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ナターシャ 対 剛勇の騎士ガワン

 

一方、

・・・こちらは受講生達すら誰も知らない、

島の中央部にあるシェルター・・・。

そこにはマルコたちが待機しており、

少し離れたところでカーリーが瞑想をしている。

黒衣のカーリーは目をつぶったまま、

側に控えるネロに語りかける。


 「・・・ラブゥに続いてメィリィも目的を達したようです。

 今回の子達はほんとに粒ぞろい・・・。

 特に、ラブゥにいたっては、

 私の髪の毛を採取してまで、

 身の保全を図ろうとするぐらい、したたかですし・・・。」

 「戦況はいかがですか・・・?」

 「・・・既に管理棟は制圧されつつあるわ・・・

 付け焼刃のチームワークで騎士団に敵うはずもない・・・。

 既に半数は殺されたようよ・・・。」


それまで黙っていたマルコが立ち上がる。

 「聞いちゃいらんねぇ・・・!」


いち早くマルコの意図をルキは察知した。

 「おい、マルコ、どこへ行く?」

 「へっ、決まってんだろう!?」

 「バカな! マルコ! おいっ!!」

ルキの制止も構わずマルコは出て行った。

 

周りの雑音に、

瞑想を邪魔されたカーリーの目が大きく開く。

 「騒々しい・・・、どうしたのです?」

 「申し訳ありません、マルコが飛び出して・・・!」

 「何ですって?

 ルキ、彼を止めてください!」


ルキはしばらく黙っていた・・・。

 「・・・お言葉ですが、カーリー様、

 私に彼を止めろということは・・・

 彼を殺す事しか私には方法がありませんが・・・。」


カーリーは目をつぶって仕方なさそうに首を振った。

 「そうですね、

 言い出したら聞きませんものね、彼は。

 ・・・判りました、私も用意いたしましょう、

 ルキ、手伝っていただけますね?

 それからネロは脱出用のヘリの準備をしてください。

 管理棟の戦いが終結し次第、

 テストの終了といたしましょう・・・。」




管理棟では、

門の入り口をナターシャが塞いでいた。

といっても銃火器すらない彼女は、

正面から待ち受けるわけにも行かず、

側の巨木にロープを結わえ、

ヒット&ウェーで、空中からターザンよろしく、

ナイフ一本で兵士達を撹乱していた。

当然、全ての兵士を抑えられるはずもなく、

多くの兵士を管理棟に侵入されてしまう。

もちろん、

中には他のマルコ班の受講生や、

背後から虚をつくルキ班の者もいたが、

屈強なアキレウス部隊には手も足も出ない。


そしてこの場所にガワンが到着する・・・。

 「どうだ?

 建物の中には黒十字団の者はいないのか!?」


いまだ通信電波は妨害されているため、

中から戻ってきた兵士達の報告を聞くしかない。

もちろんサブの周波数は設定してあるが、

そちらも妨害されては意味がないので、

ガワンか李袞の決定、

もしくは重大な報告以外では使わないようにしていた。

 


 「報告します、

 黒十字団幹部と思われる4名の姿は見えません。

 また捕虜にした者からの報告をそのまま述べれば、

 対象となる参加者の数は11名、

 海岸の少女の話と一致します!」

 「現在、排除・または拘束した者の数の差は!?」

 「拘束2名、射殺4名、

 海岸の少女、食堂の女性を含めれば、

 未確認の女性は残り2名です。」

 「では未処理の者は、

 さっきから入り口で頑張ってる女性を含めて、残り三人か、

 ・・・逃げられた者を入れれば四人だが・・・。

 まぁ、いい、

 ではあの女は私が始末しよう、

 なに、すぐに済む・・・。」


重厚なマントを翻したガワンは、

管理棟の入り口に近づく。

既にナターシャの上空からの攻撃に対応し始めた兵士達が、

仰向けになった姿勢で機関銃を乱射する。

寝そべった状態の兵士を攻撃するためには、

地面に激突する危険が大きくなり、ナターシャも苦しい。

ロープには鋼線が編みこまれており、

弾が当たったとしても、

そうそう千切れないのは安心だが・・・。


 「撃ち方やめい!!」

兵士達に攻撃をストップさせたガワンは、

伏している兵士達の間を堂々と掻き分けた。

その手には巨大な両手斧がある。

木の上のナターシャにも、

一人近づく敵が、

その姿から司令官である事は容易に判別がついた。

 「・・・親玉登場かい・・・

 そうこなくっちゃな!」

 


とはいえ真正面から飛び掛るわけには行かない。

標的のガワンに、

あの巨大な斧を目の前に掲げられたら、

それこそ自殺しにに行くようなものだ。

ロープは何本もくくりつけてある。

何度か木々の間を飛び回って隙を見つけたい。

もともと、ナナメ上空から襲い掛かるのがベストなのだ。

逆に言うと、兵士達側にしてみれば、

いかにナターシャを攻撃の一直線上に捉えるかがポイントだった。

ところが、ガワンはそれらを全く気にせず、

・・・いや、ナターシャの存在をまるで無視するかのように、

林の中の一本の木の幹にまで近づいた。

その木の上部にはロープが巻きつけられている・・・まさか。


そのまさかだ。

ガワンは思いっきり巨大な斧を振り上げると、

獣のような怒声と共にその化け物じみた斧を振り下ろした。

 ドグシャァッ!!

切り倒すなんて表現は間違いだ。

直径だけでも50cm程の幹が一撃で砕け散ってしまった。

見る見るうちに林の中に倒れこんでいく。

そして、何事もなかったかのように、

ガワンは次のロープが巻かれている木を探す。

 


 ちょっと待て・・・冗談じゃねーぞ?


ナターシャは戦法を変えた。

ナイフを口で咥えた後、

一度ロープを握ってる手を緩め、

ガワンの頭の少し上の高さまで降りてくる。

そして今度は空いた片手で地面に垂れている残りのロープを拾い、

林の木々を蹴り上げながら横に移動していく。

まるで蜘蛛の巣でも作り上げていくかのような素早い動きだ。

もちろん、そんなトリッキーな接近方法に、

対処できる人間などそうそういやしない。

姿を捉えたと思ったら、もう違う角度から接近しているのだ。

あっという間にナターシャはガワンの巨体を捉えた。


 ヤツはパワーだけだ、

 あたしの動きについていけるスピードも反射神経もないッ!

 ・・・ヤツの背中からこのナイフを首筋に!!


だが、ガワンが振り返ったとき、

その目は完全に襲い掛かるナターシャの姿を捉えていた・・・。

ノーモーションでのガワンの突進!!

ナターシャのナイフなど目には映っていないというのか!?

彼女のナイフはガワンのカラダに突き立てるどころか弾き返され、

彼女の手首すらも砕けてしまう。

 

 「うああッ!!」

ナターシャのカラダはナイフと共に弾き飛ばされた。

林の木々に背中を激突させ、

鈍い音をたてて草むらにカラダが沈みこむ。

あまりの激痛に立ち上がることすら出来ない。

 「ち・・・ちくしょう・・・

 こいつのカラダは岩か・・・うぅ・・・

 こんな破られ方が・・・。」


ガワンはゆっくりと彼女に近づいて見下ろす。

 「いや、大したものだ・・・

 自分のカラダを腕一本で支える腕力・胸筋、手首・・・

 それだけではないな・・・、

 木々の間隔やロープの長さを計算に入れた空間把握能力・・・。

 それに普通は銃火器を持つ相手を想定した襲撃方法だろう。

 相手が悪かったのだよ・・・。」


必死になってナターシャはカラダを起こす、

もう、右手は使い物にならない・・・

なんとか左手だけで・・・!

どのみち、背中を打ちつけたダメージで、

もう逃げるだけの体力はない。

なんとかガワンの斧をかいくぐりさえすれば・・・。

 


ナターシャは一か八かの賭けに出た。

左手に取ったナイフをかざし猛然と突っ込む!

無言のガワンは彼女の左肩めがけて袈裟切り!!

 ッここだぁ!!

ガワンの凶悪な斧がナターシャの髪と背中を・・・!


斧の軌道をかいくぐった彼女の背中に熱い痛みが襲う・・・だが皮一枚だけ!

あれだけの重量の斧を振るえば、

その後はスキだらけ・・・

そこにこのナイフを突きたて・・・


 ドカァッ!!

 「・・・え・・・」


・・・ナターシャの右肩から胸中央に、

分厚い金属の塊が突き刺さっている・・・。

ガワンは外れた斧の軌道を、

常識では考えられないほどの腕力で切り返したのだ・・・。

彼女の瞳がゆっくり自らの胸元に向けられる。


 「・・・あ あ・・・ぁ 」


ガワンの巨大斧は、

ナターシャの鎖骨、肺を破壊し、

彼女の、意志・・・未来・・・希望・・・人生の思い出・・・

それら全てを断ち切ってしまったのである・・・。


 ・・・その直後、

彼らの背後から荒々しいマルコの叫び声があがる。

 「 ナターシャーァッ!! 」

 


ナターシャ脱落です・・・。

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