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ローズの闘い 食人鬼カンニバル・メリー


以前も、驚異的な聴力をメィリィたちの前で披露して見せたが、

ローズの感覚機能は常人のそれをはるかに上回る。

視力とて例外ではない、

・・・それは幼い頃から生まれ育ったお屋敷の周りの森で、

両親から英才教育を施されていたからである。

暗闇での行動の仕方、

気配の消し方、障害物だらけの森の中を移動する術・・・。

それらに教育の全てを注いだ結果、

ローズに世間の常識まで身につけさせることは不可能だった。

・・・いや、彼女の両親は、

あえてローズに一般教育を施さなかっただけなのかもしれない・・・。

闇の世界に生きるバンパイアハンターに、既成概念はいらない。

常識に囚われていては、

彼女達の獲物に止めを刺すことは不可能だからだ。

13歳の少女なら、

精神的にもませてくるころだろう、

だが、未だにローズが子供っぽいのはそれらのせいに違いない。


・・・今、彼女は感覚機能をフルに働かせ、

森の中で異常な動きをする者がないか、

レーダーのような敏感さで全てを分析していた・・・。

 

東の空は明るくなっている・・・。

鳥たちの目覚めの声・・・、

地を走る小動物・・・、

虫たちの飛び跳ねる音・・・、

時には自らも移動し、

それらに反応する者がないか、

自分の動きを追う者はいないのか・・・、

まさしく野生動物のように、ローズは森の中に潜んでいた。

普通に考えれば、

いかに小さい島の中とは言え、

獲物・・・カンニバル・メリーに出会えるかどうかは、確証があるはずもない。

 ローズにある確信としては、

「もう2日間、アイツは人を食べてない、

 昼間の講義中はアイツは襲ってこない」


・・・はっきりいえば、

これだけの根拠しかなかったのだ。

建物が少ないこの島で、

彼女が身を休める場所などそうそうない。

ならば、このうっそうと茂った森や林の中のどこかにいるはずだ。


そしてついに陽が上り始めた・・・。

薄暗がりと夜明けでは、

ローズとカンニバル・・・どちらにとって有利だったのか、

他の人間にはわからない・・・。

だが、ローズの耳は、

自分のやや後方遠く離れた所で、

風が巻き上がるような奇妙な気配を感じた・・・。

 

鳥や獣などではない・・・。

まるで、

小さなつむじ風が移動していくかのような・・・。

かすかな音さえたてないようにして、

ローズがその方向を見るが、

多くの木々に邪魔されて肉眼では確認し得ない。


「それ」は普通に移動している気配ではない。

突然、気配が消えたかと思うと、

またしばらくして、少し離れたところでまた風が巻き起こる。


 ・・・近づいてきてる?

ローズの背中に緊張の糸が走る。

怖れや怯えではない。

その集中力は熟練した猟師のものである。

ローズは適当な高さの木の枝の上に座り込んでいたが、

移動する奇妙な気配を掴む事に、全集中力を注ぎ込んでいた。


・・・いつの間にか気配はピタリとやんだ・・・。

向こうもローズの気配を感じているのであろうか?

何分・・・いや、

何十分もローズは同じ姿勢で物音一つ立てなかった。

アレは気のせいなのか?

それともどこかへ行ってしまったのだろうか?

 

・・・いや、違う、

近くに必ず何かが息を潜めている。

ローズには根拠があった。

・・・先程から周りに鳥の気配がないのだ。

昆虫や、虫程度の動きは夜明け前と大差ない・・・

むしろ活発になっている。

だが、近くを羽ばたく鳥の姿がない。

まるで、いつの間にか、

この地を恐れて逃げ出して行ったかのようだ。

ローズはウェストのポーチの中に左手を這わせる・・・。

その小さな手にしっくりなじむ冷たい金属の感触・・・。

風が出てきた。

少しずつ強くなっている。


・・・そういえば、あの晩も・・・

パパとママが殺された日の夜も、こんな風が吹いていた・・・、

その時は、あんなことになるなんて・・・。

 


その時、

ほとんど同時にローズは嫌な物を感じ体勢を崩して振り返った。

その途端、

黒い大きなものがローズのカラダをかすめて飛んでいく。

途中の木々の枝を折りながら、

それは数メートル離れた大きな木の枝に留まった。


 現われたのだ・・・!

・・・スカートを切り裂かれていた。

今の襲撃でローズはもう少しで殺される所であった。

しゃがんでたローズの細い足が露わになる・・・。

恐らく、

あと、0コンマ数秒遅れていたら咽喉をザックリと狩られていたであろう・・・。

だがローズはひるまない。

完全に戦闘態勢をとり、

目前にいる黒づくめの長い髪の女をにらみつける。


 「カンニバル! ・・・あなたね!?」


「それ」はゆっくりとしたモーションだった・・・。

「彼女」は着地の態勢からゆっくりとカラダを起こし、

そのままの緩慢な動作で後ろを振り返った・・・。

 


 ・・・笑っている。

その女は、前髪を眉まできれいに揃え、

朝日に映える美しい髪を有していた。

光の反射で、髪の所々が七色に煌めく・・・

禍々しいほどに。

黒づくめという意味ではカーリーも一緒だが、

「彼女」の皮膚は異様に白い。

顔もどことなく東洋系だ。

細長い唇は血の様に赤い・・・。

ローズが叫んだのは、

「彼女」への問いかけではない・・・、

自らへの覚悟の決意だ。

ローズのその姿を確認すると、

「彼女」・・・黒髪の女は肩を震わせて笑い始めた・・・。


 うふ、うふふふふ、

 すごいわぁ、

 気づかれたの初めてぇ・・・

 試験前だったら見逃してあげても良かったけどぉ、

 もう最終日みたいだし、

 あなたを最後の食事にしちゃおぉうー?

 

カンニバル・メリーは、他者からの俗称です。

本名は後ほどご本人様から紹介してくれます。

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VRoid版メリーさん幻夢バージョン
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