第十一話 中学校へ
ペース配分間違えた!
今回の更新は短めです。
「スティーブ!」
ファミレスの店内で、
絵美里達はスティーブの姿を見つけた。
「あ、あ、エミリーさん、わざわざ済みまセン・・・。」
おどおどしながらスティーブは、
絵美里の姿を見て嬉しそうに微笑む・・・。
実年齢より若く見える百合子のカラダは、
若いスティーブにはさぞ魅力的に映るだろう。
・・・ちなみにスティーブは、
目の前の女性が、中学生の娘を持つ既婚の人妻だとは夢にも思っていない。
自分より少し年上の大学生かOLぐらいにしか思っていなかった。
百合子がまだこのカラダの主人だった頃は、
ジーンズか膝丈のタイトスカートがメインだったが、
二人がこのカラダに住むようになってからは、
主に透け感のある白のフレアースカートを好んではくようになっていた。
麻里が主導権を握っているときは、
トップスはカラダに吸い付くキャミやカーデガン・・・
いわゆるフィット&フレアーファッションが多い。
絵美里はゴテゴテした素材の粗いものや、
重ね着スタイルが好きなので、自然とカジュアル色傾向が強い。
そんなわけで、今は編地の厚いフレンチスリーブの下に、
袖口がゴムになってる七部袖のハイネックカットソーを着込んでる。
・・・そしてフリンジのついた重そうなストールをぐるぐる巻きつけた格好だ。
「・・・で、トンでもないことって何!?」
今回も絵美里は単刀直入に聞く。
まだ注文もとってないのに・・・。
実はスティーブは、
「今日もお綺麗デスね・・・!」と言おうと思っていたのだが、
完全にタイミングを外されてしまった・・・。
・・・このエロ外人め!
「じ、実は、私の友人のメリーさんが、
また恐ろしい情報を掴んできたのデス・・・!」
「例の、いやらしい女の人から!?」
「あ・・・や、まぁ、そんな・・・、
そ、それで、相手は中学校の先生だったそうデスが、
その人が宿直の番に、
校舎で背筋が凍るような笑い声が聞こえたと言うのデス・・・!」
それにしても・・・、
デリヘルメリー・今日子の相手は、
宣教師だったり警察官だったり教師だったり・・・、
この国のモラルはどうなっているのだろうか?
「・・・学校・・・?」
「ハイ、その先生の言うには、
守衛さんもその声を聞くとの事で、夜の間だけなんだそうデス・・・。
でも校舎を見回りに行っても、
いつも何も見つけられナイ・・・。
だから、学校の外から聞こえてくるのかもしれナイけど、
それだったら、実際、
警察に住人が通報したりスルだろうから、
やっぱり、学校の中なのかもしれナイと・・・。」
絵美里たちが中学校と聞けば、当然真っ先に麻衣の通っている学校を想起してしまう。
「・・・中学校ってどこの学校なの・・・?」
「この近くデス・・・、場所は調べて来ました。
私はこれから行ってみようと思うのデス・・・!」
「・・・まさか、麻衣ちゃんの・・・。」
「ハ? 今、なにかおっしゃいまシタ?」
「ううん、・・・こっちのこと!
それより場所を教えて!?
あたし達も行ってみる!!」
あたし達・・・。
絵美里の決断は、麻里と相談した上での事だった・・・。
麻衣の友人のなつきちゃんが襲われそうになったこと、
この町付近に事件が集まり出した事、
そして、未だに警察に見つからない事、
等をまとめて考えると、
学校みたいな所に潜んでいる可能性は高そうに思えたからだ。
・・・それに夜の間だけ、そこに潜んでいるならば、
麻衣が気づけないのも当然だ。
そして、麻里がしっかりしてるとは言っても、
あくまで絵美里に比べたらの話である。
自らが殺された事のある経験、
魔女フラウ・ガウデンとの邂逅、
レディ メリーとして数多くの修羅場をくぐり抜けた過去・・・、
それらが麻里から、
「恐怖」という感情を喪失させていたのも確かだった。
だが、今や彼女達にはレディ メリーのような武器も力もない・・・。
果たして、今の状態で、
その恐ろしい殺人鬼の待ち構える場所に行って、
二人・・・いや三人は無事に生きて帰れるのだろうか?
日が沈み、完全に夜空が暗くなった時、
彼女たちは目的の中学校の前にいた・・・。
「・・・この学校は、
やっぱり麻衣ちゃんの通ってる中学校・・・。」
麻里と絵美里は、閉ざされた学校の門から、
校庭と、そして三階建ての校舎を見上げてつぶやいた・・・。