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第十話 混線


反射的に麻衣は携帯に意識を落とす。


 ・・・着信・・・麻里ちゃんたちだ!?


だが、

今の状況で電話に出ることなど出来やしない・・・!


 っ!?

ところがだ、

意識を再び玄関に戻した時、

あの得体の知れない「何か」の気配が、

何の痕跡も残さずに消えてしまっていたのである。


 どこへ?


麻衣はしばらく、

周囲をすみずみまでスキャンしたが、

あの異様な気配はない。

やむなく麻衣は意識をカラダに戻し、警戒しつつ電話に出る。

 「もしもし!?」


だが、電話はノイズが酷い・・・

どこからかけているんだろう?

 『・・・(ザザ)衣ちゃ・・・めん・・・さい、

 あたし・・・絵美里、

 いまあな の・・・いるの・・・ぃーぶ・・・ がね? 』

 「もしもし・・・絵美里ちゃん?

 今どこ? 無事なの!?」

 『聞こ・・・る? (ザザザ・・・) けど・・・ 』

 「ダメ、聞こえない・・・!

 一度切ってメール送って・・・ 」


 『・・・ばんわ、・・・リト・・・。』


・・・え?

急に声が、声が違う?

何・・・誰!?

 

ノイズのせいで、

絵美里の言葉を聞き取る事が出来ない。

だが、携帯のスピーカーからは、

絵美里とは違う・・・

なんと、別の人間の声が聞こえてきたのだ・・・。

若そうだが落ち着いた男性の声・・・

携帯電話で混線なんてするのだろうか・・・?

絵美里の声は、

相変わらず途切れ途切れで聞こえるが、

彼女の方には男性の声は聞こえてないようだ、

互いの声を意識している気配はない・・・。


それよりも、

段々と男の声の方がはっきり聞こえてきた。

 『・・・二人はキミ 学校に るよ・・・、

 ある男 捜し ね、

 会ってみた・・・はないかい?

 彼は・・・端だが、メリー・・・

 興味深い・・・だ。』


 なに? この人!? 

麻衣はさっきから続く異常な事態のせいで、

気分が悪くなっていた・・・。

吐き気がする・・・。

それより、まるでこの男の人の言葉は、

自分たちがここ数日遭遇している異常事件の、

当事者だとでも言わんばかりの内容じゃあないか・・・?

 


・・・麻衣は一瞬、

意識が遠のいたような気がしたが、

いつの間にか電話が切れていたことに気づいた。

 ・・・今の電話の声は・・・、

 学校・・・?

 あたしが通ってる中学校の事・・・?


麻衣はためらっていた・・・。

今に至るまで、

リーリトの能力をむやみやたらに使った試しはない。

極力、その力に頼らないようにしていた。

・・・だが、ここのところ、

その使用頻度が極端に上がっていた。


 気分が悪くなったのはそのせい・・・?

 だけど、他に方法もない・・・。


意を決して麻衣は意識を学校に向ける・・・。

 やっぱりそうだ・・・!

 学校全体が透視できない・・・!


何かが麻衣の透視能力を干渉できないようにさせているのだ。

・・・範囲は信じられないほど広大だが、

それはおそらく、なつきちゃんが襲われたときと同様の物だろう。

 


今の電話の声は、あの気味の悪い不審者本人と言うわけではないのだろうか・・・?


 なつきちゃんは、あの時、

 かっこいいい高校生くらいのお兄さんに助けられたと言っていた・・・。

 ・・・高校生くらいの男の人・・・?

 さっきの電話の声も、

 それぐらいの年頃のようにも思えた。


家の外は完全に暗くなっている。

能力を使っているうちに、かなりの時間が経過していたようだ。

麻衣のカラダがダイニングの椅子に力なく沈み込む・・・。

やっぱり、能力を使いすぎているのだろうか・・・。


 くたびれた・・・。

 今、何時・・・?

 でも、・・・行かなきゃ・・・。

 麻里ちゃんや・・・

 絵美里ちゃんが危ない・・・。

 きっと今回は予知能力も働かないだろう・・・。

 でも、ママや、レッスルおじいちゃんにも、

 二人の事はよろしくと頼まれてるんだし・・・、

 あたしがなんとかしなくちゃ・・・!


麻衣はけだるいカラダを無理に立ち上がらせ、

勇気を振り絞って、

制服姿のまま自らが通う中学校へ向かった・・・!

 


一方、

麻里と絵美里の状況はどうなっているだろうか?

少し時間を遡って見てみたい・・・。

夕飯の食材や、日用品を買って帰ったところまでは、

麻衣の透視したとおりである。

彼女たちは、

紅茶を入れて夕飯の調理方法を二人仲良く検討していた。

そこに一本の電話が入ってきたのである。

それは例のエロ外人スティーブから・・・。

電話に出たのは絵美里だ。


 「はぁーい? スティーブ元気ぃ?」

 「あ・・・、すみまセン、エミリーさんですね、

 実はトンでもないことがわかったのデース・・・!」

 「・・・トンでもないこと?」

 「そぅデス、私は今、○○町に来ていマス、

 実はこの町にアイツが潜んでるみたいなのデス・・・!」

 「うっそぉ!!

 それってあたし達が住んでる町よ!?」

 「オーゥ!? 何て事!

 もし近くなら出られまセンか!?

 電話では詳しく話せないのデス・・・!」

 


さすがにそれは麻里&絵美里も一瞬渋ったが、

正義感の強い彼女たちは、

スティーブの誘いを受けることにした。

待ち合わせ場所を決め、電話を切る。


 麻衣ちゃんは、今、学校だから、

 あとで連絡をしておこう・・・。


二人は身支度を整え、街道沿いのファミレスへと向かった。

・・・スティーブはよくファミレスを使うらしい、

そんなことはどうでもいいのだけど・・・。


それより、落ち着いていれば、

いや、または現代社会に慣れていれば、

彼女たちは一つの不思議な事実に気づく事が出来ただろうか?

携帯にスティーブの連絡先を登録したのは彼女たちである。

だから、携帯に彼の名前が表示されるのは不思議はない・・・。


だが、

何故、スティーブが彼女達の電話番号を知っていたのか・・・。

二人は最後まで、

それに気づかなかった・・・。

 


昔はたまに電話で混線とかありましたよね。


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