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第二十話 少年3


 レッスルお爺ちゃん!?

 ・・・今、彼は何て言った?

 「生命活動を終了させた・・・」?

 死んだ・・・ってこと な の ・・・?


リーリトにとってもそれは重要な意味を持つが、

麻衣には個人的な繋がりの方が重要だ。

ショックで口を開く事もできない・・・。

そしてブレーリー・レッスルの、

もう一つの名前に気づいている麻里にとっても、それは信じられない事実だ・・・。

三年前の百合子とのカラダの交換のとき、

レッスルは麻里に、過去の自分の正体を明かさなかった・・・。


だが後日、愚者の騎士・日浦とその後の近況などを話し合った時、

麻里達はレッスルのもう一つの名前に気づいたのである。


 なんで、打ち明けてくれなかったの・・・

 ニコラお爺さん・・・。


あの時それを知っていたなら、

麻里はレッスルの胸元に泣き崩れていたであろう。

 もう一度、出会ったら、

 必ずお礼の言葉を言うと決めていたのに・・・。

 お父さんやお母さんがその後、どう暮らしたのか、

 フィーリップやトーマスが、

 どんな青年になったのか教えてもらおうと思っていたのに・・・!

  

 またきっと、

 どこかで会えると思っていた・・・

 なんで・・・! どうして!?


 「あなたが殺したのっ!?」

その教室を切り裂かんばかりの金切り声で「マリー」が叫んだ!!

あと一つ何かきっかけがあれば、

間違いなく彼女は少年に向かって飛び掛る・・・!

もちろん「ああ、そうだよ?」という肯定の言葉一つでも。


絵美里とて、

あの赤い魔法使いバァルから自分を救い出してくれたお爺ちゃんを覚えている。

麻里を止める理由など何一つない。


・・・ところが次の瞬間、

彼女たちは己が目を疑わざるを得ない光景に直面する。

少年の顔がうつむいたかと思うと、

突然、少年の体が液体のように溶けて崩れ始めたのだ!

その場の全員、何が起きたのか理解できずに身動き一つできない。

だが、それもつかの間、

すぐに崩れた体は、ビデオの逆再生のように元に戻り始める・・・!

しかし、その元に戻った姿は少年の体ではなく、

三年前の、あの小汚い片目の浮浪者、

ブレーリー・レッスルが、

少年にとってかわってその場に立っていたのだ・・・!

 

 

 「・・・ハッハッハーッ、

 早とちりはいかんぞぅ、マリー?」


レッスル爺さんは、

お決まりの「ニヤッ」とした笑みを浮かべていた・・・。

思わず、手に持っていた定規を床に落としてしまう麻里・・・。


 ・・・こんな・・・そんな? どうして?

 ニコラお爺さん!!


あと二、三秒で麻里は、

爺さんの下へ駆けつけたであろう・・・。

だが、目の前の爺さんは、

その寸前、悲しそうな表情をして首を左右に振った。

 「・・・残念だけど・・・。」


それはレッスル爺さんの声ではなかった。

まるで今見ている老人の姿は、ただの間違いだよとでも言わんばかりに、

元の少年の声色に戻ってしまったのだ。


固まる麻里・・・。


そして老人の姿のまま、少年の声で話は続く。

 「この爺さんは全てに満足して死んでいったよ・・・。

 僕も大勢の人間の死を見てきたけど・・・、

 彼ほど、幸せそうに死んでいった人間はなかなかいない。

 そして僕と出会ったことが、

 確かに彼の死のきっかけになったのかもしれないが、

 あいつ・・・、

 太古の支配者、大地の王、百獣の神、死者を統べる者・・・、

 あの忌まわしき反乱者と呼ばれるあいつが、復活の準備に入ったいま、

 その分身レッスルが本体に還って行くのは必然の事。

 彼にとっては、

 全て予定通りということなんだろうね・・・。」

 


そして、レッスルの姿は再び少年に戻る・・・。

 「彼、ブレーリー・レッスルは自ら命を捨てたんだ・・・。」


麻里も麻衣も、

彼の言葉を信じていいのかどうかわからない・・・。

突然、聞かされた衝撃の事実を受け入れる術がないのである。

少年の方も、涼しげな笑みを消していた・・・。

彼女たちの狼狽振りを見て、

少年は、あまり笑顔を見せるのは逆効果と判断したのだろう。

彼はしばらく無言のままだったが、

一回、廊下側を一瞥した後、話題を変えた。

 「・・・ショックなのは分るけど・・・、今の状況は分ってる?

 他に優先すべき事があるんじゃないのかい?」


そうだ・・・! ヤギ声の男!!

 「彼はまだ、校舎内で君たちを探しているよ。」

麻里は無言で床の定規を拾った後、

少年を再びにらみつける。

 「なら・・・あなたが何故、

 猟奇殺人犯を追っているのか、教えてくれます・・・!?」

 


少年は、

やれやれとでも言いたげな表情だ。

 「・・・面倒だからさっきの話と繋げるよ?

 僕がレッスル爺さんと似たような存在と言ったのは、

 爺さんと同じような使命を持っているからなんだ。

 人間のカラダを使いつつも、

 人間世界に影響を与えてはならない・・・。

 ただ、監視する事だけが使命・・・。

 違うのはお互いの立場だ。

 だから、ぼくはその辺りにいる異常殺戮者が誰を殺そうと気にもならないし、

 戦うつもりもない。

 気まぐれで個人を助ける事もあるかもしれないが、

 そんな義務感など持ってはいない。」


麻里はさらに聞き返す。

 「ただ見てるだけ?

 とてもそんな風には見えないわ?

 第一、見るだけだったらなんで私たちに・・・。」


話ながら、麻里は何かに気づきそうだった。

会話を聞いていた麻衣も同じ事を感じたらしい、

ここで麻衣が口を開く。

 「まさか・・・あなたが『監視』したいのは・・・

 本当は変質者の事じゃなく・・・。」

 



そこで少年の顔が明るく輝いた。

 「そう! 気づいてくれた!?

 君たちは、自分たちが与えられた役割を自覚しているかどうか知らないけど、

 あの、『太古の支配者』の息が掛かっている存在だろ?

 その君たちが、

 今度のことでどう動くのか、

 どんな結果になるのか、

 それが知りたいんだ!」


明るい少年の態度とは裏腹に、

今度は遠慮なく怒りまくる麻衣。

 「じゃあ何・・・!?

 全部あなたが仕組んだことなの!?」


少年は、途端に残念そうな顔をあからさまにする。

 「ああ! また・・・、違う違う。

 僕はこの学校を舞台として用意してあげただけだよ。

 彼だって、僕とは無関係、

 彼は彼なりの理由でメリーを追っている。

 僕が何もしなくても、

 いつか彼は君たちにたどり着くだろうし、

 逆に君たちだって、

 彼を追おうと思ったら、

 手がかりを得るのに時間が掛かるだろう?

 その間に、大勢の無関係な人が死ぬよ?

 そっちの方が良かった?」

 

 「何て身勝手な・・・!

 警察に教えれば済むことじゃない!!」

麻衣の主張は極めて常識的なものだ。

怒りながらも冷静さを保っているのは評価してあげてもいいだろう。


 「ああ、

 彼を捕まえるにはそれで十分だけどね、

 それじゃ、君らの活躍が見れないし、

 第一、彼を捕まえればそれで済むとでも?」

 「・・・どういう事!?」

 「そこから先は自分で調べるんだね、

 教えてあげる義務は僕にはないよ、

 何、麻衣、君の能力なら簡単だ。

 ヤツを捕まえて、サイコメトリーで彼の心の奥底を覗いてみればいい。

 ただ、これはサービスで忠告。

 あまり覗きすぎると、

 奥底に引きずりこまれるからね!?」

少年はそこで麻衣たちに背を向けた。

教室の前の出口から廊下へ出てゆこうとする。


 「待って!」

麻里が呼び止めると、

少年は無表情に後ろを振り向いた。

 「・・・なら、

 私たちがヤツを捕まえたら・・・ニコ・・・

 いえ、レッスルお爺さんの最後を教えて!」

 

その言葉の後に、数秒ほど間があったが、

次の瞬間、

少年は薄い笑みを浮かべていた。

 「ああ、いいよ、

 ・・・ただ、僕たちの会話には、

 『人間』に伝えてはならない部分もあるから、

 そこは省かせてもらうけどね、

 まぁ、ヤツを捕まえたご褒美として約束してあげるよ。

 それと、僕がここを出たら最後、

 この教室も再び彼に認知される。

 後は、麻衣・麻里・絵美里・・・

 君たちの力で頑張ってね、

 期待しているよ・・・。」


そして彼は出て行った・・・。

足音がだんだん遠ざかっていく・・・。

麻里と麻衣は顔を見合わせたが、

互いに言葉を出すことが出来ない。

お互いこれからどうすべきかは分っているのだが、

行動に出る踏ん切りがつかないのである。

・・・あれだけ衝撃的な話を連続で聞かされたら・・・。




一方、少年は、

既に人間の視覚からも認知できない存在となっていた。

実体はその空間に凛として存在しているにも関わらず・・・。

そして独り、

誰もいない空間へ向かって呟く。

 「さぁ、レディ メリー、

 やってくるかい?

 それとも・・・。」

 

ブレーリー・レッスルの最期のシーンは後程また。



☆ 時間あったのでおまけシーン追加

ストーリーの外側の光景です。


???

「ゆーいちさぁ~ん、どこですかぁ~?

わたし、ゆーいちさん怒らせるようなことしちゃったんですかぁ~?

お一人は危ないですよ~、

GPSだとこの辺にいらっしゃるんですよね~?

あれ? ここ中学校?

まさか今更中学校になんて~・・・?」

挿絵(By みてみん)


優一

「あ、スマホの電源切っとくの忘れてたw」

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