黒の巫女カーリーと剛勇の騎士ガワン 1
なんか・・・昨日、
「その名はあざみ」を2つ連続で投稿したみたいです。
「〜」をタイトルにつけたくて編集再投稿しただけだったはずなのに。
いまさっき気付いたので削除いたしました。
しおりなどを設定していた方はごめんなさい。
なお、次回は
カーリー先生が騎士団の「闇」を指摘しちゃいます。
いえ、騎士団の「闇」というより、
この世界の「闇」を、ですかね。
管理棟は完全に制圧されてしまった・・・。
もう抵抗する者はいない。
だからこそ、
試験終了の合図が鳴らされたのである。
アキレウス部隊及びヘクトール部隊のほとんどは、
建物内を捜索するか、
生き残りの捕虜への尋問を開始させていた。
今や、通信装置を回復させ、
沖合いに停泊している部隊をも増援し、
島の隅々までの捜索を開始し始める。
・・・未だ戦闘状態にあるのは、
ガワンとマルコ・・・、
そして、不測の事態に対処するため、
ガワンの背後に残った数人の部隊が戦いの行方を見守っていた。
ガワンが敗北する事などありえないが、
過信は許されない。
いざとなれば、獣人マルコを蜂の巣にしてみせる。
・・・あれから何度となく斧や爪が振り回されるが、
互いに致命傷を入れられないでいる。
その気になれば、
マルコもガワンを肉塊にするだけのパワーを備えているのだが、
一撃でケリをつけないと、
必殺の間合いから斧が振り下ろされる。
マトモに喰らったら、斧で真っ二つだ。
一見、マルコが押しているように見えるが、
一瞬たりとも気が抜けない。
(ちくしょう!
どう見てもコイツは中年だぞ!?
スタミナも化け物なのか!?)
自分も獣の姿をしているくせに、
ガワンを化け物呼ばわりしたのは彼の本音である。
太陽の下ではガワンの全てのパワーが増大しているのだ。
マルコの息のほうが上がり始めた。
実際、フルスピードで動き続ければ、
いかに獣人であろうと体力が持つものではない。
対してガワンは、
重い大斧を持つせいもあるのだが、
走ったり跳んだりはしない。
最低限の動きでマルコをじりじり追い詰めようとする。
ガワンもマルコの爪や打撃を何箇所か喰らっていて、
カラダ中に裂傷や青あざを作ってはいるが、
未だ自分が敗北するなどは微塵も考えない。
だが、お互い一瞬でも油断は命取りだ。
・・・マルコは何度目かの距離をとった。
息を整えるためもある。
休ませる暇を与えない、
というのも一つの戦術ではあろうが、
ガワンは一気に追い詰めない。
あくまでも一歩・・・
また一歩とプレッシャーをかけていく。
ここでも二人の差が明らかになる。
経験と老獪さだ。
マルコも各地の戦場を渡り歩いた身分であるが、
修羅場のくぐり抜け方が違うのだ。
好き放題やらかしてきたマルコと、
例え自分の意志にそぐわぬ作戦だろうと、
上官の命令に従ってきた叩きあげのガワンでは、
性根からして子供と大人の差があるのだ。
もはや、気の短いマルコはやけになっていた。
一気にケリをつけることはできないものかと考える。
・・・それには利き手を封じるべきか?
ガワンが一歩近づくたびに、
次の行動をシミュレーションする。
・・・やる・・・やってやる・・・
あと、二歩前に来い・・・!
そうだぁ、
あと一歩ぉっ・・・!
マルコが一か八かの賭けに出ようとしたまさにその時、
ダダダダダダッ!
二人の間の草むらで、
土ぼこりが激しい音と共に舞い上がった!
両人とも気勢を削がれて銃声の聞こえてきた方へ頭を動かす。
・・・上空!?
そこでガワンは信じられないものを見た・・・。
な、なんだ・・・あれは・・・!?
黒ずくめの女性が機関銃をこちらに向けている・・・。
それはいい・・・
それはともかく何故、
「空中に浮いている」のか!?
正確には女性は、
後ろからサングラスをかけた男性に抱きかかえられている。
だが、どう見ても噴射装置も翼もない・・・。
林の南洋植物より高く、
ただ、そこに浮いているのだ。
「き・・・貴様達は!?」
黒ずくめの女性・・・カーリーは、
機関銃を構えたまま、
ゆっくりと礼儀正しくガワンに話しかけた・・・。
いつものように涼やかに・・・。
「はじめまして・・・、
こんな所から失礼いたします。
本当に申し訳ありません。
他に・・・
あなたたちの戦いを停める術を存じ上げないもので・・・。
騎士団・・・
南洋支部支部長『剛勇の騎士』ガワン様ですね?
あなたのご高名はかねがねお聞きしております。
私が・・・
この島の責任者『黒の巫女』・・・カーリーです。」
ガワンは警戒心を保ったまま構えを変える・・・。
マルコを見れば、
不機嫌そうに戦闘態勢を解いている。
いま、突進すればヤツを倒せそうだが、
上空の機関銃から逃れる術もなさそうだ。
仕方ない、
今一度、空を見上げ胸に手をあてるガワン。
「これはご丁寧な挨拶を。
はじめまして、お美しい貴婦人殿、
確かに私がガワンです。
・・・それでカーリー殿、
今まで隠れていたあなたが今になって現われるとは、
如何なる心境の変化なのですかな?」
彼も騎士である。
敵とは言え、礼儀を重んじる相手にはそれなりの対応をとる。
カーリーはニコリと笑みを浮かべた。
ガワンの態度に満足したのだろう。
「一応、お断りさせていただきますが、
あなたの後ろで銃を構えている部下の方々に、まず。
私たちの隙を突いて撃とうとしたら・・・
おわかりですね?
誇り高き騎士が一名、
この世から永久に消え去るという事を・・・。
もう、マントで銃弾を防ぐ事はできませんしね・・・。」
監視カメラもあるのだろうな、
そうガワンは考えたがその答えは間違っている。
もっともその話は今ここで気にするものでもない。
「だが、私が一度命令さえすれば、
私の命を無視して彼らは攻撃するぞ?」
「・・・ガワン様、
お互い無益な事はやめようではないですか、
もともと、私達はあなた方には敵意を抱いてはいない・・・、
今まで私達が騎士団に敵対行動をとったことがありますか?
そんな相手を攻撃するのに、
最強の騎士を失うなど馬鹿馬鹿しくはないのです?」
「・・・フン、うまい言い訳だな。
それでお前たちはどうしようというのだ?」
「別にどうも?
試験が終了しましたので、
残った者達で無事にここから帰りたいだけですわ。」