表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
141/676

6日目の1 予知


今朝は早くから、

様子が今までと異なっていた。

ルキとマルコが各班の集合場所に、

頭を下げて「今日は少し開始が遅れる」と言って廻ったのである。

理由ははっきりとは言わなかったが、

今後の試験のことに関するようだ。

受講生達の間では、

メンバーが減った事による予定の練り直しでは? 

と囁かれた。


 ・・・実はカーリーたちの間で、

予定外の事件が起きていたのである。

黒衣のカーリーは、

いつも講義の二時間ほど前に目を覚ます。

その間に、食事や化粧・・・、

黒十字団からの連絡チェック(基本的には夜、定時連絡を行っている)、

ルキ達、他の指導員との軽い打ち合わせ(これも前の晩に行っているので確認的な業務)

を済ませている。

ところが今朝は打ち合わせの最中に、

いきなり彼女は前後の脈絡もない行動に出たのである。


カーリーは不意に椅子から立ち上がり、

マネキンのように静止してしまった・・・。

 「カーリー様!?」

心配するネロの問いを無視し、

カーリーは、

宙の一点を見つめ取り憑かれた様な状態になっていた。

 

 「・・・来る。」

トランス状態だ・・・。

指導員達の間に緊張が走る。

 「・・・この島に我らに仇為す者達がやってくる・・・。」


 「敵か!?」 

マルコは嬉しそうに叫んだ。

カーリーは意識は正常に保っているのか、

視線も体勢も変えずにそのままネロに指示を出す。

 「・・・ネロよ、

 直ちに本部に連絡を取り、

 この島に近づく者を調べて下さい!

 ここに直接、向かっているとは限らない、

 我らに敵対的な行動を起こす恐れのある団体の、

 全ての動きを把握するのです!」


そして数十分後、

ネロは一つの回答を得たのである・・・。

 「カーリー様、

 もし我らに攻撃をしかけるものがいるとすれば『これ』です・・・!

 現在インド洋を航行している二つの船団・・・、

 順当に向かえば、

 インドかその先へ向かう筈ですが・・・。」


この時間、既にカーリーは正気に返り、

受講生達に連絡しに行ったルキ達も管理棟に戻っていた。

黒衣のカーリーは、

ネロが手に入れた衛星写真の画像を食い入るように見つめる。

 「・・・何者です?」

 「これは騎士団所属の船団です・・・!」

 

カーリーは思わずネロを見上げた。

 「騎士団・・・あの偽善者どもですか。

 黒十字団には手が出せないので、

 私たちに目をつけたということですね・・・。」

 「恐らく・・・、

 黒十字団は英国にとっても過去のしがらみを共有する存在・・・、

 いかに騎士団の政治力でも、

 黒十字団を利用したがる軍や政治家と対立する訳にはいかないでしょう。

 そしてこれらの船団は、船影から判断するに、

 騎士団のアキレウス部隊及びヘクトール部隊です。」

 「統率者は誰ですか?」

 「人事や編成に変化がなければ、

 恐らくは、南洋支部支部長『剛勇の騎士』ガワン・・・

 そして亜細亜支部支部長『忠節の騎士』李袞りこんと思われます。」


ネロの報告にルキが素早く反応する。

 「ガワン!?

 別名『太陽の騎士』ガワンか!?

 ・・・騎士団最強と謳われた男じゃないか・・・、

 そんな大物が!?」

 「おいおい、

 最強ってのはランスロットとか言う奴じゃないのか・・・?」

マルコはルキの言葉に納得できないようだ、

ルキは彼の態度を見て冷静に首を振る。

 

 

 「いや、確かに総合的な評価はランスロットだ。

 また、『豪剣の騎士』ライラックもほぼ同等の評価を受けている・・・。

 だが、こと攻撃力に関してはこのガワンとその部隊だ!

 かつて『ノーフェイス』が壊滅させられたのも、

 ほとんどこの男の手腕によるものだ・・・。」

 「ほぉ~、そうこなくっちゃ・・・!

 楽しみだぜぇ!!」


彼らの興奮を冷ますかのように、

カーリーは冷静に言葉を放つ・・・。

 「いえ・・・、

 ガワンだけなら問題ありません、

 所詮、猪武者です。

 ですが、李袞との組み合わせだというのなら警戒すべきです。

 彼は冷静沈着な男と聞いてます・・・、

 つまり騎士団は本気でここを潰しに来ると言う事・・・!」


ネロは不安そうだ。

 「・・・いかがしましょう?

 本部に救援を要請しますか?」

 「いえ、

 彼らと事を構えるのは良策ではありません・・・、

 彼らのように純粋で好戦的な猿達は利用価値もありますし・・・。

 そうだわ、ちょうどいいじゃない・・・?

 彼女達に頑張ってもらいましょうか?

 フフッ、フフフフフ・・・。」

 


目ン玉をひんむくとはこのことだろう。

マルコは血相を変えてカーリーに詰め寄った。

 「ちょっと待った!

 ・・・いいアイディアだとは思うが、

 使い物になるのは一握りだぜ!

 それにウチの奴らは訓練でボロボロだ!

 戦闘のプロのあいつらに敵うわけがねぇ!!」


こんな時でもカーリーは余裕たっぷりだ。

いつもの涼しい笑い顔だけを見せる。

 「まぁ、マルコったら意外に優しいのね?

 大丈夫よ、

 今回は『本物』も混じってるわ。

 決戦までのサポートはこれまで通り、

 あなた達に任せるわ。

 うまくいけば結構、残るかもよ・・・?」

 「優しい?

 ば、バカ言ってんじゃねーよ!

 まあ、勝ち目があるってんならいいんだけどよぉ・・・、ハン!」


 「マルコ・・・。」

 「なぁんだよ! ルキ!?」

 「いや、それがツンデレってやつなのか・・・?」


数秒間、時間が止まった後・・・、

微動だにせずマルコは口を開く。

 「・・・バカかぁ、てめぇはぁ!?」 

マルコは心の底からそう思った。

 

ネロは二人の掛け合いには興味がないらしい。

 「カーリー様?

 もしかして結末も予知なさいましたか?」

 「いいえ、そこまでは・・・、

 私の予知能力はリリス達ほどの精度はありませんし・・・。

 でも、今回のメンバーには、

 長年の経験からの勘で期待が持てると思います。

 ・・・不測の事態が起こるとすれば、

 食人鬼カンニバル・メリーの存在かしらね・・・?」

 「騎士団の奇襲時刻は『見る』事が出来ましたか?」

 「あれは・・・薄暗い・・・

 恐らく夜明け前でしょう。

 ガワンが参加しているなら日中は彼の独壇場ですし・・・。

 一応、ネロ!

 あなたは引き続き、彼らの動きを監視してください。

 それから・・・ルキにマルコ! 

 おふざけは結構です。

 受講生達にこれから試験の内容を発表しに行きます。

 あなたたち二人は、今日一日、

 受講生のあらゆるサポートに徹してください!」


そして決戦の時は近づく・・・。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRoid版メリーさん幻夢バージョン
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ