月の天使シリス編 いつもの日常
プロローグは今日で終了です。
物語中表示できない漢字がありますが、
羅 目+侯 星 (らごうせい)と読みます。
そして、
斐山優一はスクーターを停め、
近くの河川敷で草むらの上に寝っ転がっていた・・・。
動物達の咆哮も、
町並みの停電も、
分りきっていたことのように、
大して気にも留めず・・・。
彼の意識は、
たった一つのことのみに向けられていた・・・。
雲の切れ間から時々覗く満月・・・。
満月だって!?
あれが!?
それは、
斐山優一が、子供の頃から幾度となく出くわしていたもの・・・。
『それ』がやってくる時はいつもそうだ・・・!
どういうわけか、
自分にしか認識できない正体不明の光の塊・・・。
大規模な停電・・・、
動物達の異常行動・・・。
そして記憶の欠落・・・。
自分が自分でなくなるかのような、
どうしようもない崩壊感・・・。
そして・・・
時々日常生活の中に起きる、理解できない光景のフラッシュバック・・・!
『やつら』はなんなんだ!?
得体の知れない生き物が、
寄ってたかって自分を取り囲むおぞましい光景。
狭い部屋・・・
眩しすぎる光・・・。
自分と大して変わらない身長でありながら、
異常に肥大した頭部と眼球を持つ生き物・・・。
『やつら』がまたやってきたのだ!
・・・今に自分は彼らに連れ去られていくだろう・・・、
いつものことだ。
そしてきっと、
気がついた時には、
自分の部屋で、何も起きなかったかのように朝を迎えるのだ。
誰も、気がつかない、
誰も、気にも留めない。
オレは、この後、どうなるんだ?
『やつら』はオレをどうしようというんだ?
オレのカラダは、
『やつら』に何をされているんだ?
オレは・・・オレは・・・オレは本当に人間なのか!?
誰か・・・誰か答えてくれ、
誰かオレを助けてくれ・・・!
誰か・・・ 誰か
誰 か ・・・
その光景は、
誰にも気づかれず、誰にも見られず、
誰にも認識されず行われた。
雲の切れ間から、
人間の肉眼には不可知の光が降り注ぎ、
河川敷にいた、
一人の少年の体を取り囲んでいた。
すると、
抵抗すら出来ない少年の体は、
ゆっくりと宙に舞い、
まるで定められた自然な現象であるかのように、
上空へ・・・、
雲の隙間へと呑み込まれていったのだ・・・。
しばらくすると、
街の停電は復旧し始め、
動物達も大人しくなった・・・。
斐山家では、この晩、
一人息子は帰ってこなかったが、
この家族にしてみればいつものことで、
とりたてて騒ぐことのものでもない。
いつの間にか、家に帰ってきて、
明日の朝は、また、
黙って学校に行ってしまうのだろう。
いつもと同じだ・・・。
「少年」は夢を見ていた。
「やつら」が見せている光景ではない。
それとは、また別の・・・。
それだけは分る。
「人間」の誰かが、
自分にメッセージを送っているのだ・・・。
これも昔から、
いや、
自分だけを対象にしたものではないのかもしれない。
ラジオの放送局のように、
世界に向けて発信されたものを、
自分が受け取っているだけなのかもしれない。
まだ、
「少年」にはそれを判別する力はない・・・。
彼は「まだ」・・・
「人間」なのだから・・・。
「蠢く九匹の蛇が世界を蹂躙する・・・
その怪物に立ち向かう狼・鷹・竜・そして鬼または巨人、
四人の使徒・・・。
そう呼ばれる複数の男女がうっすらと視える・・・。
いや、
その争いはただの序章・・・。
この地に現れる二人の天使、
彼らの織り成す行動が、
この大地の命運を決する・・・、
甦る羅?星の天使
舞い降りる月の天使・・・
大地は血と屍で溢れかえって 」
天使・・・
人間の赤ん坊に精神を潜らせ、
その人間の意識の奥底で、
ゆっくりと成長を遂げる・・・。
まだ、彼の精神は不安定で、
能力も開花してはいない・・・。
ただ、その隠された魂は、
人間としての顕在意識や能力に、
時々影響を与えてしまう・・・。
故に、こうして時々、
監視したり、時には外科的な治験を繰り返さなければならないが、
全てが順調だ・・・。
あと、数年後には、
彼、斐山優一も目覚めるに違いない・・・。
後に、
「少年」として語られることになる、
神々の使いとして・・・。
(月の天使シリス編~プロローグ 終了)
このまま優一の物語がしばらく続きます。