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第十二話 探索

 

学校の正門は閉められている。

横に2メートルほどのレール式の正門だ。

スティーブは門に手をかけ、

閂の仕組みと建物への入り口を確かめた。

絵美里はスティーブを横目に、

正門と同じ材質で出来てる隣のノブつきドアを見つけ、

いともあっけなく開けてしまった・・・。

 「あっ・・・、

 そっちは鍵が掛かってナイんですね?」

絵美里はヘヘンといった顔つきで中に入る。


まだ時間は夜の7時だ・・・、

職員も何人かいるのだろう。

教室らしき部分は、明かりがついてないが、

1階の端にあるやや広めの部屋は明るい。

たぶん職員室だ。

他にも正面の奥の小部屋・・・

守衛室? ・・・からも明かりが漏れている。

真っ直ぐ進んでいけば、

その部屋の前を通らざるを得ないようだ。


 「・・・見つかったら、追い出されマスかね?」

スティーブの一言に、絵美里は一瞬考え込む・・・、

いや、麻里と相談したのだ。

 ”エミリー、あたしが出るわ!”

瞬間、百合子のカラダは硬直し、

目を閉じたかと思うとあっというまに再び目を見開いた。

 

 

 「エ・・・エミリーさん?」

スティーブの呼びかけに、

彼女は反応して振り向く・・・。

そして、軽く首を傾けてイタズラっぽく笑った。

 「はじめまして、スティーブ、

 マリーと申します、よろしく。」

 「!?」

鳩が豆鉄砲食らったかのようなスティーブのマヌケ顔、

まぁ、無理もない。

顔やカラダつきは勿論変わらないが、

口調・表情・そしてカラダの動かし方全てに変化が現われたのだ。

 「あ・・・あ、あ、あの?」

 「昨日、エミリーが言ったでしょ?

 ・・・マリーと名乗る時もあるって。

 私がマリーよ。」


二重人格?

スティーブの常識感覚では、そう考えるしかないだろう、

実際、当たらずとも遠からずだ。

麻里は、硬直してるスティーブを無視し、

しゃなりと反転、入り口へ向かう。

 

ようやくスティーブは我に返った。

 「い、いけまセン、

 呼び止められますヨ!!」

小声で叫ぶ彼に、

麻里はスカートを揺らして振り返る。

暗がりでも白いスカートは目立つ。

 「実はね、スティーブ、

 私の『娘』がここの生徒なの、

 もし呼び止められたら、

 まだ子供が帰宅してないので、

 学校に残ってないか、心配で確かめに来た、

 って言えばいいのよ。

 あなたは私の友人ということにしてね?」

 「ハ、ハイ、それはかまわな・・・

 ええっ?

 娘さんがここの生徒・・・って

 エエエエエッ!? エミ・・・いや、マリーさん?

 娘さんがいらっしゃるンですかぁぁぁ!?

 しかも中学・・・、

 ええ~えええええ!?」

さぞショックなことだろう、

めげるなスティーブ。

 

 「マリーさん・・・あの、

 今、おいくつなんデスか・・・?」

麻里は眉をしかめた。

 「レディに年齢を尋ねるの・・・?」

 「ああ、ごめんなサイ、失礼しました・・・!」

実際、麻里も絵美里も、

年齢を聞かれたらどう答えていいかわからない。

百合子の正式な年齢は把握しているが、

彼女達の転生前の年齢は、

今の百合子よりも全然下である。

・・・なので、それを上回る百合子の実年齢を言うのもちょっと・・・。


ゆっくり、校舎の中に入る麻里達・・・。

守衛室以外は暗いままなので、

下駄箱付近ではお互いの顔もよく見えない。

脇の事務室兼受付のようなところはもう閉まっている。

守衛室は奥が当直室のようになっており、扉が開いていた。

 誰かいるかな?


・・・見たところ、誰もいない。

 



麻里は部屋の中に声をかけてみた。

 「あのー、」

静かだ・・・。

 「すみませーん、

 どなたかいらっしゃいませんかー?」

返事はない・・・、

麻里はスティーブの顔をのぞいた。

 「なんで誰もいないのかしら? 

 無用心じゃない?」

 「巡回? だとしたら早すぎじゃないデスかね?

 それか、単に洗面所か、職員室みたいなトコに用があったとか・・・?」


麻里は腕組みをして考える・・・。

首を傾けるのはクセだ。

 「・・・しょーがない、

 いないならいないでいいや、

 で、スティーブ、

 もし、途中で職員の人とバッタリ出会ったら、

 さっきの話でよろしくね?

 で、会話の合間を見て、

 例の奇妙な笑い声の件を聞いてみて?

 それが不安で、わざわざ学校までやってきた理由も強調できるし・・・。」

 

 「お、オーゥ、その通りデスねぇ?

 マリーさん、頭の回転がトテモ速いデス!!」

うふふっ!

麻里は褒められると単純に嬉しい。

微妙に歩き方がリズミカルになったようだ。

前を歩き始めた麻里に、

後ろからスティーブが声をかける。

 「それより、マリーさん、どうします?

 校舎内を我々だけで調べますか?

 それとも、明かりがついてる職員室で誰かに断ってから・・・?」

 「・・・だって、校舎内を調べるったって、

 まだ何の手がかりもないんでしょ?

 なら、誰かに聞いたほうが手っ取り早くない?

 あなたの言ってるコールガールさんは、

 何て名前の先生から聞いたの?」

 

 「さすがに名前まではー?

 デスが噂にくらい、なってまセンかね?」

使えないヤツめ、

だったら今日子にでも電話で聞いてみたらいいだろうに・・・、

教えてくれるかどうかはわからないが。


・・・二人は職員室へ向かって歩き出した。

といっても大した距離でもない、

20秒もかからないだろう。

・・・それにしても静かだ。

生徒はもう誰もいないんだろうが、

教師達すらもう残っていないのか?

途中、水道の音らしきものが、

すぐそばから聞こえてきたが、ここはトイレのようだ。

誰かが使ったと言うより、

定期的に流れる洗浄の水流だろう。

廊下は電気をつけておらず薄暗い。

火災報知器の赤いランプや天井の非常出口を示す電灯だけだ。

行く手の左側の部屋から明かりが漏れてくる。

建物の外側からも見えた職員室だ。

 


・・・ここには誰かいるだろう、

二人は、ゆっくりと中を覗いてみた・・・。

さすがに明るい。

今まで暗い廊下を歩いていたので余計にそれを感じる。

教師達の机が並び、

机の上には書類や教材が所狭しと散乱してる。

時々、きれいな机もある。


 「・・・やっぱり誰もいなぁい・・・。」

麻里はつまんなそうにぶーたれた。

実は麻里も絵美里も、

学校と言うものに通った事がないので、

こういった場所には憧れを抱いていた。

普段、街中を歩いていても、

学校を見るとついつい、

校庭や音楽の授業に注意をそそられてしまうのだ。

一方、スティーブの胸中では、

「何かがおかしいのではナイか?」

と思い始めていた・・・。

外側からは他に電気のついた場所は見えなかった・・・、

なのに何故、誰にも会わないのか?

・・・その時・・・。

 

次回、急展開。

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