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第二十一話 消耗

いよいよヤギ声男との対決間近です。

 

さて、このまま互いの顔を見続けていても仕方がない。

ようやく部屋を出ることにお互い同意したが、

その前に麻里が首を傾けて麻衣に質問した。

 「・・・ねぇ、麻衣ちゃん、

 あの男の子・・・いったい何者なの?

 レッスルお爺さんと似たような目的って・・・

 じゃあ、レッスルお爺さんの目的は?

 私には、お爺さんはただの魔法使いだと思ってた・・・。」


麻衣はしばらく麻里の顔を直視することが出来ず、下をうつむいていた。


 「麻衣ちゃん・・・?」

 「麻里ちゃん、ごめんなさい、

 そのことは・・・お祖母ちゃんや、

 ママの一族が伝えてきた重要な秘密なの・・・。」

麻里は悲しそうな顔をした後、

諦めて下を向いてしまった。

 「そう・・・なんだ、

 いいわ、わかった・・・。」


・・・沈んだ麻里の顔を見て思い直したのか、

や麻衣は真剣な表情で麻里に抱きついた・・・!

 「ううん、ごめんなさい! 話す!

 きっとお祖母ちゃんもママも分ってくれる・・・!

 でも、麻里ちゃん、これだけは・・・。

 あのね?

 麻里ちゃん・・・

 お爺ちゃんを悪い人だと思う?」


とんでもないという顔をして麻里が首を横に振る・・・。

 「麻里ちゃん、じゃあ・・・

 レッスルお爺ちゃんが悪魔の使いだとしても・・・?」

 「ええ!?

 ・・・そんなことが・・・嘘よ!!」

 「もちろん、そうよ!

 でもね、人間の長い歴史では・・・

 お爺ちゃんは『悪魔の使い』と言うことになってしまうの!」

 「じゃあ・・・

 その悪魔の使いと同じような存在だと言うあの男の子は・・・?」

 「確証はないけど・・・きっと、

 『神々の使い』・・・

 おばあちゃんなら知ってるかもしれないけど、

 今、この学校の中じゃ、

 外にいる人と交信できない・・・!

 それもあいつの能力のせいだと思うんだけど・・・。」

 「じゃあ、麻衣ちゃん、もしそうなら、

 お爺ちゃんとあの男の子は敵同士!?」


麻衣は頭を抱え込んだ・・・。

リーリトと言えども麻衣はまだ新米だ。

彼女たち一族の深い謎については麻衣は未だ知りうる立場ではない。

・・・第一、リーリトの伝える歴史が、

本当の真実の歴史とも限らないのだから・・・。

 


とにかくも二人は部屋を出ることにした。

麻里は懐中電灯を拾い上げ、

それを麻衣に手渡す・・・。

明かりはとりあえず消させておいて・・・。


二人は部屋を出て左右を見渡した・・・。

何の気配もないが、

先ほどの卵の割れた後の廊下が、

さらに汚れで酷くなっている・・・。

足跡らしきものも大量に残っていた。

もしかして、ヤツが何度もこの廊下を往復していたのだろうか?

これだけ廊下を汚すヤツが、

足音を消すことまで気を遣ってたとは思えない。

教室の中にいた時では、

麻衣がやってきた時の足音は聞こえたが・・・、

他に誰かが廊下を通った音など、

一切聞こえて来る事はなかったはずだ。

それもあの少年の仕業なのだろうか?

互いを感知できないように・・・。


だが、それは過ぎたこととして・・・、

次にどこへ向かえばいい?

かなりの時間が経っている筈、

一度確認した部屋にも、もう一度戻っているケースもあり得るだろう。

それでも・・・3階に上ってみるのがいいのかもしれない。

 

麻里は小声で話しかける。

 「麻衣ちゃん、

 透視を・・・お願いできる?」

 「う・・・うん・・・。」


麻衣の消極的な返事に麻里は違和感を感じた。

 「どうしたの? 何か問題でも・・・?」

 「あ・・・、じ、じつはさっきっから、

 立て続けに能力を使い続けたんで・・・

 ちょっと、集中力を切らしちゃって・・・

 でも大丈夫・・・やってみる!」


 「そうなの? じゃあ、ダメよ!

 見通しのいいところではやらなくていいわ!

 階段を昇る直前とか、部屋に入る前とか、

 瞬間的にサーチするだけなら?」

 「ごめんね、それでだいじょーぶ?

 麻里ちゃん・・・。」

 「上等よ。」


麻衣は、自宅での異様な気配の事も、

今になっては少年の仕業と考えていた。

一見、中立的な態度を見せていたが、

ひょっとして少年は、

ヤギ声の男と麻衣達の戦力を、均一化しようとしていたのではないだろうか?

ヤギ声の男に感知能力がなければ、

こういった探り合いでは麻衣たちが圧倒的な有利のはず。

だが、能力を制限されては、

楽観的に物事を見ることなど出来やしない・・・!

 


二人は、

廊下を特別教室方向に向かって歩いた。

相変わらず廊下は静かなままだ・・・。

麻里は前方を・・・

麻衣は後方・・・、

そして絵美里は感覚を左右天井に向けて移動していた。

途中、麻里が口を開く。

 「こういうときこそ、

 歌でも歌えばいいのに・・・!

 あ、私じゃなくて、あの気味の悪い男ね!」


さすが前世で、

「歌好きのマリー」とまで言われた彼女だが、

やっぱり一緒にはされたくないらしい。


 「あ、麻里ちゃん、

 そういえば歌についてはなんかわかったの?」


二人は足を止めて、

途中の女子トイレの手洗い場の陰に隠れた・・・。

念のためだ。


 「あ、うん、あいつが歌ってるのはナースリーライム・・・、

 マザーグースだってエミリーが言ってた。

 ・・・都合よく改変してるみたいだけど。

 麻衣ちゃん知ってる?」

 「マザーグース?

 キラキラ星とか、10人のインディアンとか?」

 「そう・・・らしいんだって。

 だからメリーさんの羊とか、

 割れた卵のお話とか、

 誰が殺したなんとかを・・・って歌ばっかりなのよ?」

 

 「・・・最後のって、

 ♪だぁーれが殺した、くくろびんってやつ?

 あれ、マザーグースなんだ?

 ママと昔、一緒に見たアニメの歌かと思ってた・・・。」


麻衣に話しても一向に議論は先に進まない。

リーリトとはいえ、

ただの中学生なんだから仕方がない。

やはり何か謎があるようなのだが・・・。

麻里は他にも、スティーブのことなども簡単にだが麻衣に伝え終えた。

二人はその後、再び歩き始め、

3階に続く階段の前までたどり着く。

麻衣は「やってみる」と一言いうと、目をつぶって透視を始めた。


そのうち麻里は気づいた・・・。

麻衣のその額から、

じわじわと汗がにじみ始めているのを。

そんな状態は初めて見る・・・。

やはり能力の限界に来ているのだろうか?

ようやく麻衣は、

ゆっくりと目を開いたが、足元がふらついている・・・。


 「麻衣ちゃん!?」

 「あ・・・だ、だいじょーぶ、

 一応、階下と3階の昇った付近を視たけど・・・誰もいないみたい・・・。」


捜索範囲もかなり狭まっているようだ・・・、

麻里の方でも、

これはかなりまずいのでは、と思い始めていた。

そして、この先、麻衣にも麻里にも、

完全に予想外の事態に襲われるのである・・・。

 



パパンがパン! あ、そーれ!!



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