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第二十二話 遭遇

 

二人は左側の特別教室・・・

いや、図書室から攻めてみることにした。

扉は開いている・・・。

だが、この部屋は身を隠すところが多い・・・。

本棚の陰・・・厚いカーテン・・・

貸し出しカウンター・・・。

二人は互いに身を寄せ合いながら辺りを捜索する。


いないようだ・・・。

だがところどころ、

本棚から本が抜き取られ、

床に無造作に散らかされている。


 「なに、これ?」

麻衣が光をこぼさないように、

ライトのスイッチを入れる。

 「あ・・・マザーグース・・・か。」


他には、

  !?


 「中世の魔女・・・ヨーロッパの疫病

 ・・・人柱の歴史・・・なんでこんなものまで・・・?」


二人は顔を見合わせたが、

さっぱり見当もつかない。

普段なら、本をいちいち棚に戻してやりたいが、今はそんな余裕もない。

やむなく本をその辺に置いて、彼女たちは図書室を出ることにした。

扉のところで後ろを振り返るが、

何も変化は・・・


・・・! 


何か動いた?

 いや・・・気のせいか・・・。


そのまま二人は階段の辺りまで戻ってきた。

上は屋上・・・。

まずはこのフロアーを先に通り抜け・・・


   ンェェェ・・・

!?


今の声は・・・前方から!?

暗くて分らないが、

確かにこの長い廊下の先から聞こえてきた!!

真正面からだ・・・!

思わず麻衣がライトのスイッチを入れなおして、

明かりをその声の方向に向ける・・・。

・・・そしてついに光の束は、

薄ら笑いを浮かべた小さな顔を浮かび上がらせたのだ!


 ンエエエエエ!!


その叫び声は、

疑いようもなく狂おしいまでの歓喜の感情を露わにしていた。

男は両手を万歳しながら、

まるでグリコのようなポーズで、

麻衣たちに向かって走り出したのだ!!

 


自然体の麻里は、

両手に持った定規を斜に構え、

接近する男を迎撃できる態勢をとった・・・!

  来るなら来てみなさいっ!!


・・・ところが、男が廊下の中ほどまで近づいてきたとき、

急に、麻里のカラダが異常反応を示したのだ!

頭からバケツの水をぶっ掛けられたようなショックが・・・!


 ・・・えっ!?

 ”きゃあああああああっ!?”

 ”エ、エミリーッ!?”


そう・・・、麻衣が照らしていたライトの光は、

向かってくる男のカラダのほぼ全身を収めていた。


・・・素っ裸の男を!


彼女たちは・・・

特に絵美里が悲惨なのだが、

見たくもないのに近づいてくる男の・・・

へその辺りで激しく動いているモノを目撃してしまったのである。

 ビタンビタン!


何の音かは説明しまい。

暗がりの廊下の先から、

大声を叫びながら一直線に、全裸の男が自分に向かって突っ込んでくる、

こんな現実に誰が平素のままでいられるだろう?

麻里と絵美里は、その性格の違い・・・

いや、前世での経験の差が、

こんな所でまずい形で出てしまったのだ。

 


これが麻里なら、

相手が汚いものをおっ立てて、

自分の前に現われたなら、

なんの躊躇いもなく切り刻む。

親の仇のように切り刻むったら切り刻む!


事実そのつもりでいた。

だが、生前、

赤い魔法使いこと変質者のバァルに性的虐待を受け続けた絵美里には、

再び目の当たりにした忌まわしい恐怖を、

克服などできようはずもなかったのだ。

現在、百合子のカラダを主導してるのは麻里なのだが、

あまりに強烈な絵美里の拒否反応は、

カラダを動かそうとする麻里の障害にしかならない。


 ”そんなっ!

 カラダを動かす事が出来な・・・!

 エミリーッ!?”


見る見るうちに男は接近する、

高らかな笑い声を響かせながら・・・!

麻衣も、百合子のカラダに何が起きたか、

その感知能力で察する事が出来たのだが、

どうすべきかもわからず、固まったまま・・・!

 いけない! ・・・このままじゃっ!?


すでに麻里は、発声すらおぼつかない。

ギリギリで彼女が下した決断は・・・

 ”麻衣ちゃん! 下がってッ!!”

 

 「ンェエエエエッ!! メリーさん!

 やっと会えたぁ!!

 僕だけのメリーさぁんっ!!」


目を血走らせた男が、

ついに麻里たちを射程圏内に捕らえた!

麻里はなんとか、

今来た道を戻るべく、必死の思いで体勢を変える。

 ”エミリー! 気をしっかり!!

 大丈夫! 戻るわよ!!”


声も満足に出せない今、

麻里が麻衣に自分の意志を伝えるには、

麻衣の感知能力で自分の心の声を読んでもらうしか手段はない。

 そして早く、エミリーを落ち着かせなきゃ・・・

 ほんの・・・ほんの一瞬でいいの・・・ッ!!


必死の思いで、麻里がカラダを反転させることに成功したとき、

たった一瞬だが、

ようやく絵美里の拒否反応が鎮まった。

・・・カラダが重い鎖から解き放たれた瞬間・・・。

 ・・・間に合うのッ!? 

 

姿が見えなくても、

けたたましい叫び声で位置はわかる・・・!

今の今まで慌てふためいていたはずの麻里が取るこれからの行動を・・・、

男は予測できるはずもない・・・!

そして殺傷能力は無いかもしれないが、

この武器なら、

かつて何百人となく切り刻んだ、

あの・・・「死神の鎌」と同様の使い方が出来る!

 

・・・麻里は反転した勢いから、

続けて足を一歩、後ろに戻し、

さらなる遠心力を加えて頭の背後にいるであろう、

見えない位置の男に向かって、思いっきり両手の定規を振り払った!!


 「きゃああっ!?」

麻里と男の交錯を、

目の当たりにする麻衣。


・・・彼女が見た光景は、

男の右手が麻里の頬をかすめて伸びている姿・・・、

なんと、右手の甲から金属の突起物が生えているではないか・・・。

そして一方、

麻里の両手は既に目的の動作を終え、

しゃがみこんでいる彼女の、

腰元の白いスカートの上に落ち着いていた・・・。


その光景は時間が凍りついているかのよう・・・。


男の叫びも止んでいる・・・。

だが、しばらくすると、

男の両のまなこは、震えながらだんだんと中央に寄っていき、

そして突然、

鼻の辺りから大量の血液をまるで滝のように溢れさせ始めたのだっ!

 「ん・・・んへぇえええ!

 い、いひゃぃぃいい!!

 の゛ぉして、の゛ぉしてぇぇぇッ!?」


 「・・・麻衣ちゃん! エミリー!?

 行くわよっ!!」

 



ヤギ声の男の人は「痛い~、どうしてぇ、どうしてぇぇぇぇ~?」と叫んでます。

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