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月の天使シリス編 空気を破る女

 

だが、

・・・攻撃の気配はない・・・。

五感をフルに働かせるが・・・。

何も襲ってこない。


あの化け物は・・・どこへ行ったんだ・・・?

近くには・・・女の通行人だけ・・・

 「きゃああああっ!?」


つい今しがたまで、

夢でも見ているかのような非現実的な光景を繰り広げていたが、

空気を切り裂く女性の悲鳴が斐山優一を現実世界に引き戻した。

 「・・・!」

 「うっ、上から落ちてきた・・・!?

 大丈夫ですかっ!?」


木々の葉が後から舞い降りてくる中、

少女は斐山優一のそばに駆け寄った。

 どうしよう? 救急車?

 どっから落ちてきたの、この人!?


一方、

優一は少女の事などどうでもいいかのように無視していたが、

今一度、あの人形・・・

メリーが追ってこないことを確認すると、

ヨロヨロと立ち上がろうと試みる・・・。

  骨には・・・異常はなさそうだ・・・。


 「だ、だいじょぶなんですか!?」

ようやく優一は、

この小うるさい少女に向き直った。

 「て・・・お前か?」


 「えっ・・・

 ・・・ひっひひっひ・・・斐山君!?」

・・・加藤恵子だ・・・。


 「っ痛ッ・・・

 なんで、お前がここにいる?」

 「な、なな、なんでって、

 ここ、私と飼ってる犬の散歩道だもの!?

 今は、お姉ちゃんが連れてるけど・・・、

 そんな事より大丈夫なの!?

 カラダは!?」

 「問題ない・・・、

 つッ(捻ったか!?)」

 「あ、え、と・・・(どうしよう?)

 えーと・・・上の道行って、タクシーつかまえてこよおか?」


オロオロしながら加藤恵子が後ろを振り向こうとした時、

優一がその腕をガッチリとはさんだ。

 「えっ?」

 「いい・・・。」

 「い、いいって、動けないんでしょ!?」

 「余計な真似をするな・・・!」


別にこの女の子は、特に勝気な性格という訳ではないのだが・・・、

恐らく、危機認識能力が足りない・・・のだろう。

あの不良どもも恐れる斐山優一に食って掛かった。

 「ひ、斐山君、意地張ってどーすんのよっ!

 ケガしてんでしょう!?

 あなたがどんなに強くったって、

 ケガしたら回復するまでムチャしちゃダメよ!」


その言葉は正論ではあるが、

優一にとってはどうでもいいことだ。

 「そうじゃない・・・、

 お前のためだ・・・。」

 「ええっ?」

 「お前も知ってるだろう?

 クラスに下らない噂がたってるの・・・。

 夜の街に現われる得体の知れない生き物・・・。」

 「ちょっ・・・いきなり、何言い出すの?」

 

 「いや、生き物じゃないかもな、

 明日、クラスのみんなに言ってやれよ・・・

 黒くて大きな刃物を振り回す、

 女性の姿をした動き回る人形、

 オレはいま、そいつを追っていたんだ・・・。

 それで、まだ、

 そいつはそこら辺にいるかもしれない。

 お前も襲われないとは限らないだろう?

 さっさと、家に帰るんだ。」


いきなりそんな事を言われても、

すぐにそのまま飲み込めるわけもない。

 「・・・なんでいつも、

 あなたは人をからかってばっかりな・・・ 」

そのまま加藤恵子は言葉を続けようとしたが、

言いかけて自分の当初の目的を思い出した。

 「・・・そうだ、

 私がさっき見たのって・・・。」

 「見た・・・!?」

 「あ、え、い、一瞬だったんだけど、

 空の月の影を遮るように・・・

 すぐに見えなくなっちゃったんだけど・・・。」

 「・・・それだな。」

 「えええええええっ!?」

 

 「明日、クラスのみんなに自慢できるじゃないか、

 だが、オレのことは言うなよ。

 オレは相手が女だろうと、

 クラスメイトだろうと容赦しない・・・。」

 「またそんな・・・!

 いいわよ? 好きにしたら!?

 その人形がどうしたか、知らないけど、

 この辺の動物達も興奮しまくってるのに!

 野良犬に襲われても知らないよ!」


加藤恵子は言いたい事だけ言って、

あとは斐山の反応次第で、

この場から立ち去ろうとするつもりだった。

 どうせ、こいつは似たような事を言うだけだろう、

 もういいや・・・!


だが、斐山優一は奇妙な態度を彼女に見せた・・・。


 「動物達が気が立ってる・・・?」

 「え? ええ、そうよ? 聞こえない?

 やけに多くの犬や猫が吠えているのを・・・?」

 

 

優一は視線を遠くに投げたかと思うと、

その耳で聞こえる様々な音を識別し始める・・・。

さらには何か思ったのか、

空を見上げ、

雲の切れ間から時折、姿を覗かす満月をも見上げていた・・・。


 「斐山君・・・?」

優一は月を見つめながら、

ぽつりと独り言を言う。

 「忘れていた・・・。

 何年ぶりか・・・『あいつら』・・・

 まだオレに用があるのか・・・!」


その言葉の意味は、

彼本人にしかわからない。

勿論、そばにいる加藤恵子とてわかるはずもない。

 

 「斐山君? もしもし?」

そこでようやく斐山は彼女に向き直り、何か言いたげな視線を送った。

 「な、なに?」

 「頼みが出来た・・・。」

 「ええっ? またいきなり・・・

 あ、で、でも私ができることなら・・・。」

 「ああ、ここから・・・

 向こうに大きめな街灯があるだろ?

 公園の一番端っこの入り口・・・。

 その辺りにバイク(石橋達也所有の)が停めてある筈なんだ、

 確か黄色いスクーターだったかな?

 ちょっと見てきてくれないか?」

 「それは全然構わないけど・・・

 まさか斐山君、免許もないのに・・・、

 あ、ううん、なんでもない!」


すぐに加藤恵子はその場を離れた。

途中、姉に一度、携帯で連絡を入れ、

先に家に戻ってもらうよう伝える。

公園では、

優一の指定した場所を探すのに、そんなに苦労はなかった。

言われたバイクは結構、簡単に見つかったからだ。

 


次回はメリーさんのその後。

「彼女」も、この夜空の異常に気付きます。

・・・いったい何が・・・


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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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