表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
229/676

月の天使シリス編2 予感


さて、話を戻そう。

エリナと優一の顔の距離は10cmほどの距離だ。

だが、近づく優一の顔に戸惑ってはいるようだが、

エリナの顔に拒否感は見られない。

じっ・・・と優一の瞳を見返すのみだ・・・。

 「その・・・優一さん、

 わたしは・・・あなたに従うようにと・・・ 」


その口ぶりは落ち着き払っているが、

異常聴覚を持つ優一の耳はごまかせない。

・・・彼女の心臓の鼓動が早鐘を打っている・・・。


 「なら・・・そうだな?

 服を脱いでみろ・・・。」

 「えっ!?」

 「聞こえなかったか?

 服を自分で脱げといったんだ・・・。」

一度優一は腕を放し、ベッドに座り込む・・・。

 

しばらくエリナは動かなかったが、

やがて意を決したのか、

ゆっくりと着ていたセーターの裾をつかんだ・・・。

長いグレーの髪の毛に気を使いながら、

セーターをめくりあげてゆく・・・。

なめらかな腹部や白いブラも見えてきた。

一切の無駄な贅肉もない、きれいなボディだ・・・。

男なら、誰だって手を伸ばしたくなるに違いない。


 「あ・・・あの、し、下も・・・ですか?」

 「当たり前だ、下もだ。」


今度はジーンズのボタンとジッパー・・・。

ジッパーの隙間から眩しい下着の色が見え始める。

さすがに彼女も恥ずかしそうにカラダを優一に対し斜めに立つが、

やはり滑らかな太ももとヒップが露わになって・・・。


優一は黙って眺め続けている・・・。

観察しているのだ、

彼女の表情・挙動はもちろん、

骨格や筋肉のつき方までも。


エリナは暫くためらっていたが、

一度、優一の視線を確認すると、

ついには背中のブラのホックに手をかけた。

 


ここで優一が空気を変えた。

 「いいよ、もう。」

 「あ・・・え?」

最後まで試しても良かったのだが、

優一は途中であることに気づいたのである。


 「服、着ていいぞ。

 ・・・ところで、エリナ、

 お前、全く拒否しない所を見ると、

 こういったことも想定内ってわけか?」

 「あ・・・え、それは、あの・・・まぁ・・・。」


かえって今の方が恥ずかしそうな表情だ。

はぁ~、っとため息をつく優一。

 「・・・まさか既成事実を作ったほうが、

 目的を達しやすい・・・ってつもりじゃねーだろーな!?」

 「は・・・まぁ、そういったことも・・・。」

 「それと・・・もう一個確認したいが・・・。」


実はこっちの方が重要だ。

 「は、はい~っ。」

 「ウィグルってのはそんなに大きな村じゃないんだろ?

 オレとお前に血縁関係は?」

 


優一が気づいたこと・・・それは、

そのウィグルとやらが未開の村と考えていただけに、

下手したらこのエリナが、

自分の腹違いの妹とか、

そんなベタな展開の可能性に気づいて背筋が寒くなったのだ。

 「あ・・・それは大丈夫です!

 せいぜい3代ぐらい前に遡らないと、

 ええと・・・はとこっていうんでしたっけ?

 ウィグルでは従兄弟まで婚姻が認められています!」

 「・・・いや、大丈夫って・・・お前、

 ・・・まぁ、いいや・・・。」


この会話で、

優一はエリナにイタズラする気が完全に失せてしまった・・・。

しかし、

来月からコイツと同じ学校に通うのか・・・。

まぁ、退屈はしないで済みそうだ・・・。


 「わかった、今夜はもういい・・・。

 どうせ下でオヤジ達が心配してるんだろう、

 一度、下に顔を見せてから、自分の部屋に戻れ・・・。」

 


エリナの口元がちょっと開いている・・・。

良くも悪くも、

想定していた事態が肩透かしに終わって、

安心したのと期待はずれだったのと入り混じった表情なのだろう。

服も完全に着なおし、髪を軽く梳く・・・。

戻れと言われたのに、

エリナはしばらく、優一の顔を見続けていた・・・。


 「なんだ? 戻れって言っただろう?

 オレの顔に何かついているのか?」

 「あ・・・あの、優一さん・・・。」

 「あん?」

 「私がさっき、初めてお会いした時、

 『想像以上にかっこいい』って言ったの、

 ・・・あれ、ホントですよ・・・。

 村の同年代の男性でも、

 優一さんほどカッコいい人いません・・・!」


笑ってやがる、・・・コイツ。

 「・・・いい加減にしろ、

 素っ裸にして外に放り出すぞ!?」

 「きゃあ!」

慌ててエリナは扉を開けた。

・・・そして振り返り恐る恐る優一に最後の挨拶を・・・。

 「優一さん、じゃあ失礼します・・・、

 お休みなさいませ・・・。」

 

 「・・・ふぅーっ、

 ああ、長旅だったんだろ?

 安心して寝とけ・・・。」

相変わらず口調も表情もぶっきらぼうだが、

優一の言葉の端に、エリナは優しさを感じた・・・。

 「はい! ありがとうございます!!」

扉を閉めた後、

エリナの顔は喜びの表情でくしゃくしゃになった。

彼女だって、

優一の性格や容姿が、

最低の人間である可能性だって想定していたのだ。

・・・それがこんな・・・。

エリナは子供のように無邪気な笑みを浮かべて、

階段を下りていった・・・。


優一の方も、

最初っから甘いツラを見せるつもりは毛頭なかった。

ただ、自分のルーツが判明した事、

そして自分を待っているこの先の運命・・・、

それらを考えたら、

目の前の少女のカラダなどどうでもいい。

彼にしてみれば、

たったそれだけの話に過ぎなかったのだが・・・。


 それでも・・・

 この段階で、彼の未熟ともいびつとも言える「感情」が、

 少しずつ育ち始めているのは、

 確かな事だったのかもしれない・・・。

 


そして・・・、

今後一年間・・・斐山優一とエリナ・ウィヤードは、

一つ屋根の下で波乱に満ちた生活を送る事になるのである。





シリス編の2はここまでです。

この後、登場人物紹介。


そして明日からシリス編3高校生活編となります。

斐山優一パートで最も平和な時期かしら。

誰も死にませんのでご安心を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ