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月の天使シリス編2 ご対面


そして時刻は夜10時・・・。

役人は早々に帰り、

エリナの2階の部屋の片付けも、

夫妻の協力もあったおかげですぐに終わった。

その他、

家の習慣、バスルームの使い方・・・、

いや、実際、時刻も遅くなっているので、

一人息子の帰らないうちに、

夕食・入浴は済ませ終わっていた。


結局、夫婦の違和感はぬぐえないままだが、

いまや、

このエリナは家の娘であるかのごとく、

3人でテレビを見ていた。


 「エリナ君の村では普通にテレビは普及してるのかい?」

 「はい、ありますよー、

 全員の家庭にあるわけではないですけども、

 村の領内からはレアメタルが産出するんで、

 経済状況はかなりいいです。」

 「あー、それで、

 中国政府が今まで、

 外国人の立ち入りを拒んでいたのかね。」

 「あ、はい、

 他にも理由はあるんですが・・・。」


ガチャリ・・・。

 


玄関の扉が開いた。

いよいよ優一が帰ってきたのだ。

今までどこに行ってたのか・・・、

いや、それはこの際どうでもいいけども・・・。


 「お・・・帰ってきた、

 ゆ・・・優一!」

父親は息子を呼び止めるが、

いつも通りだ、

優一はリビングを一瞥した後、

何事もなかったように2階へ上がる。

父親は申し訳なさそうだ・・・。

 「あ・・・あ、エリナ君、

 すまんね・・・

 ああいうヤツなんだ・・・。

 む・・・無理に仲良くしようとかは思わなくてもいいから・・・、

 そんな気を使わないで・・・。」


だが、エリナは真剣な表情で切り返す。

 「いえ・・・、

 ご挨拶してきますよ!」

 

事態を重く考えた母親はさらに引き止める。

 「ダメよ・・・!

 あ、でもどうしてもというなら・・・

 私が一緒に・・・。」

 「いいえ、

 お母様もお父様もご心配いりません、

 ごゆっくりここでお過ごし下さい。

 ・・・少し、

 時間がかかるかもしれませんが・・・。」


落ち着いた口調ではあるが、

エリナの言葉には、

明確な意志と自信が溢れていた。

既に息子の教育と対処に自信を喪失している二人には、

それ以上言葉を続けられなかった・・・。


エリナは澱みなく階段を上がる。

トットットと、

静かな足音で優一の部屋の前まで来ると、

明るい声で部屋の主に呼びかけた。


 コンコン!

 「優一さん!? はじめまして!

 今日からこちらにお世話になるエリナ・ウィヤードと申します。

 失礼して・・・

 よろしいでしょうか!?」

 

一方、

部屋の中の優一はどうか?

いま丁度、

部屋着のトレーナーに着替え終わり、

脱いだ服をたたみ始めている。

新しい住人がやってきたのは、さっき階段の下から確認できている。

顔までは見える位置ではなかったが、

大して興味も持たずにこの部屋まで帰ってきただけだ。


 ・・・それが向こうから来やがった。

しかし、階下から聞こえてくる声や、

今も扉越しに聞こえてくる声は、

確かにうまい日本語だ。

それは優一も素直に感心している。


 ・・・さて、どうしたものか。

 まぁ、いずれ、この先一年、

 同じ屋根の下で暮らすのなら、

 今、互いの顔を確認するのに何も不都合はない。

 親なら無言で反応する所だが、

 最初なので声だけでも返事してやろう。

 

「・・・開いてるぞ、入れよ・・・。」


エリナ、廊下の暗がりでガッツポーズ!

この時間までに、

優一が問題児であるということは、

両親の口ぶりで把握していた。

・・・勿論、彼女だって緊張しているのだ。

 「はい! 失礼します・・・!」


ガチャ・・・

扉がゆっくり開かれる。

優一の両手には、

まだ脱いだ衣服が抱えられている。

当初、ぶっきらぼうに対処するつもりだった優一も、

珍しく仰天してしまっていた・・・。


 「はじめまして・・・、

 よろしくおねがいします。」

しずしずと挨拶するエリナ・・・。


それより何がビックリしたかって?

・・・それはアジアの奥地からでてきたんだ、

よほど田舎臭い女でも来たのかとも思っていたが、とんでもない。

優一は、

一々魅力的な女性に鼻の下を伸ばすクチでもないが、

正常な美的感覚は持っている。

好み云々は別にして、

テレビの画面の中にいてもおかしくないレベルだ。

 


そしてさらに・・・。

 「驚いたな・・・、

 アンタみたいなキレイな子が来るとは思ってなかったよ、

 この一年間、楽しくなりそうだな・・・。」

まずは、エモノを前にした狼みたいな笑みを浮かべてみる・・・。

先制パンチだ。

だが、エリナは警戒すらすることなく、

真正面からその言葉を受け止める。

 「・・・わぁ!

 ありがとうございます!

 優一さんも『想像』以上にカッコイイです!

 お世話になりますね!」


 ・・・そうきたか・・・。

 まあいい、

 では、いよいよ核心だ・・・。


 「・・・なぁ、

 アンタ・・・エリナって呼んでいいか?」

 「あ、はい! どうぞ!!」

 「お前・・・オレの顔を見てどう思った?」


最初、優一の質問の意図を掴めず、

答えるの躊躇しているエリナ・・・。

勿論、優一は、

こんな言葉でエリナを誘惑しているわけでも、自己中なナルシストというわけでもない。

そしてエリナも、

この目の前の少年が何を気にしてそんな質問をしたのか・・・、

自分にも心当たりがある分だけに気づき始めていた。

・・・問題は、それをどう説明するか・・・。

もう少し、お互いなじんでからにしようとも思っていたのだが・・・。

 「あ・・・え、

 優一さんのお顔ですか?

 あ、か、かっこいいですよね?」

 

 「そうじゃねーだろ?

 そんなことを聞いてるんじゃない、

 ・・・とぼけるな。

 何でオレの瞳や髪の色と、お前のそれが一緒なんだ?

 オレは今まで、

 自分と同じ色をした奴なんか見たことない。

 まさか、カラーコンタクトはめてるとか、

 染めてきたとか言うなよ?」

 

一度、優一は視線を外し、

服を片付ける作業を終了させた。

エリナも悩んでいる風だが、

ついに彼女も決心したようだ・・・。

 「あの・・・

 私はそれに答えられますけど・・・。」

 「なんだ?」

 「あ、えと、優一さん・・・

 あなたのご両親に心配を・・・。」

 「・・・あいつらのことは気にしなくていい・・・。」

 「では・・・優一さん、ご自分の生まれの事を!?」

 「・・・やっぱりそうか・・・、

 エリナ・・・

 お前がこの家に来たのは偶然じゃなく・・・。」

 「はい、必ずこの家にホームステイできるように、

 入念に手回ししてました・・・。」

 





けっこう、簡単にバラしました。

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