表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
143/676

6日目の3 決意


さて、島では・・・。


カーリー達は、

受講生達の考え出す作戦には一切口出しをしない。

時折、施設の利用可能条件に言及したり、

島の地理特性、電源設備、

作戦に利用できそうな資材などについて、

その場の話題にあわせて話を提供するだけで、

「こうすべきだ」等とは一切言わない。

打ち合わせの中で一番もめたのは、

各自の秘密にしている能力の事だ。


こういった戦闘的な状況下では、

どうしてもナターシャのような経験者が、

主導的な立場を取ろうとして、

各人の能力に合わせて、配置を試みようとするのだが、

ラブゥなどのように単独行動を好む者は、最初から作戦に無関心なのだ。

自分の得意とするものを晒すわけがない。

困りきってナターシャがカーリーに救いの目を向けるが、

当然最初に言ったように彼女は受け付けない。

残念そうに首を振るだけである。

 

それよりもナターシャが更にめげたのは、

メィリィとローズまでもが団体行動を拒否した事だ。


二人とも、

敵の情報と、メリー予備軍の大体の戦力を、

何となくだが既に把握しきっていたからだ。

・・・いや、ローズに関してはどこまで事の重大さがわかっているのか、

ナターシャはその段階から不安を覚えていた。

 「ちょっと待ちな、ローズ。

 悪いことは言わない・・・、

 みんなで歩調を合わせないとアンタの命だって危ないんだよ!?」


だが、

ローズはきょとんとしてナターシャに口答えする。

 「なんで?

 そんなことしたら足手まといになるよ?」


ナターシャはローズの謙虚さに心を打たれる・・・、

こんな小さい子が、

そんなことまで気を遣って・・・。


だが・・・、 

もちろんローズのセリフは逆の意味である。

ローズ本人にとっては、

この場にいる全てのメリー候補が、

自分の足手まといになると本気で思っていたのだ。

もしその本心をナターシャが知ったら確実にキレるだろう。

・・・カーリーだけがそのローズの本心を見抜いていた。


そして、

カーリーほど確信を持っているわけでもないが、

メィリィも何となく、ローズの発した言葉の意味に気がついていたようだ。

 「ナターシャ、だいじょぶ、

 ローズはアタシがフォローする。」


この場はそう言っておくべきだ・・・。

それにもめている時間などないのだし・・・。


・・・すでに陽は沈んでいた。

ナターシャ、シェリーはじめ、

何人かのメリー候補生は、騎士団を迎え撃つ準備でせわしない。

ネロやルキたちも手伝っているとは言え、

圧倒的に人手が足りないのだ。

どこまで、これで彼らと戦えと言うのか?

とっとと白旗を掲げた方が良いのではないか?

そんなことを考えるのはシェリーだけではなかった。

しかし、

彼女達がそのことを口に出そうとすると、

すかさずカーリーにじっと見つめられている事に気づくのである・・・、

まるで心を読まれているかのように・・・。


一方、ローズ達は、

彼女達の焦りを他所に部屋でゴロゴロしているだけだ。

 「わ! なぁに、メィリィ、その匂い!?」


メィリィはタンクトップ一枚で、

カラダに何かを塗っていた。

 「ゴメンね、ローズ、臭いカ? 

 これ、タイガーバーム軟膏、

 筋肉の疲れ取ってるネ、

 寝る前のシャワーで落とすから、

 ちょっと我慢して欲しい。」

 「うん、だいじょーぶだよ。」

 

どうもローズはヒマらしい。

ベッドでクロールの真似をして、

足をバタつかせている。

メィリィは自分のカラダをさすりながら、

先程の会合でのローズの真意を確かめる事にした。

 「・・・ローズ、さっき・・・本気だったカ?」

 「んん? なにが?」

 「アタシたちみんな足手まとい思った・・・?」


ローズはしばらくきょとんとしてたが、

よーやくメィリィの言いたいことに気づいたらしい。

 「あ! ごめんなさい!

 そんなつもりじゃないの!

 でも、あたしの目的、みんなと違うから・・・!」

 「違う?

 試験に合格する事までは一緒じゃないの?

 だったら・・・。」


ローズはそこでくすくす笑い始めた。

 「カーリー先生は、

 『誰を』殺せとは言わなかったと思うけど・・・?」


メィリィはハッとしてその言葉の意味を考えた・・・。

そして、これまでのローズの言動で、

全てをようやく理解した。

もう、

彼女のターゲットは決まっているのだと。

 


メィリィが考え込んでいると、

今度はローズが質問した。

 「メィリィだっていいの?」


単独行動をとるのはメィリィとて同様だ。

 「あ、アタシ?

 ああ、アタシほら、みんな足手まとい思うネ、

 あたしの役に立たナイ。」

 「なぁに、それ?

 メィリィずっるーい!!」


途端に二人で笑い始めた。

しばらく他愛ない会話を交わしていると、

不意にローズが起き上がり自分の荷物を取り出した。

ゴソゴソしながら引っ張り出してきたのは、

ローズの手には収まりきらないほどの小箱だ。

かなり古そうなもので、

表面は色あせているが、高級そうな装飾がなされている。

小さな宝石もちりばめられている様だ。

 「ローズ・・・それは?」

 「ママの形見・・・!」

ローズはそれを両手で抱えながら、

いとおしそうに眺める。


 「ローズ・・・

 アナタのパパとママは何故・・・?」

 

 「”ヤツ”にとっては遊び・・・、

 なにしろ”ヤツ”は半月ぐらい人を食べなくても平気なはず・・・、

 今度もそうよ、

 一度に二人も食べる必要なんか全くない・・・。

 ほとんど食べ残したはずだわ・・・!」


そういえば、

あのグェンの死体も片足だけちぎられていた。

・・・もっともそれだけでも大した量だが。


 「・・・ローズ、アナタの目的は良くわかる・・・、

 でも、どうしてそんなに詳しい?

 13歳のアナタはどこでそんなこと知った?」


ローズはしばらく考え込んでいたが、

意を決したようにメィリィを見上げ、

片手で首もとのネックレスを服の下から引っ張り出した。

銀製の十字架・・・。


 「あたしのパパはエクソシスト・・・。

 あたしのママはバンパイアハンター・・・!

 あたしはうんとちっちゃい時からいろんな事を教わってきたわ。

 アイツ・・・

 食人鬼カンニバル・メリーはアタシがやっつけなきゃいけないの!」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ