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3日目の4 食事の時間

 

それはまるで辺り一面から、姿の見えない妖精達にでも囁かれているかのよう。


透き通るような、・・・それでいて禍々しさを感じさせる蠱惑的な声。



  うふふ・・・、

  どこにいるかって・・・?

  いやねぇ?

  ここよ、私はここにいるわ・・・、

  そしてホラ?

  私はあそこにもいる、

  それと ねぇ?

  どこにでも、

  私は存在しているのよ・・・。


畜生! どこに隠れていやがるんだ?

 「ふざけんなぁ! 顔を見せろぉ!!

 ・・・ナニモンだぁ!?」


  うふふ、やーねぇ、私よ、

  メリーさんよ、

  あなた達の憧れの存在じゃなくて?

  ・・・そんなに怖がって

どうするの?


ヒステリックに血相を変えたヘスは、

その右手を激しく振り回す!

すると、その指先から続く銀色の鋼線が、目にも留まらぬ速さで踊り狂った!

 ビシビシッ! ズババッ!


周辺の草木がたちまち辺りに舞い上がっていく。


 

 「・・・なにがメリーさんだ!?

 とっとと出て来い・・・、

 切り刻んでやるッ!!」


  まぁ? それがあなたの武器?

  あたったら痛そうね?

  惜しいわねぇ、

  あのまま真っ直ぐお部屋に帰れば、

  私に食べられなくて済んだのに・・・。


 「た・・・食べるっ!?

 お、お前、リムを食べるつもりで・・・!」


ヘスとリムは友情を感じるほどの仲ではないが、

仮にも同室のパートナーという義務感からか、

慎重にヘスはリムの死体に近づいた。

そのカラダを守る意味など最早ないのだが、

そうせねばならないような気がして・・・。


相変わらず、

襲ってきた者の姿は見えない。

隠れる場所などどこにあるというのか?

今も自ら操る鋼線の風を切る音しか聞こえない。


・・・その時、再び強い風が吹いた・・・。

ヘスの視界の端に、

倒れているリムのスカートが動くのが映る・・・。

それに違和感を感じたヘスは、

視線そのものを倒れているリムに移した。


 リ ム が こ っ ち を 見 て い る ?


すぐにそれは自分の目の錯覚だと気づいた・・・だが、

すでにそんな判断は意味をなさなかった。


何故なら、

リムのカラダが勝手に起き上がり、

そのままヘスにもたれるように抱きついてきたからだ!!

 「ぎゃあッ!?」

 

ほんの一瞬とは言え、

完全にヘスはその行動をストップさせられた。

そしてリムの死体の背後に、

黒い塊が舞い上がる。

リムの死体の下に隠れていたと言うのか!?

ヘスが全てを把握した時はもはや手遅れだった。

・・・彼女の首筋に突然の激痛が襲う!


 「がふ!」

それはヘスの声でなく呼吸音・・・

といっても、

それが最後の呼吸だったのかもしれない・・・。


  うふふ、頚動脈は外れちゃった?

  でも、

  息ができなくなったんじゃなくて?

  可哀想に・・・苦しいでしょう?

  いま、楽にしてあげるからねぇ・・・!


ヘスの前に、

その少女は腰までかかる長い黒髪をたゆらせて笑っていた・・・。


 「ンン~ッ!!」

どんどん意識が遠くなっていく。

だが、最後までヘスは抵抗しようとした。

片手で首筋の出血を抑えながら、

右手の鋼線でこの食人鬼をズタボロにしてやろうと・・・!


 

だが、

黒い少女は再び舞い上がると、

振り下ろされたヘスの右手の外側に密着する。

そのままヘスは、

ぴったりと後ろから抱きしめられてしまう。

右手首は完全に黒い少女に抑えられた。

黒い少女はヘスに頬までこすりつけている、

・・・まるで、

いとおしい者に接するかのように・・・。


もはやヘスの心は恐怖と絶望しか残っていない。

黒い少女の顔は今は見えないが、

その顔が歪んでいくのが頬の感覚で判った・・・。

食事の時間なのだ・・・。

薄れ行く意識の中、

右の二の腕に熱い痛みが走る。

いや、もう痛みはほとんど感じていなかったかもしれない。

ヘスの目はまだ生体的な反応を保ってはいたが、

もうほとんど思考能力を失っていた。

カラダを食いちぎられるたびに、

ピクピク痙攣するように反応はするが、・・・もう時間の問題だ。

哀れなヘスとリムは、

誰にも知られることなく、

志半ばにしてこの谷間に命を散らせてしまった・・・。

 





 「そんで?」

ローズ達四人はお茶を囲んでいた。

ナターシャがローズに面接の結果を尋ねる。

 「んん? あたし?

 あたしはカーリー先生に教えてもらうことになった。」

 「ええッ、本当ですか?

 あの方も直接指導するのですね!?」

とシェリー。

てっきり、残り三人に振り分けられるとみんな思っていたのだ。

 「ローズ、何教わる?」

メィリィも興味津々だ。


 「んーとね、なんだっけ・・・、

 なんか、じっせんしんりがくとか難しいこと言ってた。

 こっちがこうした時に、

 相手の人がどう思うかとか、

 そんなのもやるって・・・。

 でもおもしろそうでしょ!?」

 「はぁはぁ、確かに、

 ローズのカラダで戦闘スキル教えるのは、

 まだ早いだろうしなぁ、

 意外とピッタリかもな。」

ナターシャはローズを軽視するつもりなど全くない。

実際、誰もが同じような印象をローズに対して持っていた。

まだ、ローズの正体は誰も知らない・・・、

いや、先程、

面接を行ったカーリー達は別かもしれないが・・・。

 

 「あたしはネロさんですわ、

 ナターシャさんとメィリィさんは・・・やっぱり?」

ナターシャは行儀悪く、

背中を反り返して椅子の上に膝を立てた。

 「あ~あ、そうだよ、変態マルコだよ。」

 「アタシもネ、

 アタシの場合は戦闘術より、

 サバイバル技術に重点置く言ってたヨ。」

 「ま、メィリィ、よろしく頼むよ、

 ・・・あたしは尾行術かなんかをマスターしたかったんだけどなぁ、

 それ言ったらさ、

 カーリーに言われちゃったよ、

 ・・・『ナターシャさん、あなた身長は?』・・・って。

 そうだよなぁ、

 175cmのあたしじゃ尾行は目立つもんなぁ~、

 こればっかりはなぁ・・・。」


その言葉に、隣に座ってたローズがナターシャの胸を覗き込む。

 「こら、どこ見てんのさ?」

 「いいじゃない、大きくて?

 こんな目立つおっぱいしてる人、

 他にいないわよ?」

 「ローズ! お前までセクハラかよ! 

 あ~、もう、ここの奴らは~・・・!」


メィリィ達もついつい、

不満そうに自分の胸とナターシャを見比べてしまう、

そう、メィリィもシェリーも、

自分の小さな胸に対してはコンプレックスを持っていたのだ。

 


3日目終了です。

あれ?

2日目に比べて少な過ぎる?


おまけ




ネロ

「(ナターシャさん、多分あなたに尾行術を勧められない理由は、身長よりもその目立つ・・・)」

カーリー

「何処見てらっしゃるんですか、ネロ・・・。」

ネロ

「うわ、いえ、あの、その!」

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