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月の天使シリス編2 新たな同居人

新章です!


東京都K区・・・。

つい先日起きた、

外国人英会話教師の殺害事件、

そしてその犯人が首を斬られた死体で見つかった事・・・、

またそれとほぼ前後して、

辺り一帯に起きた大規模の停電事故・・・。

そんな気味の悪い事件は、

段々と人々の記憶から忘れ去られてゆきつつあった。

ちょうど中学三年生は高校受験もだいたい済み、

感動的な卒業式や、

新しい門出に胸をわくわくさせる・・・、

そんな時期を迎えていた。


あの「少年」斐山優一も、

何か思うことがあったのか、

かつての不良仲間との付き合いを疎遠にし始めていた。

一から説明するのは面倒くさいことこの上なかったが、

前回の殺人事件で、

「警察からヘンな疑いを持たれないようにする為に行動は控える」、

・・・という口実がうまく利用された。

また、もともと彼の不良仲間は、

ほとんどが就職組か専門学校に流れたため、

斐山優一と同じような進路に進む者もいなかったのである。

 

・・・実際、斐山優一も、

偏差値が高い都立学校を選んだのは、

旧友との縁を切るつもりが最初からあったのかもしれない。

元々、仲間だとも思っていない。

自分もこのまま、

裏社会で正式にデビューする道も考えたが、

もっと刺激的で楽しい生き方も探してみたかったのだ。


さて、もはや授業もほとんど終わり、

優一もこの日は早めに家に帰ることにした。

別に家に帰っても特にやることもないのだが、「縁を切る」と決めた連中と、今更つるむ気も完全に失せていたからには仕方がない。


少年斐山優一は、

自宅の庭に止めてある黒塗りの高級車に目を留めた。

 誰か来てるのか・・・?


彼の親は大学教授だ・・・。

ということは、客は同じような偉そうクラスの年寄りだろうか?


玄関のドアを黙って開けると、

目の前に見慣れぬ二足の革靴が揃えてある。

「臭い匂い」をなるべく嗅がないように、

優一は足早に二階の自室へと向かう。

 

階段の手前で応接室に一瞬、目をやると、

ホントに偉そうな中年男性が二名、

談笑してるのがガラス戸の隙間から見えた・・・。

 「父親」も気を使ってるようだな・・・。


優一の興味はそこで途切れた。

自分の部屋でとっとと服を着替えて、音楽でも聴く。

とりあえずは・・・、

と思っていたのだが、

なんとはなしに、優一は階下の声に耳を澄ませ始めていた・・・。

途中から気になり始めたのである・・・。


なお・・・彼の感覚機能・・・

五感はやたらと鋭い・・・。

目も耳も鼻も・・・。


 「・・・ハッハッハ!

 それで、どうだね、斐山教授?

 是非ぃ、

 ウンと言っていただけないだろうか?」

 

 「いえいえ・・・!

 あ、あの、ですね、

 確かに私も家内も・・・

 若い頃その地域に足を運んだ事はありますし、

 この家の二階には空いてる部屋もあるんですが・・・、

 え・・・と、今度のお話の子は・・・

 女性、なのでしょう!?

 ウチには年頃の息子がおるんです・・・、

 何か起きたら・・・それこそ大問題に・・・!?」

 「なに、

 その時はその時だよ。」

 「そ、そんな責任持てませんよ・・・!」

 「んー、実はぁ、斐山教授・・・、

 もちろん、そんなことは私だって先方には説明してるさ、

 ・・・しかしね、

 向こうはそういった日本の文化面や社会道徳面なんかも、

 併せて体験したいんだそうだ。

 まぁ、その子も日本語はおろか、

 護身術も身につけてるそうだから、

 そんじょそこらの不良ごときには相手にならないそうだよ!?」



・・・どうやら誰かがこの家にやってくるらしい・・・。

しかしそうは言われても、

父親が「はい、そうですか」と言えるわけもない。

自分の息子が不埒なマネを犯しますよ、

とも言えないし、

もちろん、その来客の身の安全も保障できるはずもない。


この日、そんな時間もかけずに二人の来客者は帰っていったが、

斐山家に持ってこられた頼み事は、

一度留保されることになったようだ。

もっとも、話の流れからすると、

斐山教授が拒否できる雰囲気でもなさそうだ・・・。


父親はしばらく考え込んでから、

二階へ上がり、息子の部屋をノックした。

 コンコン


優一は答えない・・・。

 「・・・優一、帰っているんだろ?

 開けるぞ・・・。」

 

部屋の扉が開けられた後、

優一は一瞬だけ父親を見上げたが、

何の興味も示さずベッドで読書を続けている。

父親はしばらく無言で話あぐねていたが、

意を決して息子に話しかけた・・・。

 「優一・・・

 そのままでいいから聞きなさい・・・。」

 「・・・。」

 「さっき来てた人たちは文科省の人たちで、

 父さんが昔世話になった人たちだ・・・。」

 「・・・。」

 「・・・それで、まぁそれはどうでもいいんだが、

 私たちに頼みごとをしてったんだ・・・。」


そこで初めて優一が聞き返す。

 「何て?」

 「今年の四月から、

 留学生を一人、この家で面倒を見てほしい、ってことでな。

 その留学生は、

 これからお前が通う向山高校に、

 一年間留学が決まってるんだ・・・。」

 「ハ? オレと同じ学校ぉ?

 一ねぇん!?」

 「・・・ああ、学年も一緒だ・・・。

 向こうに私の書斎があるだろ?

 そこを潰せば、

 まぁ部屋は用意できるんだが・・・。」

 

 「はぁん、いーんじゃーん?

 この家はアンタの家だし、好きにすればぁ・・・。」

 「そうか・・・、それでだな・・・、

 問題はその子・・・うん、女の子なんだそうだ・・・。」

 「プッ・・・、何考えてんだよ、オヤジの知り合い?

 危機管理能力ゼロか・・・?」

 「優一・・・!

 こ、これには訳があるんだ!

 その子は中国でも奥地の・・・

 それこそロシアとの国境付近の未開地から来るんだ!

 当然、風俗とか習慣とか日本とは全く異なる!

 だが・・・私と母さんは、

 昔、フィールドワークでその地方に入ったことがあるんだ・・・!」


それまで、

ふざけ半分で聞いていた優一の態度に変化が現われる・・・。

 「オヤジと・・・オフクロの行った事がある所・・・?」

 「い、いや、実際その子の村は、

 私たちは入った事はない所だ、

 当時その地域に外国人が立ち入ることは禁止されていたから・・・。

 だけど、私たちがフィールドワークで訪れた村は、

 こんどやって来る女の子の村と、

 山一つ分ぐらいの距離しかない。」

 

優一はそこで会話するのをやめた・・・。

外見上は、

興味もなさそうに雑誌を読んでいる・・・。

しかし・・・彼はこの話に何か思い至る点があるようだ・・・。

しばらく父親も、

優一の口が開くのを待っていたが、

埒が開かないので話を進めた・・・。

 「それでな、

 まだこの話は決定ではないんだが・・・、

 もし、ウチで受け入れることになったらだな、

 ・・・わかるだろ?

 決してその子に不快な思いをさせないようにだな・・・。」

 「フッフッフフ・・・。」

話の途中で、優一は笑い出した。

親の立場は理解できるが、

その親の心配事を想像したら、

本気で笑えると思ったのだ。

 


なお、説明不要かとは思いますが、

メリーさんシリーズに出てきた「彼」と、

斐山優一は別人格ですので、


喋り方とか性格は異なります。

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