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月の天使シリス編 去り行くメリー

脱字発見したのでちょい修正。

 

・・・一方、

斐山優一や少女、加藤恵子の行動を、

はるかマンションの屋上から見下ろす一つの影があった。

銀色の髪を月明かりに反射させ、

アラベスク文様の鎌を携える一つの人形、

レディ メリー・・・。


 もう、この地に留まる必要はない・・・。

 先ほど自分を追っかけてきた少年も、

 これ以上、何もできないだろう。

 こちらから何かするつもりもない。


だが・・・、レディ メリーの・・・

その意識体百合子には、

一つの違和感がぬぐえないままでいた。

  

「彼女」は考える。


 あの少年は何者なのだろう?

 この人形の身に、

 抵抗したり攻撃しようとする者は過去にもいたが、

 その動きを追って来れる者など・・・、

 いや、そんなことではない、

 あの少年には、

 何よりも「恐怖」がなかったのだ。

 その他の感情も・・・

 心なしか普通の人間に比べて薄い気がするし・・・。

 かといって、

 リーリトのような特別な人間種のわけもない。


そこまで考えて、

「彼女」は思考を中断した。

流れる髪をたなびかせ、

首を上空へと向ける。

 

 何かが変だ・・・。

 大気の状態がおかしい・・・。

 気圧とか風の問題ではない・・・。

 この身に集まる人間達の感情に、

 異常があるわけでもない。

 強いて言えば、

 この地に生きる生命達の神経が、

 やけに過敏になっていることは理解できる。

 でもその原因は?


人形の身になった百合子には、

そこから先の判断は不可能だった・・・。

人間の身のままであったなら、

恐らくその異常を「嫌悪」と表現したのかもしれない。

いや、いずれにしても今のままでは、

この夜空の異常を理解することなどできないであろう。

結局、「彼女」はそれ以上の思考を諦めて、

この地に来たときと同じように、再び夜空の闇に消えていった。

 


その頃、

斐山優一はムリヤリ自分のカラダを動かし、

既に死体となっている「石橋達也」のカラダから、

バイクのキーを抜き取っていた。


 メットは・・・ああ、あれは頭の方か。


メットはそばに落ちていた。

もう加藤恵子は、

公園の入り口に停めてあるバイクを見つけているだろう。

別に、彼女にバイクを見つけてもらう必要など全くないのだが、

彼女に死体を見せずにキーを手に入れるには、

一度彼女を遠ざける必要があったに過ぎない。

加藤恵子が最初の位置に戻ろうとする前に、

珍しく斐山優一は大声で叫ぶ。

 「そこにいろ! 今行く!!」


加藤恵子はとりあえず、

言われたとおりにバイクの前で大人しく待っていた。

 ・・・迎えに行ってあげようと思ったのに・・・。


街灯が、

ゆっくりと足を引きずり近づいてくる斐山優一の姿を浮かび上がらせた時、

ようやく加藤恵子は駆け足で優一のそばに来る。

 

 

 「ま、まさかバイクで来たの?」

 「オレのじゃない・・・。」

 「こ、これで帰る気?

 ・・・確かに歩いて帰るよりかはいいけど・・・。」


斐山優一は、

その問いに答えるのは馬鹿馬鹿しかったので、

話題を変えつつ、彼女に質問し返した。

 「おまえ・・・オレが怖くないのか?」


そんなわけあるもんか、

怖くないわけがない・・・。

 「こ・・・怖いわよ!

 色々悪いことしてるんでしょ!?

 でも、だ、黙ってたら余計怖いじゃない!」


思わず斐山優一の口から笑みが漏れた。

 こいつはネジが一本、緩いらしい。

 だが、たまにはそういうのも悪くはないか・・・。

 「送ってく・・・後ろ乗れ。」

 「えっ!?」

 「世話になったからな、礼代わりだ・・・。」

 「そっ、そんな、

 いいよぉ、大したことしてないし、

 だ、第一、これ違反でしかも泥棒じゃ・・・!?」

 

 

 「もう、このスクーターの持ち主はいない・・・、

 『あの人形』に殺された。

 だから気にすることはない。」

 「えええええっ!?

 ちょ、ちょっとそそそそそれれれれっ!?」

 「あのな・・・、何度も言わせるな・・・!

 こんなところでうろうろしてたら危険なんだ・・・。

 お前は一刻も早く家に帰らないといけないんだ・・・。

 わからないのか!?」


そこまで言われて、ようやく加藤恵子は現状認識できた。

バイクのエンジンをかけ始めた優一の後ろに、

ためらいつつも、スペース的に余裕のあるシートに跨った。

 クラスのみんなにこんなとこ見られたら

 ・・・何て言い訳しよう?


優一はメットを加藤恵子に被らせた。

 「掴まれよ?」

 「あ・・・う、うん。」

優一は手馴れた動作でスクーターを走らせる。

 「お前の家は!?」

 「あ・・・、えと、河川整備場わかる!?

 あの裏手におっきなマンションあるでしょ!?

 その近く!!」

 「わかった!」

 


バイクでならそう大して時間はかからない。

恐らく3、4分もかかるまい。

すぐに家に着くと思うのだけど・・・。

加藤恵子はこの機会に、

理解不能の少年「斐山優一」に聞きたいことがたくさんあった。

 何で、勉強も運動もできるのに、

 学校ではそんなそぶりを全く見せないのか?

 何で、こんな小さな体なのに、

 不良たちに大きな顔をしていられるのだろう?

 そして、今言った・・・

 そばで人が殺されていたというのに・・・、

 気味の悪い人形(?)が夜の街を徘徊しているというのに・・・、

 どうしてこんなにも冷静でいられるのだろう?


バイクが信号待ちで止まった時、

ついに加藤恵子はその内の一つの質問を選んでみせた。

 「・・・ねぇ、斐山君・・・。」

 「あ?」

 「あなたって・・・怖いものってないの?

 これだけのことが起きて・・・。」

 


しばらく彼は黙っていたが、

信号が青になり、再びバイクを発進させてしばらくすると、

思い出したように、加藤恵子の問いに答えた。


 「そんなもんはない、

と言ってもいいが、一つだけある・・・。」

 「たった一つだけ? それは?」

 「お前にはわからない・・・。

 『それ』に比べれば、ヤクザも化け物も・・・

 死ぬことも怖くない・・・。」


当然、加藤恵子にはそこから先の疑問も生まれるのだが、

それ以上、聞いてはいけない気がした・・・。

それこそ・・・

自分には耐えられない恐怖が待ち構えている気がして・・・。


すぐに、スクーターは加藤恵子の家の近所にたどり着いた。

 「あっ、ここでいい、ここで下ろして!」

 


斐山優一が恐れるもの、

それはこの後に。


むうう、話をどこで区切るか悩むう。

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