第三十話 覚悟
1万PV突破しました!
皆さんありがとうございます!
昨日ぐちったパーティーキャッスル改造補助ツール、無事に以前壊れたノートパソコンの中のHDDに残ってました。
そっちもちょっとバタバタしましたが、
高校生麻衣の制服装着完了しました。
その時、
一瞬とはいえ、確実に体育館の時間は凍っていた。
誰もが圧倒的な威圧感を持つ、そのアラベスク文様の鎌から目を離す事が出来なかったのだ・・・!
・・・この鎌がここにあると言う事は、
お人形になってしまったママがそこにいるということ・・・!?
でもどうしてこの「死神の鎌」だけが・・・?
今のメリーでは戦うだけのエネルギーが溜まっていないって言うの?
・・・きっとあたし達を助けるための、
出来うる限りの行動がコレ・・・?
でもどうしてっ!?
この「鎌」を誰に使わせるつもりなの、ママ!?
あたし?
絵美里ちゃん? 麻里ちゃん?
確かにこの鎌の攻撃力なら、
ヤギ声の男なんか一たまりもないよっ、
リーチもその攻撃方法も、
きっとコイツには対応できないよ。
でも、あたしはすでにふらふらだよ!?
せっかく人間に戻ろうとしている絵美里ちゃんたちに、
今更これを見せてどうするの!?
・・・そして何よりも・・・
この「死神の鎌」は・・・
普通の人間には持てないんでしょ!?
その地にある、
負のエネルギーを吸収して力に変える「死神の鎌」の恐ろしい特性は、
感情や心のある人間の精神を破壊してしまう・・・!
二人分の精神力を持つ絵美里ちゃんたちなら?
感情がないはずのリーリトの力を持つあたしなら?
・・・ダメに決まってる!
そんな事ぐらいで、
この見ているだけで力を奪われそうになる鎌の魔力から逃れられる筈はない!
感情がない?
嘘だ!
もしそうなら、あの時のママの選択と行動は説明できない!
・・・リーリトにだって感情はある。
特にパパの子供でもあるあたしには・・・!
でも・・・でも、
もしリーリトになりきるなら!?
人間の因子を捨て、
感情を捨て、
男の人を愛する事もなく、
命を永らえ、
禁じられた能力を手に入れようとするのなら?
ママはあたしにそれを選べって言うの?
あたしに・・・
ママができなかったそれを選べって言うのっ!?
お願い! 答えてよママっ!!
・・・そして絵美里たちにも、
この鎌の耐え難い誘惑から逃れられるはずもなかった・・・。
150年の長きに亘って使い続けてきた愛用の武具・・・。
それは、
彼女たちのカラダの一部とさえ言って差し支えない・・・。
・・・これさえあれば全て解決する!
肉体は昔のカラダでないものの、
その重み・・・感触・・・敵を切り裂いた時の手ごたえ・・・、
全てが昨日の事の様に生々しく思い出される。
今や絵美里は、
かつて熱い恋に落ちた恋人が帰ってきたかのように、
地面を這いつくばりながら、
必死にその手を伸ばそうとする。
・・・心が壊れる?
それが何だっていうの?
そんなものは昔もなかったじゃない!
いま、あたしたちがすることは、
麻衣ちゃんを守ること!
あたしたちにぬくもりをくれた・・・
あの・・・
永遠に拡がる何もない白い世界から・・・
何も変わらない・・・
何も起きない無限の時間が流れる虚ろの世界から、
あたしたちを助けてくれたのは麻衣ちゃん・・・、
それにパパさん・・・!
百合子ママがいなくなって寂しいはずなのに、
愛しい人のカラダを・・・
あたしたちが占拠してしまったのに、
二人は一度もあたしたちに、
つらい言葉をかけなかった・・・!
・・・それどころか
本当の家族のように・・・
”マリー!
・・・引き返せないかもしれないけど・・・”
”ええ、エミリー!
その先は言わないで!
あたしたちはどこまでも一緒よ!”
今や絵美里と麻衣は、
磁石に吸い寄せられたかのように、
自分こそ先にと競って「死神の鎌」を掴もうとその手を伸ばす!
そして片方の手が、
その柄を掴もうとした時・・・
・・・こぉーら、お嬢ちゃんたち?
それに触れてはいかんぞぅ・・・
・・・
・・・今の声は!?
それは、彼女たちの頭に直接響く声だった・・・。
麻衣にとってはさして珍しい現象でもなかったが、
それができるのは、
同じリーリトであるおばあちゃんと百合子ママだけ・・・。
それ以外の人間の声など、
不意に聞こえるはずなどない・・・。
あ
・・・だが、今の声は・・・
聞き覚えのある・・・懐かしい・・・、
そう、麻里や絵美里にとっても、
絶対に間違うはずもないあの温かいお爺さんの声・・・!
レ ッ ス ル お 爺 ち ゃ ん !!
でもいったいどこから!?
彼女たちは、
まるで憑き物が落ちたかのように、
「死神の鎌」を掴む直前でその行動を止めていた。
だが、改めて現状を確認するに、
絶体絶命の事態は何も変わっていない。
ヤギ声の男も再び行動を開始し始めた。
すでに充血しきったこの男の眼球には、
もう絵美里しか映っていない。
「ンエエエエエ!
リジー・ボーデン トゥック アン アックス!
斧を手にしてお父様を
なんと40回も滅多打ち!
自分の犯した恐ろしさに
我に返ったリジー・ボーデン!
今度はお母様を41回滅多打ち!!」
男はマザーグースの一節を歌う、
・・・まるでその詩をなぞらえるかのように。
もはや絵美里にも麻衣にも、
その視界には凶悪な姿の男しか映っていない。
その為、男が腕を振り上げた時、
床に突き刺さった鎌を掴む、
鋼のような太い腕に気づく者は誰もいなかった・・・。
暗い体育館に黒い光が煌めく・・・
「ンエエエエエッ!?」
その光は麻衣にも絵美里にも見えたが、
何が起きたか分らない。
突然、ネットグルグル巻きの男の腕から大量の血が噴出したのだ!
なんで!?
何が起きたか確かめるために絵美里が顔を起こしたとき、
そこには長い四肢を持つ、
身の丈2メートルもあるのでは?
と思えるほどの、
粗く長い髪を有した大きな男が、
「死神の鎌」を手にしてそこに立っていた・・・!
一方、ここは学校の屋上・・・、
屋上には二メートルのほどのフェンスがあるが、
そのフェンスの上に一人の少年が座って眼下の体育館を見下ろしていた・・・。
「・・・フーン、
あのメリーとかいう人形が来るかと思って、
外からは誰でも入れるようにしといたけど・・・、
まさか『アイツ』直々においでになるとはね?」
・・・そして、そのフェンスの下には、
ワイシャツ姿の外人が立っている・・・。
スティーブ・・・。
「あ、あの、天使サマ、
エミリーさん、マリーさん?
・・・は無事なのでショウか?」
スティーブの質問に、
少年は子供っぽく首を傾ける。
「・・・ああ、安心していいんじゃないかな?
まだ覚醒してないようだけど、
あの『男』にまともにぶつかって、
勝てる人間なんかそうそういないよ、
そろそろケリ着くんじゃない?」
「オー、それは良かったです、
私は使命を果たし、みんな助かる・・・、
これで肩の荷が下りマシタ。」
「はは、君には、
僕が見透した携帯番号で彼女を誘い出してもらったり、
お水の女の子に近づいてもらったり、
いろいろやってもらったもんね?」
「勿体ナイお言葉です・・・、
それで大いなる計画の方は・・・。」
「ああ、支障はないよ、
・・・もっとも僕は監視するのが役目だから?
決定は上の方で決めるんだろうけどね・・・。」
「おお、恐ろシイ・・・、
果たして約束された地へ辿り着けるのは、
いったい、どれぐらいの人々なのでショウか?」
「スティーブ・・・それは君たち人間次第だよ・・・、
僕らの側につくか・・・、
それとも、一万年前と同じように・・・
『あの男』と同じ道を選ぶのか・・・。」
「私、頑張りマース、
一人でも多くの迷える子羊を救えるように・・・、
エミリーさんもメリーさんも・・・!」
「ああ、そうだね、
今後もよろしく頼むよ・・・。」
そして少年は再び視線を体育館に向ける・・・。
「さて、とりあえずは一件落着・・・かな?
だが、メリーどうする?
今後も同じことが起きないとは限らない・・・。
相手は既に死んでいるんだ、
メリー、君は死人と戦えるかい?
・・・全く人間の心ってヤツは・・・
ホント厄介な『贈り物』だよ、
・・・ねぇ、ヴォーダン・・・。」
「彼」が到着しました!
決着間もなくです。
・・・しかし次回は過去に場面が変わります。