

 「止めなさい!!

 優一さんに手を出したら私が許しませんよ!!」

 

 ええっ!?

 この状況ってなぁにぃぃぃっ!?


そう思ったのは、

傍観者の加藤恵子だが、

クラス中の男女がほぼ同じ思いを生じさせているようだ。

一方、朝田は戦意を喪失せざるを得ない。

いや、

見れば斐山優一も・・・。

 「・・・このバカ、何て発言を・・・。」


斐山優一は、

座った椅子から全く動かないものの、

その顔だけ・・・

がっくりとうなだれてしまう・・・。


ちょうどいいタイミングと言うか、

誰もが次にどうアクションを取ればわからないこの時、

ガラッと扉が開いて担任教師が入ってきた。

 「おーい、

 ホームルーム始めるぞぉ?

 みんな席につけー。」

 

 

教師は、

この寸前までの喧噪など想像することすらできず、

あまりにも、

その場にふさわしくない一石を教室内に投じた。

それが良かったのだろう。

周辺の生徒は、

これ幸いとばかりに自分たちの身の回りを整え、

おせっかいな鮎川クンや加藤恵子は、

散乱した机や椅子を、何もなかったの如く、

わざとらしい笑みを浮かべながら元に戻していく。

朝田に関しては、

振り上げた拳を戻すことしかできずに、

悔しそうに自分の席へと戻っていった。


そして、斐山優一は再び顔を起こし、

エリナとともに、

何もなかったかのように、

ちょこんと椅子に並んで座っているだけである。

ただ一言、

机を直した鮎川クンに、

 「ご苦労、パシリ。」

とだけ言ってあげた。

鮎川クン「ええええええええええええっ」・・・。


エリナが首を傾ける。

 「パシリってなんですか?

 野菜でしたっけ?」

 

 「お前・・・わざと言ってないか?

 一応・・・パセリな。

 まぁ存在価値的には似たようなもんだ・・・。

 パシリってのは、

 奴隷と言うか、召使だな。

 この日本では消滅した制度だが、

 まだ形を変えて現代に残っているんだよ。」

 「へぇぇ、この人がそうなんですかぁ?」


 (斐山、何、大嘘ぶっこいてんだぁああああっ!?)

でも、それを口に出して反抗できない鮎川クンだった・・・。


 「よーし、みんな席に着いたなぁ、

 じゃあ、まずはみんな、この学校に入学おめでとう!

 授業は明後日からで、

 今日は、簡単な学校行事の説明と、

 時間割なんかを配るからな。

 それじゃ・・・さっそく自己紹介からいこっか!」


とにかくさっきまでの険悪な空気から逃れられれば何でもいい。

これこそ入学初日のあるべき姿だと、

誰もが思いながら、

自分は緊張しつつも、

他に面白い人や「期待できる人はいないか」と、

ワクワクドキドキの自己紹介コーナーがこれから始まる。

 


明日は第2の爆弾炸裂!

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