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第十九話 少年 2

ぶくま、ありがとんです!!


少年は、

しばらく彼女たちのやり取りを興味深く見守っているだけだったが、

戦意を以って自分に対峙する麻里を今一度見つめると、突然朗らかに笑い始めた。


 「何がおかしいのですか!?」

 「・・・アハハ、ごめんごめん、

 笑うのは失礼だよね?

 ただ、リーリトとやらの力もそこまでか・・・と思ってね、

 それに・・・麻衣・・・だっけ?

 『人間じゃない』なんてセリフは、

 僕の目の前にいるこの女性が、

 人形の姿をしている時に、

 まさに今、彼女たちがカラダを借りてるキミのお母さんに向かって言ったセリフじゃなかったっけ?」


麻里と麻衣に衝撃が走る・・・!

どうしてそんなことまで・・・?


 「・・・できれば、私たちの最初の質問に答えては貰えないかしら・・・!?」


麻里は凄みを増した。

この目の前にいる少年は只者ではない。

それこそ、この学校の教師やスティーブを襲った男よりも、

ある意味、さらに危険な存在かもしれないと思い始めたのだ。


 「オーケー、わかったよ、

 だが、僕が何者かは、まだ言えない。

 別にもったいぶってる訳じゃないよ、

 君たちに理解させるのは時間が掛かるだろうってだけの話さ。

 ただ誤解は解いておきたいな?

 まず、僕は君たちの敵じゃない・・・さっきも言ったよね?

 それから、

 麻衣は僕のことを『魂』がないなんて言ったけど、

 それも間違いだ。

 君たちが『魂』と定義するもの・・・

 それは僕にもちゃんと存在する。

 君が言ったように、

 『魂』がない知的生命体など確かに存在しないだろうからね、

 ただ、麻衣・・・

 君の能力では僕の『魂』を確認する事が出来ない・・・

 それだけの事なんだ・・・。」


超常感覚を有していない人間には、

どう理解すべき説明なのか、全く見等もつかないだろう。

話の次元は異なるが、

光のあるところで影のない人間など存在しない、

という話と同じぐらい、

あり得ない問題だと思ってくれればいいのかもしれない。

 

 

一方、ここまで自分の能力を見くびられた麻衣は、心中ただ事ではない。

別に誰に自慢する気もなかったが、

かつて、レッスルお爺ちゃんにも絶賛されたリーリトの能力が、

ここにきて不調なばかりか、

こんなどこの誰とも知らない男に一蹴されてしまったからだ。


 「・・・何よ!

 黙って聞いてれば言いたい放題!

 なんで初対面のあなたにそんなこと、

 言われなきゃならないの!!」


麻衣が怒るのも珍しい。

だが、先ほどの自宅での不思議な体験や、今度の事で、

身体的にも精神的にも疲労が重なっているのだ。

リーリトといえど、

感情の起伏が激しくなるのも仕方のないことである。

ここで、例のヤギ声の男に乱入されれば、

一歩も動けずにその凶刃の餌食になるかもしれない。

今は、少年の、

「この教室はヤツに認知できない」というセリフを信じるしかないだろう・・・。

 「ん~、確かに君が怒るのも判るけど・・・、

 君が入ってくるなり言った『人間じゃない』発言よりかは、

 失礼じゃないと思うけどなぁ・・・。」

 

・・・そう言えばそうだ。

はたからでも分るように麻衣の顔は紅くなっていく。

 「そ・・・それは、あの・・・ごめんなさい!

 で、でもどういうことなの!

 あなたはあたしの力を上回る能力者だとでもいうの!?」


興奮する麻衣を抑えようと、

麻里がゆっくり後ろに下がる。

こういうときは、

やはり彼女が一番、お姉さん役としてピッタリなのかもしれない。

少年はそんなことはどうでもいいようだが、

麻衣をなだめるように話しかける。

 「いやいや、能力の優劣の問題じゃないんだ。

 ・・・次元が違う、とでも言うのかな?

 君もここのところ、

 自分の能力が完全でないことは気づいているんだろう?」

 「あなた・・・まさか?」


 「一応これでも、君の友人を助けたりとか、

 友好的な態度を示したつもりなんだけどねぇ?」

 「・・・じゃあ、なつきちゃんの言ってた高校生ぐらいの人って・・・、

 あなた!?」

 「そういうことになるかな?」


そうなると全て合点がいく。

あの時も、

そして自宅から学校を覗こうとした時も、

そして今この時も、麻衣の透視能力には、

この少年の姿が全く映らないのである。

しかも彼本人だけに留まらず、その不覚視領域は、

時として触れた人間相手から、

彼が存在する建物一帯にまで拡大できるみたいなのである。

その反結界とでも言えばいいのか、その中に立ち入った今では、

再び透視能力は発揮できるようだが、

相変わらず少年本人は探知できない。

・・・つまり「魂」を確認できないのである。


少年は構わず話を続ける・・・。

 「もっと分りやすく言おうかな?

 一般的に人間が認知できるものは、

 ほんの狭い領域だけだ。

 例えるなら、地を這うナメクジが前方だけしか見ることが出来ないように・・・。

 ところがリーリトみたいな特殊な能力を持っている君みたいな子は・・・、

 そうだな?

 その首を動かし、

 前後左右360度認識できるとしよう。

 ・・・でも、ここまでなんだ。

 空高く飛んでいる鳥の姿は、絶対に捉える事が出来ない、

 例え、その目に影を映すことが出来たとしても・・・。」

 

 「あなたが・・・その鳥だとでもいうの?

 そんな・・・リーリトを上回る能力なんて・・・。」

少年は「やっぱりね」とでもいうように首を振る。

 「だからね、

 能力の優劣の問題じゃないんだ、

 『存在する次元』が違うんだよ・・・。

 あと、そうそう、

 僕は君たちと同じ人間だよ、少なくともこのカラダはね・・・。

 だから君たちにも僕の姿が目で見えるわけなんだけどね?」


麻衣は余計に混乱してきた。

そこで、二人のやり取りを聞いていた麻里が、会話に参入する。

 「では・・・あなたが何者かは知らないけど・・・、

 その高校生ぐらいの男の子に取り憑いている・・・ということなのかしら?」


顔を麻里の方に向けた少年は笑う。

 「ハハ、自分の境遇と重ね合わせたかい?

 でもね、僕は人間の母親から生まれたときからこのカラダに住み着いている。

 取り憑いている、なんて表現はされたくないな、

 ・・・そうだ、僕に似た境遇の人を知ってるよ、

 君たちもよぉく、ご存知の人だ。

 こないだ、フランスの貧民街で、

 その生命活動を終了させたみたいだけど・・・、

 名は・・・ブレーリー・レッスル・・・だったね?」

 



ブレーリー・レッスルは杖をつく片目のお爺ちゃんです。

レディ メリー第5章登場です。



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