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月の天使シリス編 近づきつつある異常

名前表記修正しました。


斐山→斐山優一又は優一

に修正。


・・・この町には大きな川が南北に走っており、

その細い支流も随所に流れている。

中には、大きな通りや街道の真下に、

遊歩道と共に整備されている小川も多い。

人通りはまばらだが、

時々、犬を連れた散歩の人間、

ジョギングする人、

または自転車で行き交う人々などがいる。


女子中学生・・・加藤恵子は、

姉と一緒に犬の散歩に来ていた。

毎晩の日課である。

時折すれ違う、犬達のじゃれあいや、

常連の飼い主達とあいさつをする・・・、

いつもの日常であった。


ところがこの日は、

いつもと少し様相が変わっていた・・・。

加藤恵子本人も、

その姉も、気づくのは後になっての事なのだが、

自分たちが連れている犬の様子が変なのだ。

滅多に吠える犬ではないのだが、

今夜はやけに興奮している・・・。

それも何もないはずの空に向かって・・・。


雲が多く、

時折その隙間から、せいぜい満月がのぞくだけで、

何もおかしな空ではないのだが・・・。

 


そしてそれは、

自分達の飼い犬だけではない・・・、

時折すれ違う犬たちも同様の反応を見せている。


 「お姉ちゃん、なんだろね・・・?

 みんなやけに吠えてない・・・?」

 「まさか・・・大地震の前触れじゃ・・・。」

 「怖いこと言わないでよぉ!

 本気にしちゃうじゃぁん!?」

そう言いながら、

加藤恵子は飼い犬の視線を追って空を見上げた。

 また満月が雲に・・・


   !?


 なに・・・!?

  月の下を何かが通り過ぎた・・・。

 蝙蝠・・・?

いや、蝙蝠ならあんな一直線には飛ばない・・・。

第一大きさが違う。

 「お、お姉ちゃん、今の見た!?」

 

姉はふと上空を見上げたが、

すでにもう何も見えない・・・。

 「何?

 けいちゃん、どうしたの?」

 「あ・・・今、

 上を何か大きいものが飛んでったの・・・、

 お姉ちゃん見えなかった?」

 「大きなもの?

 カラスか何かじゃなくて?」

 「違う! もっとおッきい!!

 まるで・・・人みたいな・・・。」

 「ははぁん、

 さっきのお返しにあたしを怖がらせようとしてるなぁ?

 その手には乗んないゾ?」

 「ほんとだってばぁ!

 その木の陰から、

 あっちのおッきな家の屋根の方に飛び去ってったのよ!」


加藤恵子は、

せめて飼い犬のエルの反応を確かめようとしたが、

その犬エルは、

相変わらず虚空に向かって吠えるのみだ・・・。

今しがた自分が見たはずの黒い影よりも、

見えない何かの方が重要なのだろうか・・・?

この時、加藤恵子は、

いいようのない不安感に襲われていた。

 

いま、

自分に理解できない何かが起ころうとしている・・・。

そういえば・・・

クラスで今、話題になってる夜の闇の中に現われる黒い影・・・、

クラスメイトの賑やかな集団が噂しあっている謎の生き物・・・。

もしかして自分が今見たのは・・・ソレ・・・?


 「お姉ちゃん!」

思わず恵子は叫ぶ。

 「な、何よ、大声出して・・・?」

 「ちょっとエルお願い!

 あたし・・・見てくる!!」

言うが早いか、恵子は飼い犬のリードを姉に渡し、

先ほど黒い影が消えていった方の道を探し始めた。

 「恵ちゃん! ちょっと!?」

 「ごめん! すぐ戻るから!!」


この時、

恵子の心の中でも、まさかこのまま後を追って、

消えた影の正体を探し当てられるなどとは夢にも思っていなかった・・・。

何か手がかりだけでも見つけられれば・・・、

そのぐらいにしか思っていなかったのだ。

それが・・・

あんな事になるなんて・・・。

 




さて・・・、斐山優一はその頃、

待ち合わせの公園の近くに来ていた。

当の相手、

石橋達也はこの公園のどこかにいる。

入り口には、

見たことのある黄色いスクーターも停まっている・・・、

石橋達也のものだ。

細かい場所を指定しなかったのは、

万一にも警察などの職質から逃れるために、

待ち合わせを一箇所に固定するべきではない、

と考えていたからだ。

勿論、もう携帯電話でのやりとりもすべきではない。

足がつくのは避けなければならない。


斐山優一は、

「この男との全ての関係」を断ち切るつもりでいた。

先の電話では口当たりのよい事を言っていたが・・・、

まさか口封じを計画しているのだろうか・・・?

斐山優一がすでに手がけている犯罪は、

一つや二つではない。

地元有力ヤクザとの間に、

既にこの年齢で太いパイプと発言力を手にしている。

一体、斐山優一は、

この愚かな犯罪者をどうするつもりなのだろう・・・。

 

東京の下町界隈とは言え、

ここはかなりの広さの公園だ。

茂みや、照明の当たらない陰も多い。

果たして斐山優一は、

「石橋達也」を見つけられるのか・・・?


 いや、どこにいようが見つけることができる・・・。

 人目を避けたい人間が潜む場所など限られている。

 ・・・大体、あそこかあのあたり・・・。


斐山優一は鼻を鳴らす。

癖などではない・・・、

彼の鋭敏すぎる能力の一つだ・・・。

自意識過剰のナルシスト「石橋達也」は、

たいした稼ぎも出来ないくせに、

アクセサリーや香水へのこだわりはハンパない。

道端や公共の建物内でも、

鏡を見つけるたびに髪型を気にし始める。

この男の性格を考えれば、

例え人を一人殺した今でも、

自らの罪の意識よりも、

自分のファッションのほうが大事だと思っているはずだ。

それらを知っている優一は、

「石橋達也」の香水の残り香を見つけ、

この男の隠れている場所へと近づきつつあった・・・。

 


 

 「・・・この近くだな・・・、

 達也さぁん!?」

夜目も利く優一は、

既に石橋達也の影を捉えていた。

設備管理所の裏側に小さくうずくまっている人影・・・。

そわそわ落ち着きがない。

そして石橋達也は慌てた動作で首をあげる。

目が少し吊りあがったキツネ顔の男だ。

 「あ! す、すまねぇ!

 優一、来てくれたんだな!?」

 「・・・こうなった以上、

 もう達也さん・・・あなたに仕事はもう回せませんよ・・・、

 おわかりですか・・・?」

 「ンだよ、いきなり!

 ・・・ってしょーがねーか、

 ちっきしょう!

 ホントにむかつくぜぇ、あのクソ女ぁ!!

 あ・・・、それよりよ!

 妙な電話があったんだ!」


優一はやれやれと、

達也の話を聞き流していたが、

もしや、予想以上に早く警察の手が回ったのかと、

警戒しながら慎重に聞き直す。

 「妙な電話っていうと?」

 


 

 「ああ・・・!

 なんか、番号非通知でかかってきてよ、

 適当に出てみたら、

 知らねえ女の声で、

 『私メリー、いまこの町にいるの』って、

 そんで切れちまいやんの!」

 「・・・それだけ? イタ電?」

 「わっけわかんねーんだ、

 ・・・声はソソるカンジだけどよ!」


この男は全く悪びれる様子はない。

別に斐山優一も、

正義感などという陳腐なものは持っていないが、

こういう頭のイカれた自己中男など、

生かす価値もないとも思ってる。

 ・・・さてこいつをどうやって・・・


 チャラララァン♪

ちょうどそのタイミングで、

石橋達也の携帯が鳴る。

 「おっ? また非通知!

 さっきの女かな!?」


優一を無視して再び携帯に出る石橋・・・。

自分の置かれている状況を全く理解している気配がない。

・・・もっともすぐに、

そんな愚かしい楽天さは吹き飛ばされるであろう・・・。

また・・・あの「女性」からの電話だ。

 



あ、そうそう、

犬が脅えているのはメリーさんに対してではありません。

全く別の「何か」です。

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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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