表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
223/676

月の天使シリス編2 ある日のアクシデント

 

優一は心底愉快そうな表情を浮かべる。

 「オヤジ、

 せいぜいとんでもねぇドブスが来るといいなぁ?

 そうしたら、心配いらねーもんなぁ?」

 「優一!!」

 「・・・まぁ、アンタの言いたいことはわかったよ、

 ただ、オレもそんな先の事は自信ないからね?

 相手次第だよ・・・。」


優一も自分の気まぐれさは自覚している。

別に女に不自由しているわけでもないし、

正直、そっち方面の欲求は薄い・・・。

適当にからかえる相手がいれば退屈はしないだろう、

せいぜいそれぐらいの衝動しかない。

・・・例えばこれから来るその相手が、

いわゆる高慢ちきな態度の勘違い娘なら、

その鼻っ柱を叩いてやるためにも、

徹底的にいたぶって屈辱を与えてやるのも一つの手だし、

箱入りお嬢様なら、

ふしだら極まるよからぬ世界を教えてやるのも楽しいだろう。

・・・実際、いま思いつくのはそんなところ・・・、

後は本人を見てからだ。

 


そして父親にしてみれば、

今更息子のナメたセリフ使いや態度に、

いちいち怒ることも出来ない。

用件は伝え終わったし、

息子も一応、納得して見せた。

不安が解消できたわけではないが、

これ以上、この場の空気に耐えられはしないので、

父親は静かに部屋を出て行った。

・・・優一はそのまま雑誌を読みふける・・・。

それにしても・・・、


 何か引っかかる・・・。


だが、親の様子から見ても、

恐らく、その「引っかかるもの」が何なのか、

彼らに聞いて判るものでもなさそうだ。

そして実際、

その「引っかかり」を感じていたのは、

優一だけでなく、その両親も一緒だったのだ・・・。

 

夜、食事の片づけを終えた母親が、

小声で自分の夫に話しかける。

もちろん、この場には他に誰もいない。

だが両親は、ともに息子の耳のよさを知っている。

 「ねぇ、あなた・・・。」

 「ん?」

 「今日のあの・・・留学生のお話・・・。」

 「ああ・・・。」

 「その留学生の村は、

 15年前私たちが調査した村の近隣の出だというけど・・・。」

 「ああ、その話か・・・

 もしかしてお前も気になったのか・・・?」

 「もちろんよ・・・、

 確かにウチが、ホームステイ宅の候補として選ばれるのは分るけど、

 本当にそれだけの理由なの・・・?」

 「・・・15年前、私たちが優一を拾った時、

 普通なら現地の人たちか、

 その土地の行政が引き取るのが筋だ。

 だが、

 みんな・・・どこで生まれた子供か判断できず、

 なおかつ・・・

 あんな銀色の髪の赤ん坊を気味悪がってしまっていたからな・・・。」

 


父親は言葉を続ける。

 「当時、あの村に行政なんて立派なものもなかったし・・・。

 子供のいない私たちには天からの贈り物に見えた・・・。

 その後、髪の毛は黒ずんできて・・・

 今はグレーがかった色に落ち着いたから、

 そんなに目立ちもしないが・・・。」

 「私、あの子があんなふうに育ってしまったのは、つらいけど・・・、

 顔立ちとかは自慢したくなるくらいに成長してくれてると思うわ・・・。」

 「そうだな、

 優一の顔つきは現地の人間とは全く違う。

 ・・・どちらかというとヨーロッパ人に近いかもな・・・。

 日本人・・・ぽくもないとは言えるが、

 幸い、今の時代は、

 あんな顔つきで日本社会に溶け込んでも、

 そんな違和感ないもんな・・・。」

 「ごめんなさい、

 ・・・私、考えすぎてたみたい・・・、

 今回のことは、ただの偶然・・・よね?」

 「ああ、きっとそうだろう・・・。」

 





・・・三月末、

中学を卒業したばかりの男女が三人、

地元の道を歩いていた・・・。

特に何をするでもなく、

ただの暇つぶしに会っているのかもしれない。

 「わぁ、今年桜が早いねぇ?

 あそことか、もう咲き始めてるよっ!」

 「あっ、ホントだ!

 ねぇ? 恵子んちの近くの土手に桜なかった!?」

 「あるよぉ~、

 でも毎年、花見客が凄くて・・・、

 まぁ、ウチまではゴミとか捨てに来ないけどさぁ?」

 「じゃあやろうよ、場所取りよろしく!」

 「だぁめぇ!!

 あんなとこでやるんならウチでやるわよ!

 第一、家が近いッたって場所取りなんかやってられませんっ!!」

 「えっ? じゃあ加藤んちでやろうぜ?」

 「それもだぁめ!

 ウチからじゃ物干しからしか見えないの!」

 「じゃあ、どっちにしろ、無理じゃん!」

 

なお、登場人物は、

前回のお話に出た加藤恵子ちゃん。

あと今回からは、

そのお友達のメガネの子、山本依子ちゃん。

それと、

その山本ちゃんと「いい感じ」のスポーツ万能少年、

鮎川正樹くん。

三人とも晴れて同じ都立高校に入学が決まった。

・・・一応進路はそれぞれ、

その学力に応じて私立やらいろいろ併願していたが、

最終的に同じ学校を、

ということでめでたく(?)第一から第二志望の学校になったわけだ。


この日、特に何があるというわけでもなかったのだが、

たまたまこの三人は、

ここであるハプニングを目撃することとなる。

それも、普通ならすぐに忘れてしまうような出来事だが、

後から思い返してみると、

なかなかインパクトの強い出会いであったと言えるであろう。

 

 

 「きゃあああああっ!!」


何事っ!?

三人が、

突然聞こえた叫び声の方を向くと、

一人の中年女性の自転車が道を猛スピードで下っていた。

余りの突然の出来事で、

彼女たちには何がどうしたのか瞬時に判断できなかったが、

この自転車のブレーキワイヤーが突然、切れてしまったようだ。

中年女性はどうすればいいか分らずに、

坂道をどんどんスピードを増して下ってしまっている。


 「いやああああ、危ないっ!!

 どいてーぇ!!」

見ると、その先には、

三輪車に乗った子供がポツンと道の真ん中にいるではないか!?

加藤恵子達もここで、この後の起きるであろう恐ろしい事故を予想できたのだが、

もはや、この距離とスピードでは手も足も出ない。

固まったままその場に立ち尽くしていると、

今にも自転車と子供の三輪車がぶつかる直前っ!


・・・一つの影がその激突の瞬間、

交差した・・・!

 

 ガッシャーンッ!!


 「あああああっ!」

自転車と三輪車が激突した!

勢いあまって三輪車は吹っ飛び、

自転車は瞬間、宙を舞って転がった・・・。

乗っていた中年女性は、

その場にもんどり打って倒れこんでいる・・・。


ようやく加藤たちは、事態を飲み込み、

三人とも顔をあわせた後、

ダッシュして事故現場に向かった。

 「だ・・・大丈夫ですか!?」

 「う~ん、イタタタタ・・・

 あああ、あ、ああ?」


中年女性は顔と腕をすりむいている・・・。

意識はハッキリしてるようだが・・・。

そしてその女性はまず、

自分のケガより辺りを気にしている・・・。

そうだ・・・

三輪車の男の子はっ!?

 


次回、新キャラ登場です。


山本依子

「・・・えっ? あたしたちは?」


あ・・・。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ