マルコ=シァス 対 剛勇の騎士ガワン
息を切らせながら、
機関銃を肩から掛けたマルコがたどり着いた。
ガワンはすぐさま反応し、
ナターシャのカラダを足蹴にして斧を引き抜く。
・・・途端に大量の血が噴水のようにあふれ出した・・・。
彼女のカラダが草むらに沈む・・・。
「てぇんめぇぇぇ~!」
もしかするとガワンの判断ミスだったかもしれない。
ナターシャという障害物がなくなった今、マルコは何の躊躇いもなく機関銃を乱射する!
「うおおおおおおッ!!」
あっという間にガワンのマントに穴が開いていく。
勢いでガワンのカラダは後ろによろめき、
ついに腰を落としてうずくまってしまった。
「ナターシャーッ!」
ガワンが崩れ落ちるのを見て、
マルコは彼女の元に駆け寄る。
「・・・お、おい!」
すでにナターシャは指一本動かせない・・・。
呼吸だけで手いっぱいで、顔の筋肉ぐらいしか動かせないのだ・・・。
「・・・な、なんだ よ、
アンタ、戦わないんじゃ・・・」
「・・・どーでもいいよぉ、
そんなコタァ・・・。」
どうあがいても、
この状態ではナターシャは助からない。
マルコとて多くの死体を見ているので、
そのぐらいの事は容易に判断つく。
「どこの誰かもわからねぇヤツらに、
オメェの綺麗なカラダを晒すんじゃやりきれねーだろぉ、
・・・オレが看取ってやるよ・・・、
オレで良ければだがな。」
「フ・フフ ・・・ハ、
そん なガラか い、
アタシ は ノーマル なんだからね・・・でも
あり が と・・・」
マルコはナターシャの手を握り締める・・・
もう力は感じられない。
「オメェならノーマルでも十分だぁ、
・・・全くこんなトコじゃなかったらよぉ・・・。
昨日の晩もカーリーに邪魔されちまったけど、オメェのことを・・・。」
・・・ナターシャの目が動かない・・・
手に力を込めても一切反応すらない。
マルコの最後の言葉もどこまで聞いていれたのだろうか・・・。
マルコは機関銃を投げ捨てた。
その後、ナターシャの瞼を閉じてやると、
何十発もの弾丸を喰らったはずのガワンに向かって話しかける。
「・・・待たせちまったか?
・・・もういいぜ!」
何が起きたのか、
その言葉と共に、なんとガワンが何事もなかったのかのように立ち上がったのだ・・・!
彼が立ち上がると同時に、
ガワンのカラダから弾丸がバラバラ落ちる。
「どうなってんだ?
機関銃が効かねぇってんじゃないだろうな?」
「・・・フ、完全防弾ではないがな、
このマントは三重に編み合わせた鋼線を縫いこんである。
角度や銃弾の種類によっては貫通する場合もあるが、通常弾では大体弾くか止めてくれる。」
「ハァ!? ちょっと待て、
オメェそれ全身覆ってるじゃねーか?
・・・重量や肩にかかる負担は・・・!?」
「ム? もちろん、これを纏って普通に移動できるのは私ぐらいのものだ、
特注品というヤツだな。
・・・それよりこっちも聞かせてもらえるかな?
どうして、私が無事なのがわかった?
それにしては、彼女とのやり取りには余裕があったようだが?」
マルコは唾を吐いて捨てる。
「ヘッ、おめえの部下が攻撃してこねーじゃねーか!
おめぇのカラダから血もでねーしな。」
「そして・・・万一、攻撃してきたとしても・・・
その女のカラダを盾にできる・・・
というわけか?」
しばらく沈黙の時間が流れたが、
マルコはニタァっと薄笑いを浮かべた・・・。
「・・・その通りだよ・・・、
どうせ死んじまう女だしなぁ?
だがよ、この女に言ったセリフも嘘じゃねぇ・・・、
いい女だったんだぜ?
死体じゃねぇ・・・生きてるうちに一発やりたかったんだがよぉ!?」
ガワンはマントを払い両手斧を構える。
「・・・なるほど、下種めが・・・、
そして貴様が黒十字団から派遣された者というわけだな?」
「おっと待ったァ、
オレは黒十字団とは何の関係もねぇ・・・
団は規律が厳しいもんなぁ?
ただ、党首サマと協力関係にあるだけだ、
・・・血を見るのには不都合ねぇし・・・な!」
「では、最後に聞こう、
こんな離れ小島で殺し屋を育成してどうするつもりだ?」
「さぁてねぇ?
党首サマにでも聞いてくれや?」
「・・・そうか、では聞くことはもうない、
騎士団南洋支部支部長、ガワン・・・参る!」
二人のカラダが接近する!
重量級同士の戦いだ!
マルコの腕には巨大なサバイバルナイフがあるが、
どう見てもガワンの斧に打ち合えるはずもない。
案の定、ガワンの大斧に弾かれるが、
スピードはややマルコに利があるようだ、
すぐに体勢を立て直しに反撃する。
だが、先程のナターシャ同様、
このマルコでさえも、ガワンの実力に驚愕する事になる。
マルコにしてみれば、
武器の特性上、接近戦に持ち込まなければ不利である。
また、まともに打ち合ったら最後、
ガワンのパワー+大斧の重量でナイフか腕ごと弾き飛ばされる。
もちろん、ガワンが振りかぶったスキがあれば、
そこにナイフを叩き込むのがベストだが、
そうそうガワンも隙を作らない。
互いに牽制しあう時間が過ぎていく。
だが静寂を破るはガワン!
いきなり大斧を槍のように突き出して突進、
彼のパワーなら、
断ち切るというより敵を破壊するための使い方だ。
当然、マルコはそれをかわしながら、
がら空きのボディにナイフを叩き込もうとする。
・・・そして狙い通り、
マルコはガワンがわざと作った隙から攻撃してきた。
ガワンの左手が、彼の目前でマルコの右手首を止める!
その瞬間、
雄たけびと共にガワンはカラダを捻り、
マルコのカラダを投げ飛ばした!
「うおおおおっ!?」
ネコのように着地には成功したものの、
マルコは今、自分が投げられた事が信じられなかった。
何故ならマルコの体重は90kgを越える。
しかも、柔道技とか、自分の勢いを利用して投げられたわけではない。
完全に力づくで投げられたのだ。
「な・・・なんなんだァ、テメェはァ!?」
ガワンは顔色一つ変えずに近づく・・・。
「私のデータはないのかね?
騎士団最強の男と?」
「・・・人間のパワーじゃねーだろーがぁッ!!」
「知らんのなら教えてやろう・・・
この私は大空に『太陽』が輝く時、
神の祝福を得られる!
その時湧き出る力は人間の限界を超えるッ、
それ故に私は『太陽の騎士』とも呼ばれるのだ!!」
次回は
マルコも負けじと正体を。