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第八話 疑問と謎

この話書いた頃はまだ携帯電話全盛の頃です。



 

ステイーブはすっかり小さくなってしまった。

恥ずかしくて顔も上げられない・・・。

彼を軽蔑のまなざしで見つめるのは麻里も同様だが、

今は情報を得るのが先決なので、

この件はとりあえず棚上げしよう・・・。


 ”エミリー、エミリー? それより話を進めましょう?”

 ”オッケー、マリー!”


 「それで・・・!」

 「は、はい!」

 「その女の人はどうやって情報を手に入れたの?」

 「は、はい、彼女・・・メリーさんの相手をしたお客さんの中に、

 警察の人がいたそうデス・・・。

 タマタマなのか、捜査の一環なのかわかりまセンが、

 メリーさんを指名して、

 プレイの間にこの件の話が出たそうデス。

 一連の被害者の共通事項に、

 殺される時、携帯電話が通話中であることや、

 近隣住民が『メリーさん』という乾いた叫び声を聞いていることから、

 犯人が、

 メリーさんに異常な執着を持ってるのは間違いないそうなのデス・・・!」

 

 「・・・ひぇ・・・、

 でも被害者の人は『メリーさん』と何の関係もないんでしょ?」

 「・・・そのようデス・・・。」


てことは、犯人は本物のメリーさんに出会うまで、

犯行をやめないということなのだろうか?

そうこう考えているうちに、

スティーブは絵美里からも情報を聞き出したいようだ。

 「あ、あのー、

 そう言えばアナタのお名前ハァ・・・?」

 「あ、あたし? あたしはエミリー、

 時々、マリーとも名乗るわ。」

 「おぅ? え、エミリーさんで良いのデスよね・・・?

 それで、あなたのほうのメリーさんは、

 この事件に巻き込まれる危険はありそうデスか・・・?」

 「・・・わかんない・・・。

 でも、この事件は名前がメリーに関わらず、

 多くの人が殺されてるんだから、

 一刻も早く捕まえるべきよ!」

 「そ、そのとおりデシた!

 ただ・・・何か手がかりをと思って・・・!」

 「・・・昨日は、ウチの近所の中学生が襲われそうになってたし・・・。」


とりあえず絵美里は、昨日の出来事をスティーブに教えてやった・・・、

麻衣のことは勿論省いて・・・。

 

スティーブは、絵美里の話を熱心に聞いている。

彼も「一応」神に仕える身として、

このような事件を、

放って置くわけにはいかないと考えているのは本心からのようだ。

また絵美里にしても、

こういった猟奇殺人は、彼女の最も忌み嫌うものでもある。

・・・自分の前世を思い起こしてしまうからだ・・・。

本来ならこの手の話題を口にしたくもないのだ。

麻里の方は、

二人の会話を聞きながら、これからのことを考えていた・・・。


 犯人の本当の目的はナンなのだろう?

 そいつが狙う「メリー」とはレディのことなのだろうか?

 だとしたら、なぜ、この町に現われる?

 今現在はどうだか知らないが、

 レディ メリーとしてこの町近辺で暴れた記憶はない・・・。

 自分たちや、今の百合子以外のメリーを狙っているのか?

 なつきちゃんを襲いかけた人間と同一人物だとするなら、

 犯人は、人形メリーを追っているわけではなさそうだし・・・。

 しかし、犯人の手口はレディ メリーを髣髴とさせる。

 ・・・そして、犯人を捕まえようとする人間が増えるのは歓迎すべきなのだが、

 目の前の男に何ができるだろう?

 とりたてて強そうにも見えないし・・・。

 

そうこうしているうちに、

絵美里は夕飯の準備の時間である事を思い出した。

それを言うと、

スティーブは残念そうに、名刺を取り出した。

 「何かわかったら、こちらに連絡してくだサーイ、

 あ、そうそう、一つ言い忘れマシタ、

 私の友人のメリーさんが警察から聞いたことで、

 ある事件の隣の部屋の住人が、

 奇妙な叫び声を聞いたそうです・・・。」

 「叫び声・・・?」

 「はい・・・聞き様によっては、

 泣きながら歌ってるようにも聞こえたとか・・・。」

 「なんて?」


 「『だーれが殺した、この羊!

 それはメリーさん! メリーさんが殺した、この僕を!!』

 ・・・又聞きですから正確ではないかもしれまセンが・・・。」


絵美里は・・・いや、麻里も、

スティーブのセリフを、

どこかで聞いたことがあるようなフレーズに感じた・・・。

レディとは全く関係のない・・・

どこか別の場所で・・・、何度も何度も・・・。

二人は互いに記憶の底を覗こうとしたが、

明確な答えは得られなかった。

結局、彼女たちはこの件は留保しつつ静かに店を出る事にした。


後ろのテーブルに、

あの、不思議な「少年」が座っていた事など気づきもせずに・・・。

 





さて、・・・

当然と言うか当たり前の事だが、

出版社に勤める伊藤にも、

近隣で起きている連続殺人の話は耳にする事になった。

麻里、麻衣、絵美里の三人は相談して、

パパには「メリーさんが狙われている」ことを黙っておくことにした。

もしかしたら、伊藤独自の調査で「そこ」にたどり着いてしまうかもしれないが、

彼がそれに気づいたら、

またもや首を突っ込む事は間違いない。

日浦と連絡が取れない以上、

パパを危険にするわけには行かない!


・・・というわけで、

麻衣たち側からはこの件に触れないことにした。

どうせ、今、伊藤の出入りしてる部署は、

血生臭い事件を扱っている編集部ではない。

恐らく、彼が何も言ってこないと言う事は、

気づいていないと言う事なのだろう・・・。

あくまで伊藤の頭では、

「変質者による猟奇殺人」と考えているはずだ。

それを示す事になるのかどうかはわからないが、

伊藤は、麻衣と麻里&絵美里に携帯電話を買ってきた。

何かあったらいけないので緊急用としてだ。

 

これはこれで麻衣たちには嬉しいプレゼントだ。

教育上、麻衣にはまだ早いと伊藤は考えていたのだが、

そうも言っていられない。

伊藤は一番しっかりしている麻里に、

「使いすぎないように注意してあげてくれ。」

とは、言っといたが、

麻里自身うれしくて舞い上がっている。

・・・しばらくは3人でお互いを撮り合ったり、

着メロをいじったり、忙しいだろう。


 あああ、麻衣はなつきちゃんに電話かけ始めた・・・。

 果たしてこれで良かったのかな・・・?


伊藤は父親として、

自分の行動が正しいのか悩みまくる・・・。

百合子がいたら、なんて言うだろうか?


・・・密かに麻里は、

昼間もらったスティーブの連絡先を携帯に保存しておいた。

麻衣にも、あの青年の話は伝えてある。

不思議な叫び声の話については、

麻衣は「メリーさんの羊?」としか反応できなかった・・・。

その歌自体は、

麻里も絵美里も知っているのだが、

それだと、後のセリフが繋がらないのである。

いったい、変質者は何を求めているのだろうか・・・?


 復讐? 羊が?

 ・・・まさかね・・・。

 



・・・さて、父親である伊藤のほうは伊藤のほうで、

この時、面白いニュース扱っていた。

いや・・・、面白いというのは不謹慎だろうか。

今月に入ってすぐ、

府中市の製薬工場で爆発と火事が起き、

操業停止になる事故がおきた。

死者は幸運にも出なかった・・・。

負傷者は工場員・・・と言うか研究員らしきものが数名、そして警備員達だ。

出火は、就業していた人間が少ない夜中なので、

人的被害は少ないということだが、

警察の捜査状況から、

不審な点がいろいろ浮かび上がって来ていたのである。


・・・工場だけの筈が、何故、夜中に研究員がいたのか?

焼け跡から何十体もの、

無届の動物の焼死体が見つかった事・・・、

重傷の警備員達には、

殴打された傷跡や刃物によるもの、

また、夜中この火事の現場から、

二人組の男たちが去っていくのが目撃された事(そのうち一人は若い大男らしい)、

など、

怪しい情報がいくつも入っていたのだ。

 

・・・そして一番の不審な点は、

警察がその続報を流さなくなった事だった。

今までの怪しい情報は、

全て勘違いや出所の不明な情報だと結論付けられ、

それまでの捜査体制が180度転換してしまったのだった・・・。

伊藤の働いている編集部も、

その不自然な警察発表に対して、

チームを編成し真実を明らかにすべく、

行動を起こしていた。


・・・もっとも、結論から先に言ってしまえば、

彼らの努力は何の成果も得られなかった。

政府レベルで上層部から警察現場に圧力が掛かったらしい事、

製薬会社は、数年前に外資系企業に買収された企業で、

出資企業は他国で軍事産業にも手を染めている・・・、

記事に出来たのはそれぐらいであった。


その工場には地下があり、

表に出せないバイオロジカルな実験を行っているという可能性までには気づけたのだが、

想像の域を超えるだけの情報を、

手に入れることなどできやしなかった・・・。


・・・いずれにしろ、

この事故の真相がわかったところで、

いま、麻衣たちが気にかけている不審者の問題を解決できるわけでもない。

皆さんは、

この事件を忘れてもらっても構わない・・・。


ただ・・・

騎士団極東支部支部長、「愚者の騎士」日浦義純が日本を離れたのは、

この事件直後の事だと言うだけの話だ・・・。

 


府中市化学工場爆発の話は、


並行世界でとある主人公と日浦義純が遭遇するイベントです。

そちらの世界ではこの事件が起きた時点で、

その主人公のお姉さんは死んでません。



まあ、結果はどちらも同じことなのですが。

彼らがどんな運命を辿るかは後程物語内で説明いたします。

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