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崩壊への序曲

いよいよ黒十字団党首登場。


彼の登場シーンはPeter Gabrielの”Zaar”をB.G.Mにしていただけるとイメージあうかと。

 

・・・ここはインドのコルカタ・・・。

カーリーの実家はインドでも有数の資産家だ。

いくつもの別荘やビルを国内に持っており、

その内の一つを黒十字団の活動拠点の一つにしている。

もちろん合法的に正規の事業も展開しており、

一般企業にもオフィスや倉庫も提供している。

・・・セントメリー諸島の戦いから逃れ、

ローズたちは、

ヘリから船、セスナ機を乗り継いで、

カーリーの所有する別荘に招かれていた。


 「・・・それでメィリィ、

 何であそこで料理なんかしてたの?」

ローズはすっかり元の調子に戻っていた。

切り替えの早さも彼女の特徴だ。

 「んん~、

 あいつらを油断させるつもりもあったけど、

 なんだかんだで、

 あの島でみんなに料理振舞う機会なかった・・・、

 だから、戦闘終わったら、

 みんなにご馳走したかった・・・。」

 「そおだー、

 あたしもメィリィの料理食べるつもりだったのに!」

 

しかしその瞬間メィリィに力が入る! 

 「でもカーリー、

 ここで厨房使っていい、言ったね、

 今夜、ここでパーティやるよ!」

 「ほんと!?

 じゃあ、ラブゥや先生達と一緒に食べよう!」


二人は、ふかふかの絨毯が敷き詰められただだっぴろい客間で会話をしていた。

向こうにはトラの剥製もある。

ここがかつてのサルタンの居城だと言われても、

なんの疑問も湧かないだろう、

それぐらい豪勢な部屋だ。

そうこうしているうちにラブゥがやってきた。

 「・・・あいかわらず呑気な会話してるね・・・?」


別にラブゥに悪意があるわけもないが、

ローズに皮肉や嫌味など通じない。

 「あ、ラブゥ、中華好き?

 メィリィがおいしいもん作ってくれるって!」


しばらくラブゥはそのまま考え込んでいた。

いや、彼女もけして食事は嫌いじゃない。

素直にウンと言えないだけだ。

 「・・・あー、中華料理か・・・、

 あまり食べた事ないんだ。

 でも、ちょうどいい機会だから、良ければ・・・是非・・・。」

勿論メィリィに否応ある筈もない。

 「オーケー、腕によりかけるネ!

 明日はベッドから動けなくなるほど、食べさせてあげるネ!」

 「え、ああ、うん、

 ・・・それよりさ、カーリーが呼んでる、

 次はメィリィ・・・。」

 

 「あたし?

 ラブゥ、カーリーと面談だったカ?」

 「ああ、今、終わった・・・、

 これからどんな武器を手に入れるかの相談。

 私の能力や適性と、

 黒十字団の製造技術などを検討して作りこまれることになるって・・・。

 物によっては時間がかかるものもあるが、

 費用は全額向こう持ち。

 さすがにあれだけの試練を乗り越えたことに対する褒賞はたいしたもんだ・・・。」

 「おお、それは凄そうネ、

 アタシは何がいいのか悩むネ~、

 ・・・まぁ行て来るヨ。」


それを聞いたローズが首を傾ける。

 「メィリィ、青竜刀置いてきちゃったんでしょ?

 新しいのは?」

メィリィは笑いながら立ち上がって、

ローズに答えた。

 「ハハ、あれは目立ちすぎるネ、

 もっと得意なのは暗器だから、

 誰にも見せれないよなモノ頼んでくるヨ。」

 

・・・実際、

彼女達が新しい武器を手に入れるのは、

この短くも激しいイベントが終わり、

それぞれの母国へ戻った後の話しになる。

メィリィやラブゥは、

一見、以前と同じ暮らしを始めるように見えるが、

既に彼女達の戸籍は消滅しているので、

その存在は幽霊にも等しい。

その彼女達が生きていくには、

闇の世界に身を投じねば生きていけるものではない・・・。


・・・それが黒十字団の巧妙な罠なのだが、

今はその話は置いておこう。

果たしてこれから、

ローズ、メィリィ、ラブゥ・・・

そしてあざみ・・・。

彼女達がいかなる冒険を始めるのか・・・、

はたまたいかなるトラブルを巻き起こすのか、

それは誰にもわからない・・・。

いずれまた、

どこかで彼女達の活躍が見れるまで、

しばらくご自宅で待っていただきたい。

あなたの元に何がやってくるかは運次第。

注文してもいない冷やし中華が届けられるかもしれないし、

不気味なブードゥ人形が送られてくるかもしれない。

部屋の中を無邪気に暴れまわる女の子がやってきたらラッキーだが、

黒髪の物静かな女性に狙われたら最後だ・・・、

あなたの生きる可能性は・・・ゼロである。


さて、

最後に、

この世界の運命を暗示するエピローグで、

この長かった物語を幕としよう・・・。

 




 

 トルルルルルルル、  トルルルルルルル、 

 カチャ


 「・・・ルードヴィッヒだ・・・。」


・・・薄暗い・・・

陽も当たらないオフィスビルの一角・・・。

天井の照明もつけず、

窓もない部屋で、

彫りの深い顔の男は電話をとった・・・。

ロマンスグレイの髪に、

大量の口ひげを蓄えた男は、

黒十字団の党首である・・・。

デスクランプの光のみが、

受話器を手にする彼の姿を背後の壁に映し出している・・・。


 「カーリーか、

 ご苦労だったったようだな?

 うむ・・・ネロから大体は聞いた。

 なに、謝る事はない・・・

 3名も合格者を出したのだろう・・・十分だよ。

 彼女達の使い道はこれから考えればいい・・・。

 舞台はできあがりつつある・・・。」

 


 「そうそう・・・

 君がいない間にいい知らせが届いているんだ。

 まず一つ・・・。

 イギリスに送った・・・メリー、

 ベアトリチェ・メリーがやってくれたよ・・・。

 そう、ウーサー・ペンドラゴンの思想改造に成功したようだ・・・。

 もうあの男は彼女の思いのままだ。

 形のないものを盲信する者ほど扱いやすいものはない、という事だな。

 そう遠くない時期に・・・

 騎士団は暴発するだろう。

 キチガイに刃物とはよく言ったものだ・・・。

 彼らが全世界で行動を起こせば、

 再び混沌が世に訪れる。

 全く愉快な話ではないか?

 神に仕えるはずの彼らが・・・

 皮肉にも我々の望みを果たしてくれるのだからな・・・!


 ・・・んん?

 ああ、そうだな、

 警戒すべきものはいる。

 ヒウラと言ったか、

 あの・・・『あの時も邪魔をした』極東の青年は、強硬に反対するだろうが、

 所詮、騎士団本部の決定には逆らえない・・・。

 そうそう、極東で思い出した・・・

 もう一つのいい知らせだ・・・。」

 


 「騎士団にいる我らの同調者・・・

 そう、ウーサーの甥だというあの支部長だ・・・、

 例の『愚者の騎士』の目を盗んで、

 日本の東京でうまくやってくれたようだ。

 ・・・ああ、あの娘は・・・

 もうこの世にいない。

 ガス爆発を装って家ごとふっとばしたということだ。


 可哀相に・・・

 緒沢家発祥以来、最高の神童と呼ばれたあの娘は、

 天井の下敷きになって死んだそうだよ、

 ・・・最愛の弟をかばってね。


 フッフッフ、意外か?

 だが、これでいいんだ、

 もう騎士団を止めれる者はいない。

 大丈夫だ・・・、

 まだ血筋は残っている。

 そう、あの出来損ないと呼ばれた弟だよ・・・!

 私にとっても多少の賭けだったが、

 今度の爆発でも生き残ったのがその証左となるだろう。

 間違いない。

 かつて地上を支配したという古代神の血脈は、

 確実にあの弟にも流れている。

 想像してみるがいい、

 ・・・恐らくお前にも未来は読めないはずだ。

 あの弟・・・緒沢タケルが怒りに狂い、

 騎士団の精鋭たちと戦ったらどうなるか?

 緒沢家に伝わる秘宝、神剣天叢雲剣と、

 神に選ばれた者にしか扱えない聖剣エクスカリバーが激突したらどうなるのか?」

 


 

 「そうだ・・・、

 お前にも言ってなかったな。

 代々跡継ぎにのみ伝えられる緒沢家の使命、

 それは彼らの祖神の復活を待ち続けることとされているが、

 実は違う。


 彼女たちの本当の役割、

 それは破壊と嵐の神・・・四方世界に咆哮するという古代神を、

 その遺伝子の中に封じ込め続ける事・・・、

 彼らの遺伝子に眠る神の因子を、

 ありとあらゆる秘術を以ってこの世に発現させない事、

 それこそが緒沢家の本当の使命なのだよ・・・!

 だが、緒沢家自身その目的を忘れた・・・いや、子孫にすら隠し通そうとしたのかもな。

 

 ・・・もっとも、緒沢美香は薄々感づいていたのかもしれん、

 自分たちの中に眠る恐るべき巨大なる者の血をな。

 もう、今となっては分からんが・・・。


 おっと、すまん、余計な話だった、

 私自身としてはあの娘を評価していたのでな・・・。

 話を戻そう、

 これより黒十字団は、かねてよりの計画を実行に移す。

 だが、こちらから緒沢タケル本人に接触してはならぬ。

 あくまで奴自身の意志・選択で成長していってもらわねばならない。

 そして奴という器が、古代神の復活に耐えられるほど成長した時、


 ・・・奴の全てを奪え!

 家族は既に奪った、

 次は仲間を!

 そして友人を!

 愛する者を!

 あいつがすがるものを全て奪うのだ!


 あいつが積み上げてきたものを全て砕く時、

 緒沢タケルの人格という封印が砕け散る!!


 その封印が解けた時・・・

 甦る・・・。

 大地の底から這いずり出てくる!

 それこそが遠い過去に天空の神々に封じられたという、この世界の本当の支配者!

 いったいどんな姿をしているのか?

 果たしてどんな能力を備えているのか!?

 楽しみだ! ああ、想像するだけで体が震えてしまう!!

 お前はどうだ!?

 カーリーよ、お前はあの古代神を人類の救済者と呼んでいたものな!

 本当か?

 その神は、本当に神と呼べるモノなのかな!?

 いいだろう、

 お前が正しいか、私が正しいか、どちらに転んでもこの世界は根底から覆される!

 そのお膳立てをしてくれるのは、

 騎士団! 彼らだ!!

 我らはゆっくり観戦させてもらおうではないか!!

 フッハッハッハ・・・ハァーッハッハッハッハァ! 」



笑うルードヴィッヒの影が、

冷たい壁で揺れていた・・・。

だがその影の姿は人間のものではない・・・。

部屋の壁面には、

彼の頭部から生えている、老山羊のような不気味な角が映っていたのである。

まるで・・・

中世絵画に描かれる 

邪悪な魔王のような姿を・・・。


 


「南の島のメリーさん達」はこれにて終了です。


次の話で「メリーさん」シリーズは終了です。


パラレルワールドとなる「緒沢タケル」編を続きとして掲載するか、

別の物語として新たにアップするかはまだ悩んでます。

緒沢タケル編には美香姉ぇとタケルの最期のシーンも記述しております(ただし未完の作品です)。


とゆーわけで次の舞台は東京西部。

主役はかつて出てきたあの人たち。

「メリーさんを追う男」始まります。


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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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