表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/676

第十八話 少年

麻衣ちゃん「学校に着いたっ!」

 

ついに絵美里達の前に姿を現わした「少年」・・・。

だがもちろん、

彼女たちはその「少年」の正体を知らない。

懐中電灯の光を浴びせられても、

「少年」は眩しがるそぶりすら見せない。

ジーンズと白いフード付きトレーナーを着て、

興味深そうに絵美里を見ているだけである・・・。


 「あなた誰っ!?」

当然のことながら、

絵美里は「少年」を警戒する。

こんな時間にたった一人で、暗闇の教室へ・・・。

しかも見た感じは高校生ぐらいだ、

中学生という雰囲気ではない・・・。


 この男の子が例の連続殺人犯・・・?

そう思って、片手で定規を構えると、

ようやく「少年」は席を立ち上がって口を開いた。

 「ハハ、おどかしてゴメンよ?

 キミに害意は持ってないから安心していいよ?」


 ホッ・・・、安心できそう、かな?

この柔らかい声は、

あの甲高いヤギ声ではない。

少なくとも変質者ではないようだ・・・。

改めて少年の顔を見つめているうち、

麻里が絵美里を呼びかけた。

 ”エミリー、エミリー、そろそろいいでしょ?

 あたしと換わって!”

 ”・・・えっ、別にいいけど何で今・・・?”

 

その問いに答える間もなく、

百合子のカラダは麻里が主人格となった。

麻里は定規をおろしてから、

一度、服の胸元を正して少年に笑いかける。

・・・何かマリーの様子が変・・・。

 「あ、あの、あなたは?

 ここの学校の人?」


・・・少年はすぐには答えず、

教室の扉までゆっくり移動すると、

入り口にある電気のスイッチをつけた。

 あっ、そんなことをしたら「アイツ」にすぐ・・・!


 「・・・大丈夫だよ、

 今、この部屋はアイツに認識できちゃいないから。」


麻里も絵美里も、

その少年の言葉の意味をすぐには理解できない。

だが、この少年がどうやら、

この校舎の中の異常事態を理解している事だけは間違いないようだ。

麻里の近くまでやってきた少年、

緊張し気味の麻里に気を遣ったのか、

かすかな笑みが爽やかだ・・・。

彼は思い出したかのように・・・口を開く。

 「・・・ああ、僕かい?

 うんまあ・・・、この学校のモンじゃない。

 じゃあ、なんでここにいるかと言うと、

 キミ達とは別の理由で『ヤツ』を追っている・・・。」

 


麻里は改めて、

まるで西洋絵画から抜け出てきたような、

少年の優雅な顔つきに心を奪われる。

 ”・・・うわぁ・・・。”

 ”・・・ちょっと? マリー? マリーってば!?”


 ”ねぇねぇ? すっごぃかっこ良くない? エミリー、どう思う?”

 ”か、かっこいいかもしんないけど、

 マリー、い、いま、そんな事!?”


絵美里の指摘でようやく麻里は我に返った。

やっぱり・・・女の子だからねぇ・・・。


 「あ、あの、それで、あなたは今、

 ここで何が起こっているのかご存知なのです?」

 「うん、ま、大体は・・・ね。」

 「では、教えてください!

 一体、あの気持ち悪い声の男は何者なのですか!?」


少年は少し間をとってから、

とぼけた表情を顔に浮かべた。

 「・・・んー、身も蓋もない言い方すると、

 ただの頭のおかしくなった異常者だよ。

 そうなった原因は・・・

 興味をそそられるかもしれないけど、

 君たちはそこまで気をまわす必要はないと思うよ?」

 

ここで麻里は、

少年の言い回しの奇妙さに気づいた。

「君たち」・・・?

まさか絵美里とカラダを共有してるなんて、

初対面の人間がわかるはずも・・・。

 あっ スティーブのことかしら!?

 「えーと・・・、もしかしてそこの廊下で、

 外人の男の人を見ませんでした?

 暴漢に襲われたかもしれないんですけど・・・。」

 「ああ、彼なら助けといたよ、

 今は一階の保健室にいるはずだ。

 ただ、僕がそこを出てからは、

 彼が無事かどうかは保障しかねるけど。」

 「そうですかぁ、ありがとうございます、

 ・・・とりあえずは良かったぁ。」


・・・じゃあ、あとは、

彼からいくつか情報を聞きだして、

と・・・いろいろな情報を・・・ふふっ?


 ”もしもしぃ、まぁりぃ~・・・”

 ”わかってるわよ、エミリー!”


 「あのー、あなたはどういった方なんですか(できればまずお名前からぁ)?」

少年がその問いに口を開きかけた瞬間、

麻里たちの耳に、

早足で近づいてくる足音が聞こえ始めた。

まさかアイツ? いや・・・


  タッタッタッタッタ・・・!


 この足音は小柄な・・・女性?

  ガララッ!!

教室の扉を開けて現われたのは、

制服姿の麻衣だ! 

麻衣は息つくヒマもなく、

麻里に向かって大声で叫ぶ。

 「麻里ちゃん! その人から離れてっ!!

 その人・・・、人間じゃないっ!!」

 


 !?

麻里も絵美里も、

最初、麻衣が何を言っているのか理解できなかった。

「その人が危険」とでも言われれば、

素直に少年の近くから離れただろうが、

「人間じゃない」と言われても、

目の前のその姿は普通の・・・。


麻衣がここにやって来れたことには不思議はない。

聞こえていたのかどうか確信はなかったが、

さっきの電話で一応伝えていたし、

緊急事態なら、

麻衣の透視能力でこの場所も認知できるだろう、

それに今、この教室だけ明かりがついている。

麻里はそこまでは判断できた。

だが、

麻衣は何を感知してこんなことを言い出したのか?

彼が、

「リーリト」のような人間の亜種だとでも言うのだろうか?

麻里は、少年と麻衣の顔をキョロキョロと見比べる。

真剣な表情の麻衣とは対照的に、

少年の顔は柔らかい笑顔のままだ・・・。


 「麻里ちゃん、信じて!

 その人には・・・魂がない!

 カラダは人間なのかもしれないけど、

 魂がない人間なんて存在できるはずがないの!

 正体はわからないけど・・・

 とにかく危険なのよ!!」

 

ようやく麻里は、

麻衣の言いたいことがわかった。

確かにこんなことを言われて、

少年の表情に変化がないのはおかしい。

普通なら否定するか、

さもなくば「何を言ってるかわからない」、

とでもいうような対応をとるのではないだろうか?


・・・ようやく麻里は、

事態を深刻に受け止め始めた・・・。

懐中電灯はもう必要ない・・・。

麻里は机の上にゆっくりそれを置き・・・、

一、二歩下がりながら、

再び定規を両手で握りなおして、戦闘態勢をとる。


 ”マリー、大丈夫!?”

絵美里が心配するが、

麻里はもう心を切り替えている。

 ”大丈夫よ、エミリー、

 ・・・勿体無い気もするけど・・・。”

 ”(・・・ほんとにだいじょーぶ・・・?)” 


不安を隠せない絵美里を他所に、

麻里は、先ほどとはうって変わった態度で少年に詰問した。

 「・・・改めて聞きなおします・・・、

 あなたは何者なんです!?」

 




少年の詳細が徐々に明らかに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ